複素関数2023授業日誌

あれから10年。いよいよ納めの複素関数である。 とは言っても思うようには手直しできぬ予感。
今回は応用方面を志向しつつも、liberal arts の心を伝えられれば幸い。 不透明な時代を照らす唯一の灯明として。

授業は、 この方針に沿って進める。
テキストの該当箇所を事前に印刷・予習しておくこと。予習以上に大事なのが復習で、 宿題を活用のこと。
ネット上の参考書として、
複素関数の基礎の基礎
http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~keikei/lecture/math-note.pdf
https://math.jhu.edu/~js/Math407/Krantz.guide.complex.pdf
を挙げておく。

宿題について。毎週の授業の中で、復習のための問題を2問指示するので、レポートにまとめ、TACT の課題欄から次の週の月曜13時までに、
pdf ファイルの形式で(手っ取り早いのは、カメラで写したものを pdf ファイルに変換する)提出すると、
それの点検結果が解答例とともに次回授業の前日18時頃までに返却される(こちらはTAがやってくれるので、質問はTAの方まで)。
なお、これは、復習の手がかりのために行うものであって、授業の成績には反映しない。

テキストの問題の解答が欲しいという要望が毎回のように寄せられるが、それには応えない方針である。 これは、将来、いろいろな場面で数理の道を切り開いていく上での鍛錬のためである。
また、問題との格闘(というと大げさであるが)を通じて、あれこれ考えるきっかけにして欲しいがため。
そうはいっても、手助けが必要となることもあろう。 その際には、できるだけ問題点を明らかにした上で、メール等で質問されたい。
(メールアドレスは、シラバスに書いてある yamagami@math をお使いください。機構アドレスは使わないで。)

レポートを pdf 形式で用意する手っ取り早い方法は、カメラで写したものを pdf に形式変換する、でしょうか。
その際、高画質の写真はファイルサイズが大きくなるので、画質を落とすなどして画像のサイズを小さくした後で pdf 変換すると、ネットワーク環境にはやさしい。
画像から pdf へ変換、画像サイズ変換、ともにネットで検索すれば、方法がいろいろ見つかります。何事も経験、ゲーム感覚で試してみてください。


4月14日

白とくれないのツツジも早咲き乱れ、八重の桜を追い立てつつ。

今日は、オイラー風怪しげな計算と、それを受けての複素数の導入まで。まずは試運転といったところでしょうか。

オイラーの公式は、形式的微分の結果が一致することと、$\theta = 0$ を代入した値も一致することを確かめ納得するのが良いでしょう。 他にテイラー展開を利用する方法もありますが、複素変数のテイラー展開は、この授業の半ばですることなので、トートロジーを避けるためにも。
前半の形式的計算は、オイラーあたりがしていそうなものではありますが、当時の人達は、具体的な数値計算を通じた確認を常に行っていたようで、 怪しげな計算であっても、大間違いしないで済んだのでした。
それの追体験として、問1を用意しました。今週は宿題なしですが、是非トライしてみてください。

虚数(単位)を $i^2 = -1$ を満たす形式的な数と思うこと自体は悪くはないのですが、 そういう計算をしてはたしておかしいことが起こらないかどうかは別の話です。
これも歴史的には、様々な具体的な計算を通じて「おかしいことは起こらない」ことを実感したあとで、 本当にそうか、という問題に対する答えが見つけられたのでした。
実数の組(平面の点の座標)に計算規則を導入して、複素数を作ってみせる、 ということを示したのはハミルトン (W.R.Hamilton) が最初で、1835年のことであった。
日本では天保の大飢饉のただ中で、その後の天保の改革を経て幕末に向かって 動くきっかけともなった時期でもある。
ハミルトンは、さらに8年の苦闘の後、複素数を拡大した四元数 (quaternion) を1843年に発見したのであった。

テキストについての意見・感想などもメール(yamagami@math.....)でどうぞ。
オフィスアワーについて一言。そもそもオフィス(研究室)がないのです。 ということで、時間を限定せずに、質問等をメールで受け付け、直接あるいはこの授業日誌の中で回答したいと思います。

4月21日

鈴鹿の山も煙るように気温高め、藤の花もさかりを過ぎつつ、草餅一つ。

10年前と違って、絶対値が復活していたようで、やれやれといったところ。

複素数は平面の点と思うことで、見えた気分にはなりますが、大事なのは、実数2つの組ではなくその一体性。
そのために役立つのが極表示と複素数の積が引き起こす平面の一次変換の等角性です。

