名古屋大学 大学院多元数理科学研究科・理学部数理学科
住所: 〒464-8602 愛知県名古屋市千種区不老町

教育・就職 - 2023年度 - 卒業研究シラバス - 中島 誠

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ファイル更新日:2022年11月25日

教育・就職

卒業研究シラバス


中島 誠

学部・大学院区分
Undergraduate / Graduate
理学部
時間割コード
Registration Code
科目区分
Course Category
専門科目
科目名【日本語】
Course Title
数学研究
科目名【英語】
Course Title
Undergraduate Seminar
コースナンバリングコード
Course Numbering Code
担当教員【日本語】
Instructor
中島誠
担当教員【英語】
Instructor
Makoto Nakashima
単位数
Credit
6
開講期・開講時間帯
Term / Day / Period
春 水曜日 3時限
春 水曜日 4時限
授業形態
Course style
セミナー
学科・専攻
Department / Program
数理学科
必修・選択
Compulsory / Selected
選択必修
授業の目的【日本語】
Goals of the Course(JPN)
測度論的確率論の基礎
現在では確率論はさまざまな分野で利用されている. また確率論の研究も近年は多岐にわたっており, それらを包括的に学ぶことは難しいので, それぞれの興味に沿って学習していくしかない. しかしそれらについて学ぶためにはまずその基礎である確率論の知識を身につける必要がある.

この卒業研究では参考書[1]を用いて測度論的確率論を理解し, 使いこなせるようになることを目標とする.

確率論のその先の話については[参考書]の欄で少し紹介している.
授業の目的【英語】
Goals of the Course
Foundation of measure theoretic probability
Probability theory is used in many fields and their studies are diverse. So it is difficult to learn them comprehensively in a textbook and we must study their fields of interest. Anyway, the first step is to gain the foundation of measure theoretic probability.

In this course, we study and master the measure theoretic probability by reading [1].
到達目標【日本語】
Objectives of the Course(JPN)
このセミナー終了時には学生は以下の能力を獲得していることを目標とする.
測度論的確率論の理論を理解している.
到達目標【英語】
Objectives of the Course
At the end of the course, participants are expected to master a theory of measure theoretic probability.
授業の内容や構成
Course Content / Plan
[1]は測度論的確率論の標準的な教科書で, 測度論の基本から学習し確率論へ進んでいくスタイルである. 大数の法則, マルチンゲール, 中心極限定理までが扱われている.

参加人数によるが, 週に1回セミナーを行う. セミナーは輪講形式で文献を読み進める.
履修条件
Course Prerequisites
解析学要論II(測度論)を履修していることが望ましい. また微分積分学, 線形代数, 位相に関する基礎的な知識は仮定する.

定員超過の場合の選考方法
面談をした学生を優先する. また本課題に対する学習意欲と準備状況(履修状況や成績等を含む)も考慮する.

This course will be given in Japanese.
関連する科目
Related Courses
解析学要論II, 確率論I, 確率論II
成績評価の方法と基準
Course Evaluation Method and Criteria
セミナー中に得た知識や概念を用いて正しく議論できることを合格の基準とする.
またセミナー中の質問に対する応答や発表の準備の内容で成績の評価を行う.
不可(F)と欠席(W)の基準
Criteria for “Fail(F)” & “Absent(W)” grades
特別な事情がない限り毎回のセミナーに出席することが必須である.
教科書・テキスト
Textbook
*[1] David Williams: Probability with martingales. Cambridge, 1991.
世界中で読まれている確率論の教科書のひとつ. 測度論の話から始まり大数の法則, 中心極限定理, マルチンゲールの理論までを扱う. 内容がコンパクトにまとまっており読みやすい.
[2] J-F. LeGall: Brownian motion, Martingales, and Stochastic Calculus. Springer, 2016
ブラウン運動や確率積分に関する教科書. [1]のテキストを読んだ後に読み始めたい. [1]の内容を理解している場合はこの本から始めてもよい.
参考書
Reference Book
ここでは教科書[1]を読んだ後で学習できる確率モデルとそのテキストを紹介する.

[1] 楠岡成雄, 長山いづみ: 数理ファイナンス, 東京大学出版会, 2015
数理ファイナンスの考え方について離散時間モデルから始めて連続時間モデル(Black-Scholes)まで解説している. 教科書[1]と並行して読み進めることができるかもしれない.

