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名古屋微分方程式セミナー 2008年度

セミナー世話人:三宅正武 杉本充 菱田俊明 中西賢次 津川光太郎 加藤淳



1月19日(月)
14:45 ~ 16:15
講師:Ilia Kamotski 氏(University of Bath)
題目:Lamé operator in Hölder domains: regularity of a solution and spectral properties
 We investigate the spectrum of a Lamé operator in bounded Hölder domains. Roughly speaking, we demonstrate that in the presence of sufficiently singular outward cusps this problem has properties typical for unbounded domains (with the singular point at the boundary playing a role somewhat similar to infinity): the loss of compactness, the existence of continuous spectrum, of incoming and outgoing waves, of a scattering matrix, limiting absorption principle etc. We discuss all these and further related issues. The talk will be based on the joint work with Dr. N.Babych.
16:30 ~ 18:00
講師:三宅正武 氏(名古屋大学 多元数理)
題目:On the Newton polygon and its Gevrey nature for singular system of ordinary differential equations
 特異点を持つ単独方程式に対しては、作用素の表象から自然に定義される Newton 図形を用いる事により形式 Gevrey 空間における作用素の指数公式など解の Gevrey 性に関する結果が視覚的に理解される。 一方で、微分作用素の非可換性のゆえに、方程式系に対する Newton 図形がどのように定義されるのか不明であった。
 この講演では、方程式系 zp+1d/dz−A(z) がブロック三角型に形式(または有理)同値変換が可能な事を示事により、 Newton 図形の定義可能性を明らかにし、更に、形式 Gevrey 空間における指数公式が、単独作用素と同じように、 それにより視覚的に理解される事を紹介する。

12月15日(月)
講師:柴田徹太郎 氏(広島大学 工学研究科)
題目:Asymptotic properties and inverse spectral problems for nonlinear Sturm-Liouville problems
概要 (PDF file)
12月8日(月)
講師:赤堀公史 氏(愛媛大学 理工学研究科)
題目:Blowup and scattering for the focusing nonlinear Schrödinger equation with L2-supercritical and H1-subcritical power
 本研究は, 大阪大学大学院基礎工学研究科 名和範人氏との共同研究である. 引力型で, L2-優臨界かつ H1-劣臨界指数を持つ冪型の非線形シュレディンガー方程式に対し, ポテンシャルの井戸 PW を導入する. PW は非有界な開集合で, 少なくとも2つの交わらない (ともに非有界な) 開集合 PW+ と PW- に分解できる. さらに, PW+ から出発した解は散乱状態を持ち, PW- から出発した解は blow up 又は grow up する. ground state は PW には属さないが, PW+ と PW- の各々の閉包の共通部分に属し, 不安定である;即ち2種類の不安定性を示す.
 この講演では, PW+ における散乱の結果を主に紹介する. この結果は, Holmer-Roudenko (CMP, 2008), Duyckaerts-Holmer-Roudenko (preprint, 2007) の次元, 冪の指数の一般化となっている. 証明では, concentration compactness 的な議論が重要な役割を果たすが, この議論は名和範人氏 (CPAM, 1999 appendix D) が grow up する解の証明で用いた技法 と良く似たものとなっている (Kenig-Merle (Invent. Math. 2006)や Duyckaerts, Holmer-Roudenkoとは異なっている).

11月17日(月)
講師:砂川秀明 氏(大阪大学 理学研究科)
題目:2次元 NLKG 系の大域解について [質量共鳴のある場合]
 空間 2 次元における非線形 Klein-Gordon 方程式系 (以下 NLKG 系と略す) の初期値問題を考える。 質量項の間に共鳴関係がない場合の解の時間大域的な挙動は詳細に調べられているが、 質量共鳴がある場合についてはまだ分かっていない事柄が多い。 本講演では共鳴がある場合に NLKG 系が時間大域的な古典解を持つための非線型項の形状に関するひとつの十分条件を与え、 その意味について論じたい。 (川原雄一朗氏との共同研究)

11月10日(月)
講師:土田哲生 氏(名城大学 理工学研究科)
題目:周期係数楕円型方程式のグリーン関数の漸近形と極限吸収原理
 周期係数楕円型方程式のグリーン関数 Gλ+i 0(x,y) の |xy| が大きいときの漸近形を, パラメータ λ がスペクトルの下端に近いときに, ブロッホ変換を用いて計算する.

10月20日(月)
講師:加藤 淳 氏(名古屋大学 多元数理)
題目:On endpoint Strichartz estimates for the 2D Klein-Gordon equation
 2次元 Schrödinger 方程式及び3次元波動方程式に対する endpoint Strichartz 評価は, 一般に成り立たないことが知られているが, 初期値に球面方向の正則性を加えると成り立つことが, Tao (2000), 町原-中村-中西-小澤 (2005) によってそれぞれ示されている.
 この講演では2次元 Klein-Gordon 方程式に対する endpoint Strichartz 評価とその応用について考察する.