今日のメニューは以下の通り。
共役複素数(複素数の対称性を表わします)、複素数の絶対値、極形式、オイラー形式。$x+iy$ と $(x,y)$ の対応。
三角関数の加法定理と複素指数関数の乗法性が同じものであること。これを何とも思わぬようでは。
$1$ の $n$ 乗根と極表示。単位円に内接する正$n$角形とその周期性。 $1+z+z^2+\cdots+z^{n-1}$ の因数分解。
テキストには、他にも代数学の基本定理とか色々書いてますが、スキップします。

今日から宿題があります。最初の2題を解きます。

4月28日

今日も気温高め、静かに息するが如くこぶしの花。

テキスト(改定したので、差し替えを)は、補足的なことを多く含んでいるため量が多いように見えて、実はそれ程ではない。
実数を変数とした微積分を複素数値関数に広げるだけである。
そのためには、複素数の収束を考える必要があるが、それは複素平面における点の収束ということで、微積分IIで既に学んだことなので、 それを復習する。

今週の宿題は、宿題3と宿題4を5月1日(月)13:00までに。

次回5月12日は1回目の試験です。先週と今週の内容をとくに復習しておいてください。

5月12日

風飄々ひんやりと御岳日和、というのはいつの日のことか。あれから8年と7ヶ月半。簡単な復習のあと、 試験1をしました。
いずれも基本を問うもので、できて当然の問題ですが、どうでしょうか。

講評
$\fbox{1}$ (ii) があやしい人がちらほら。
$\fbox{2}$ (i) では $i$ で偏微分するもの多し。$i$ は定数なので、偏微分できません。 他に部分積分を使う頑固者も何人か。
成績分布:4点(21人)、3点(8人)、2点(2人)。
自身の点数はTACTから確認しておてください。見当たらない等の不具合がありましたなら、メール(yamagami@math...です)でご連絡を。

5月19日

雨でそれなりの気温に。桑の実も赤から黒へ。

今日は盛り沢山。

これまでで、関数の値を複素数にまで広げた。ここからは、変数の方も複素数に広げていく。

複素数を2つの実数の組、すなわち、複素平面の点と思う立場からは、 変数を表わす複素平面の点 $z$ に、値を表わす複素平面の点 $w = f(z)$ を対応させるということになる。
このようにあるものに、別のものを対応させる方法を数学用語で写像という。

1年の線形代数で学んだ一次変換も写像の一種であった。 ということで、行列で表わされる平面の一次変換 \[ \begin{pmatrix} u\\ v \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a & b\\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x\\ y \end{pmatrix} \] は、複素関数 \[ f(x+iy) = u +iv, \quad u = ax + by,\ c = x + dy \] を定める。

一般に、複素関数 $f(x+iy) = u(x,y) + iv(x,y)$ を考えるということは、2つの2変数関数 $u(x,y)$, $v(x,y)$ を扱うことに他ならず、
複素関数 $w = f(z)$ は、$z$ 変数を $w = u + iv$ なる変数に移す変数変換であると見ることもできる。
複素関数にはいろいろな顔があるということ。

複素値複素変数関数の実例として、 有理関数、指数関数、対数関数とべき関数を理解する。

対数関数とべき関数は、「主値」といわれ、偏角の不定性を避けるように制限したものになっている。
本によっては、不定性を温存した制限なしで書いてある場合もあるので、注意が必要。
慣れれば、それも便利ではあるが、混乱を避ける意味でも、まずは制限した場合を扱う。
それに伴う不自由さ(指数法則に関連した等式が成り立たない)も実感できれば申し分ないが、 まずは着実なところから経験する。
以上は「$z$ の式で表わされる」場合である。

$z$ だけでなく $\overline{z}$ も必要となるものとして、$\overline{z}$ と $|z|^2$ を挙げておく。他にもたくさんある。

複素微分とその計算規則。
形式的には実変数についての微積分と同じように見えるだろう。微分の諸公式(積と合成)も同じように成り立つ。
その実体を理解するために、自然数べき $z^n$ と $1/z$ の微分を調べる。
複素微分できない関数として $\overline{z}$ を理解する。一般に $\overline{z}$ を含むものは複素微分できない。