[2] 樋口保成: パーコレーション, ちょっと変わった確率論入門, 森北出版
パーコレーションと呼ばれる物理模型を通して測度論的確率論を学ぶ教科書. 大数の法則の証明はあるが中心極限定理は現れない. モデルを通して学習するので比較的イメージがしやすい. パーコレーションは格子の辺をそれぞれ独立に確率1-pで閉じてできるランダムなグラフのことである(スポンジをイメージするとよい). このランダムなグラフは無限の連結成分を持つのか(スポンジに水を染み込ませて一番下まで水が届くのか?)ということが問題の出発点である. [1]と並行して読むこととで抽象的な内容が理解しやすくなるが, パーコレーションに特化した内容が多いのでそこは教科書とは独立に読んだ方が良い.

[3] Rick Durrett: Probability: Theory and Examples, 5版. Cambridge, 2019.
確率論の教科書としてよく用いられている. 確率論の理論の標準的な内容は一通りまとめられている. また様々な例が書いてあるため非常に教育的である. [1]の内容を補うにはちょうどよい. 学生の時に読んだ.

[4] Geoffrey Grimmett: Probability on Graphs, Random Processes on Graphs and Lattices, Cambridge, 2018.
パーコレーションやランダムウォークといったグラフ上で考える確率モデルについて書かれた教科書. 特に3,4,5章でパーコレーションに関する基本的なことが簡潔に説明されている. 測度論的確率論の知識があまりなくても大体読めるが, あった方が面白い.

[5] Antti Kemppainen: Schramm-Loewner Evolution. Springer briefs in mathematics physics, 2017.
多くの物理模型(パーコレーションなど)ではあるパラメータを変更した時に様相がかわる. これを相転移という. この様相が変わるパラメータを臨界点という. 平面上で考えた物理模型ではこの臨界点において, ある種の界面の極限が共形不変性をみたすと予想されていた. それらの極限を記述するものとして90年代末~2000年代にSLEと呼ばれる確率模型が導入され近年においても活発に研究されている. このSLEについての教科書. Brown運動, 複素関数論の知識が仮定されているので読み始めるには十分な準備が必要である. (ただし証明はだいぶ省略されているのでアイデアを身につけるという感覚で読んだ方が良い) SLEは他にも様々な講義ノートがweb上で公開されている.

[6] Peter K Friz, Martin Hairer: A course on Rough paths. With an Introduction to Regularity Structures. Springer.
正則構造理論と呼ばれる理論を用いて多くの特異な確率(偏)微分方程式に対する解の定義することが可能になった. この理論を作ったM. HairerはKPZ方程式の解や\Phi^4_3測度の構成を行い, それを機に多くの特異SPDEの研究がなされるようになった. 読み始めるにはSDEやSPDEの知識が必要.
課外学習等 (授業時間外学習の指示)
Study Load(Self-directed Learning Outside Course Hours)
セミナー発表は本の翻訳を述べる場ではない. 例えば「どのような式変形を行っているのか」等テキストには書かれていない行間をきちんと埋める作業や証明の流れを伝えることが重要である. そのためには他の文献で調べる等の準備をきちんと行うことが必須である. 発表準備の段階で教科書は一度閉じて自分のノートを見て議論の流れがスムーズか, 自分は理解しているのかを確認すること.
また各回のセミナー内容には各々が事前に目を通しておくことが重要である. これは本の内容を理解するために必要なことである. 一人で読みこむという修行ではないのでセミナー外でも周りと相談したりしながら読み進めてほしい. またわからなかったところはセミナー中に質問するとよい.
注意事項
Notice for Students
質問への対応方法
How to Ask Questions
メールにて相談
他学科聴講の可否
Propriety of Other department student’s attendance
他学科聴講の条件
Conditions for Other department student’s attendance
レベル
Level
2
キーワード
Keyword
確率論, 測度論
履修の際のアドバイス
Advice
私は学部生のときに” たまたま” 選んだ確率論の分野でセミナーをして楽しいと感じて今に至ります.
ちなみに私は単純ランダムウォークが空間次元によって出発点に帰ってこれなくなることがある(再帰性, 過渡性)という事実(これもひとつの相転移)が興味を持つきっかけでした.
教科書では1つの確率モデルを深く学習することはできずモチベーションの維持が難しいかもしれません. そのような場合には上に挙げた例などを参考に興味の持てそうな話題をみつけてそれを目標に教科書を読んでいくのが良いでしょう.
授業開講形態等
Lecture format, etc.
対面でおこなう
遠隔授業(オンデマンド型)で行う場合の追加措置
Additional measures for remote class (on-demand class)