10月6日(月)
講師:岸本 展 氏(京都大学 理学研究科)
題目:Local well-posedness for a quadratic nonlinear Schrödinger equation
 本講演では R および R 2 上の非線形 Schrödinger 方程式で、 非線形項が未知関数 u を用いて c1u 2+c2ū 2 (c1, c2 は複素定数) と表されるものについて、初期値問題の Sobolev 空間 H s における時間局所適切性を考える。
 1次元、2次元共に Bourgain の Fourier 制限法によって得られる適切性の下限は s= −3/4 であるが、方程式の線形部分で決まる Bourgain ノルムに非線形性を考慮した修正を加えることで、適切性の下限を s= −1 まで下げることができる。

9月11日(木)15:00〜
講師:Liu Weian 氏(武漢大)
題目:Blow-up, Quench, Aggregation and Collapse in a Chemotaxis Model
概要 (PDF file)
7月28日(月)
講師:Neal Bez 氏(バーミンガム大)
題目:Curved Kakeya maximal operators and variable kernel singular integral operators via the method of rotations
 For all d≥2 and p∈(1, max(2, (d+1)/2)], we prove sharp L^p to L^p(L^q) estimates (modulo an endpoint) for a directional maximal operator associated to curves generated by the dilation matrices exp((log t)P), where P has real entries and eigenvalues with positive real part. One may view such dilations as generalised parabolic dilations. For the corresponding Hilbert transform we prove an analogous result for all d≥2 and p∈(1, 2].
 Consequently, via the method of rotations, we prove new Lp bounds for Kakeya-type maximal operators taking averages over certain families of curved sets in R^d and for variable kernel singular integral operators arising from certain variable coefficient PDE.

6月30日(月)
講師:前田昌也 氏(京都大学 理学研究科)
題目:Concentration of Standing Waves of Nonlinear Schrödinger Equations
 ポテンシャル項のついた非線形シュレディンガー方程式の定在波の形について考察する. 定在波は L^2 ノルム一定の条件の下でエネルギー汎関数を最小化するものとし, L^2 ノルムが小さいときの一意性と大きいときの定在波の集中とそれに伴う対称性の崩れを示す. また, 時間が許せばより高いエネルギーを持つ定在波についても触れたい.

6月16日(月)
講師:冨田直人 氏(東京女子大学)
題目:Pseudo-differential operators with symbols in α-modulation spaces
 今回の内容は, 杉本充氏(名古屋大)と小林政晴氏(東京理科大)との共同研究である. 擬微分作用素の L^2-有界性に関する基本定理として知られている Calderón-Vaillancourt の定理の拡張を考えよう. Sjöstrand は modulation 空間を, Sugimoto は Besov 空間をシンボルクラスとして用いることにより, それぞれ Calderón-Vaillancourt の定理の拡張を得ている. これらの2つの結果は互いに独立な結果であるが, α-modulation 空間を用いることにより, 統一的な扱いができることについて報告したい. また時間が許せば, 最近得られた擬微分作用素の L^p-有界性のことにも触れたい.

6月2日(月)
講師:澤田宙広 氏(京都大学 数理研)
題目:スピン・コート現象の数理解析と線形化問題の解の存在
 スピン・コート現象と呼ばれる、粘性流体を回転円盤に載せたモデルの数理解析的な解明を試みる。 Navier-Stokes 方程式によって記述される非圧縮流体が平行板領域を占めているとし、 それぞれの境界に自由境界条件と Navier の slip 境界条件を課す。 非線形問題を線形化し、その線形問題の解の存在定理を示す。 その際、対応するレゾルベント方程式を考え、 Maximal Regularity 定理や Newton の凸多角形の方法を用いる。

5月12日(月)
講師:加藤 孝盛 氏(名古屋大学 多元数理)
題目:Schrödinger 方程式に対する逆問題の安定性評価
 本講演においては, Schrödinger 方程式の低階項の係数を決定する逆問題を取り扱う. 与えられた有界な領域の境界の十分小さな任意の近傍で低階項の係数が一致しているとき, 任意の部分境界に観測データである Neumann データを与えることで, 逆問題の解の一意性と安定性評価を示した. 主結果は, 逆問題の解の Hölder 安定性を導いたことである.

4月28日(月)
講師:津川 光太郎 氏(名古屋大学 多元数理)
題目:Well-posedness of Schrödinger equations with quadratic nonlinearity
 二次の非線形項を持つシュレディンガー方程式の滑らかさの低い初期値に対する時間局所適切性を考え, 既知の結果と Bourgain の Fourier 制限ノルム法を紹介し, これに関連する岸本展氏との共同研究結果を述べる.

4月21日(月)
講師:菱田 俊明 氏(名古屋大学 多元数理)
題目:Asymptotic profile of the steady Stokes flow around a rotating obstacle
 回転する障害物の周りでの非圧縮粘性流を考える。回転の影響による波の形を見ることを目的とする。 回転軸という特別な方向があるので、解の空間無限遠での減衰構造の異方性を特に捉えたい。 最初のステップとして本講演では、定常 Stokes 流から異方性を取り出す。 R. Farwig (Darmstadt) との共同研究。

4月14日(月)
講師:Ville Turunen 氏 (Helsinki University of Technology)
題目:Pseudo-Differential Operators and Symmetries
 We study pseudo-differential operators globally on compact Lie groups, without resorting to local charts. A pseudo-differential operator can be presented as a convolution operator valued mapping on the group, and we obtain a full global symbol and global calculus. As an example, we investigate analysison the 3-dimensional sphere. (joint with Michael Ruzhansky (Imperial College London))

4月8日(火)16:00〜 理1号館453号室
講師:杉本 充 氏(名古屋大学 多元数理)
題目:臨界指数の重みに関する極限吸収原理と放射条件
 非斉次 Helmholtz 方程式の解は、複素数値に対するレゾルベントの実軸への極限を用いて表記される。 極限吸収原理とは、この極限がある重みつき空間において存在することをいう。 また、この事実を用いることにより、 シュレディンガー方程式に対する時空間評価式が導かれることも知られている。
 この講演では、その重みの臨界指数の場合においては、 極限吸収原理には古典軌道から定まるある幾何学的構造が関わっていることを説明し、 さらにはその放射条件との関連についても言及する。 また、この解析にはフーリエ積分作用素の理論が用いられるが、時間が許せばそれについても概説したい。


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