指数関数と対数関数の微分公式を改めて確認する。
基になるのは指数関数の極限公式で、これを実変数複素数値関数の積分の応用として確かめる。
その応用として、ベキ関数の微分を導く。

今回は複素偏微分の前まで。次回使うので、偏微分と chain rule の復習をしておいてください。

今日は、授業アンケートの週でした。
以前は紙でやっていたので、授業時間中に時間を取って回答・回収ということをしていたのですが、 今は TACT(小テスト)利用なので、期間内であれば、いつでもどこでもできることをわざわざ授業中に回答の時間を設けることは、 馬鹿げていると思いませんか。

今週の宿題は、宿題5と宿題6を5月22日(月)13:00までに。

少し先のことですが、6月6日(火)の変則授業日はオンラインの予定です。

5月26日

今日も晴天か、あじさいも咲き始め。

先週、いい漏らした正則関数と原始関数の定義から。

逆関数の微分についても書いておこう。対数関数が典型的かつ大事な例となる。
$D$, $E$ を領域(連結開集合)とし、 連続な複素関数 $f: D \to E$, $g:E \to D$ が互いの逆関数($z \in D$ に $w \in E$ が対応)とする。
このとき、$f$ が正則であれば $g$ も正則で、$g'(f(z)) = 1/f'(z)$ となる。
$f(z)$ として、$e^z$ を $D = \{ z; -\pi < \hbox{Im} z < \pi\}$ に制限したもの、 $g(w)$ として $\hbox{Log}\, w$($E$ は $\hbox{Log}$ の定義域)を取れば、
$g'(w) = 1/f'(z) = 1/e^z = 1/w$ となる。

さて、複素変数の関数を実2変数の関数の組と思えば、1年の微積分で学んだように chain rule が成り立つ。
その表示であるが、複素偏微分を使うと形良く表わすことができる(複素 chain rule)。
chain rule は多変数関数の微分の基本公式なので、しっかり復習しておく。

コーシー・リーマンによる正則関数の判定は $\frac{\partial f}{\partial\overline{z}} = 0$ ということで、
これの意味は、 $f$ の中に $\overline{z}$ の式が含まれないということ。
実関数を使って表せば、 \[ u_x = v_y, \quad u_y = - v_x \] (コーシー・リーマンの等式)となる。これも覚えるというよりは使い方を経験すべきもの。

最後に、いくつかの実例でその使い方を学ぶ。

来週は2回目の試験です。今度の範囲は短いような長いような。しっかり復習を。

6月02日

季節外れの台風に梅雨のはしり。

復習のあとに、2回めの試験でした。

講評
$\fbox{1}$ $\text{Log} z$ の定義域を書かぬ者、極めて多し。
$\fbox{2}$ コーシー・リーマン等式に言及せぬ者また多し。
成績分布:6点(1人)、5点(2人)、4点(15人)、3点(8人)、2点(2人)、1点(1人)。

6月06日

今日は変則曜日の授業をオンラインで行います。
下記の解説を参考に、テキストの6節「複素線積分」を学びます。
質問等はメールでどうぞ。
関連動画として 複素積分, 複素関数の積分 を挙げておきます。他にもいろいろあります。

6月16日

前線は南海上に下がって梅雨の中休みか、澄み渡る空の桶狭間。

複素関数のハイライトである積分定理とその応用。
テキストでは、積分路の連続変形で線積分の値が不変であることを直接示してあるのだが、ここでは不定積分が局所的に存在することを利用してみよう。
普通の説明だと、グリーンの定理をまず示し、それを複素線積分に書き直すということをするのであるが、複素線積分だけを使う近道ということで。

テキストの不具合($R$ とすべきところが $r$ になっていた、ガウス積分の線積分で $\pm i$ が抜けていた、など)を修正しました。最新のものをお使いください。

6月23日

あいかわらずの梅雨もようですが、日の長さはピークを過ぎ。今朝の最低気温20度。

前回は積分定理とその応用だったので、それなりの分量になりました。今日はその続きである積分公式とテイラー展開です。 これも詳しくやるとそれなりの量ですが、要点と使い方だけでしたらさほどではありません。
1年の微積分でもテイラー展開は経験したはずですが、その証明部分は結構な手間で、テイラー展開そのものが省かれる怖れもあります。
ここでは実変数の場合の結果を仮定せず、 テイラー展開が微分の公式というよりは(周回)積分の公式に昇華する、といったことを見ていきます。

まずは積分定理の補足から。これは、単独の周回積分ではなく、複数の閉曲線が関係した場合にも積分定理が成り立つという事実。
具体的には、大きな単純閉曲線の中に複数の単純閉曲線が島を作り、島のまわりの池の部分 $G$ に $D$ の穴がない状況で池の縁を形作る閉曲線に向きが定まるので、 その集まりを $\partial G$ で表わすと、 \[ \oint_{\partial G} f(z)\, dz = 0 \] が成り立つというもの。これは池の外周である閉曲線から各島に「土手」を引いて池を分割してみれば、島のない前回の場合に帰着する。

次に 左回りの単純閉曲線 $C \subset D$ で $C$ の内部に $D$ の穴を含まないものと $C$ の内部の点 $z$ に対して、 \[ \oint_C \frac{f(\zeta)}{\zeta-z}\, d\zeta = 2\pi i f(z). \] が成り立つ。 これは、$z$ を中心とする小さい円 $|\zeta - z| < r$ を島とし、$C$ と $|\zeta - z| = r$ の間の領域を $G$ とすると、 \[ \oint_C \frac{f(\zeta)}{\zeta - z}\, d\zeta = \oint_{|\zeta -z| = r} \frac{f(\zeta)}{\zeta - z}\, d\zeta = i \int_0^{2\pi} f(z + re^{i\theta})\, d\theta \] となるので、$r \to 0$ とすればよい。

得られた等式の両辺は $z$ について複素微分可能であることから、$z$ について微分すると、 \[ \oint_C \frac{f(\zeta)}{(\zeta-z)^2}\, d\zeta = 2\pi i f'(z) %z' \] であるが、左辺はさらにくり返し微分できる形をしているので、$z$ について微分していけば、帰納的に \[ n! \oint_C \frac{f(\zeta)}{(\zeta-z)^{n+1}}\, d\zeta = 2\pi i f^{(n)}(z) \] がわかる。以上の等式をコーシーの積分公式という。

とくに、$c \in D$ を囲む左回り円 $|\zeta - c| =R$ で $|\zeta - c| \leq R$ が $D$ に含まれるものを $C$ に取ると、 \[ f^{(n)}(c) = \frac{n!}{2\pi i} \oint_{|\zeta - c| = R} \frac{f(\zeta)}{(\zeta - c)^{n+1}}\, d\zeta. \]

最初の積分公式をこの場合に書き下せば \[ f(z) = \frac{1}{2\pi i} \oint_{|\zeta-c|=R} \frac{f(\zeta)}{\zeta - z}\, d\zeta \quad(|z-c| < R) \] この右辺で、$|z-c|/|\zeta - c| < 1$ に注意して \[ \frac{1}{\zeta - z} = \frac{1}{\zeta - c} \frac{1}{1 - (z-c)/(\zeta - c)} = \frac{1}{\zeta - c} \sum_{n=0}^\infty \frac{(z-c)^n}{(\zeta - c)^n} \] を代入すると、 \[ f(z) = \sum_{n=0}^\infty (z-c)^n \frac{1}{2\pi i} \oint_{|\zeta - c| = R} \frac{f(\zeta)}{(\zeta - c)^{n+1}}\, d\zeta = \sum_{n=0}^\infty \frac{f^{(n)}(c)}{n!} (z-c)^n. \] これは、実変数の場合のテイラー展開が複素関数として成り立つことを意味する。

具体例として、$e^z$, $\cos z$, $\sin z$, $\text{Log}(1+z)$, $(1+z)^\lambda$ を書き下してみる。

今日の宿題は手応え十分なので、途中まででも良いので、26日13:00 までにどうぞ。
来週は3回目のまとめと試験です。範囲は広いですが、例と宿題を中心に基本的なところを復習しておいてください。

6月30日

梅雨もいよいよ暴れ模様に。

いつものようにわざとらしい復習のあとで、 試験3をしました。

[講評]
$\fbox{1}$ 積分定理の簡単な適用問題でしたが、満足な解答は数えるほど。
$\fbox{2}$ (i) 積分定理と積分公式を混同するもの多し。直前の復習はいずこに。 (ii) 理由不明で $0$ を答えとするものも多し。
期末試験で再度問うことになりそうです。

成績分布:5点(5人)、4点(4人)、3点(4人)、2点(13人)、1点(1人)、0点(1人)。

7月07日

梅雨の中休みも今日までか。遠くからのぞむ鈴鹿のキレットに蝉の声。夏への一里塚。名古屋近在の神社仏閣に裸丈夫満つるの季節になりました。

今日はベキ級数を駆け足で見ていきます。

7月14日

梅雨も末期の荒れ模様に蓮の花、スピード感=やってる振り、で人を置き去りに。

先週は、ゆっくりしたせいか、最後にしわ寄せが。慌て気味で、不等式の抑える量を間違えました。 ベキ級数の基本定理(定理8.9)の証明は、テキストにあるように修正してください。
今日の内容(留数計算)につながるようにベキ級数を紹介したつもりですが、改めて見ると、テイラー展開の公式だけで済むようです。

最初に孤立特異点の意味について。正則関数が一点 $c$ を取り除いたまわりで定義されているとき、$c$ を孤立特異点という。
孤立特異点には見かけの特異点があり、それを除外したものが真の特異点。
真の特異点は、さらに、極と本質的特異点に分けられる。
重要なものは極で、これは逆数関数が特異点を零点にもつ場合で、零点の位数(重なり度)を極の位数という。

真の特異点では関数の値が定められないのであるが、特異点のまわりでの周回積分の値が意味を持ち、それを残りものという。 残りものを $2\pi i$ で割った値が留数 (residue)。
特異点が極の場合の留数は、積分公式により、導関数の値に帰着する。
また、特異点がある場合の積分公式は留数定理と称される。

積分計算をこの残りものの計算に還元する方法が留数計算と呼ばれるもの。
三角関数が関係した周期積分(例10.5)、有理関数の広義積分(例10.6)を留数計算で求めてみる。
この手の計算は万能ではないが、使える場合は非常に強力で、他の方法では示し難い公式が手に入る。
ここでは、その基本的な例を学ぶ。

宿題は今回が最後、7月17日13:00締め切り。お忘れなく。

7月21日

梅雨が明けました。夏をよぶかサルスベリ。

有理関数の不定積分を複素関数から見ておきます。テキストを改定しました。

不定積分と原始関数の復習。複素関数では、これがほぼ同値になる。(定理5.5)
大事な例が、$z^n$ ($n = 0, 1, \pm 2, \pm 3, \cdots$) の原始関数。
唯一の例外が $1/z$ で、その不定積分から、複素指数関数が現れる。(例5.6)
関連して、$\frac{1}{z-c}$ ($z \not\in c + (-\infty,0]$) の不定積分は、 \[ \int_a^z \frac{1}{\zeta - c}\, d\zeta = \int^{z-c}{a-c} \frac{1}{w}\, dw = \text{Log}(z-c) - \text{Log}(a-c) \] のように、複素対数関数で表わされる。
例6.19 で、 \[ \int_0^x \frac{1}{t+i}\, dt \] の具体的な表示。これを実積分 \[ \int_0^x \frac{t}{t^2+1}\, dt - i \int_0^x \frac{1}{t^2}\, dt \] と比較。

有理関数の不定積分は、部分分数表示をつかって、 \[ \int \frac{1}{(z-c)^n}\, dz \] に帰着。
部分分数表示も、複素関数の立場から、その存在と唯一性を導く。(命題6.17)

来週は、いよいよ期末試験。過去の試験範囲から2題、新たな範囲から2題。
授業アンケート実施中。TACT からどうぞ。

7月28日

もはや、夏が終わりつつあるような錯覚すら覚える、梅雨明け10日。

最終の試験4をしました。

おおよその成績分布は、
A+:3人、A:3人、B:0人、C:6人, C-:10人, F:4人
といったところ。

疑問点ある場合は、 8月4日(金)までにメールで問合せを。

[講評] 期末試験で問う旨、授業日誌で予告していた試験3とほぼ同じ問題である $\fbox{1}$, $\fbox{2}$ からして悲惨な結果に。
$\fbox{3}$ は、授業でも取り上げた留数計算の例でしたが、留数以前の段階で沈没するもの多し。
$\fbox{4}$ は直前のまとめで大きく取り上げ、当然復習してあるべきものが、形式的な式を書くだけの人が大部分でした。
ということで、一部のよく理解できた人以外は、再履修した方がよいと思われる結果とはなりました。

蛸壺やはかなき夢を夏の月


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