ファイル更新日:2023年05月18日
教育・就職
■2023年度■
●「数理の香」コロキウム
「多元数理」という大きなゼミナールを実現する目的で,4年生・大学院学生向けの談話会を開催します.数理学科および多元数理科学研究科の学生向けの催しです.
- 数理科学におけるトリヴィア(trivia),豆知識,雑学から話を始め(導入);
- 関連する数理科学の基本概念と初等的な参考文献を提示し(発展);
- その先にあって,修士論文(さらには博士学位論文)のテーマにつながる話題を提供します(展望).
一回きりの講義,ゼミナール,さらにはチュータリングという形式を念頭におき,学問的な内容に限らず,学生さんが大いに関心をもつ様々な事項(例えば将来のキャリアパスなど)に関する情報提供(雑談)も行い,また参加者が自由に質問できる機会を設けます.
- このコロキウムは数理学科/多元数理科学研究科の学生向けに開講されています.一般の方の聴講はできません.
次回以降の講演
第2回「Askey–Wilson多項式・Askey–Wilson代数・“Askey–Wilson空間” ?」
- 日 時
- 2023年6月7日(水) 15:00〜16:30
- 会 場
- 多元数理科学棟 509講義室
- 講演者
- 柳田伸太郎 (名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
- 要 旨
直交函数系は近代数学の進展において重要な役割を演じましたが,その中でも「超幾何直交多項式」と呼ばれるクラスが19世紀以来さかんに研究されています.20世紀に入ってそれらの分類理論が発展し,Askeyスキームと呼ばれる分類図にまとめられます.今回の話の第一部ではこうした話を紹介します.前提知識は学部一年次までの数学です.
第二部では超幾何直交多項式系の $q$ 差分類似の話をします.やはり直交多項式系を考えるのですが,超幾何多項式の $q$ 類似で表せるものを扱います.1980年代にそれらの分類理論が完成し,分類図は $q$-Askeyスキームと呼ばれています.こうした話を第二部で紹介します.前提知識は,実は第一部より少なくて,高校までの数学で済みます.
最終部はやや発展的な話をします.二重アフィンHecke環はspherical subalgebraと呼ばれる特別な部分代数を持ちます.Askey–Wilson多項式の場合の部分代数をAskey–Wilson代数と呼びますが,これは21世紀中に色々な文脈で発見されていて,複数の名前がついています:
- Zhedanov代数
- 4点付き球面のKauffmanスケイン代数
- Racah代数の部分代数
- 複素三次曲面の量子散乱図から定まる非可換環
こうした話を第四部で紹介します.
過去の講演
第1回「デカルトの多面体定理から離散的ガウス-ボンネ定理へ」
- 日 時
- 2023年5月17日(水) 14:45〜16:15
- 会 場
- 多元数理科学棟 509講義室
- 講演者
- 森吉仁志 (名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
- 要 旨
多面体に対して,$(\mbox{面の数}) - (\mbox{辺の数}) + (\mbox{頂点の数})$として定まる整数を,その多面体のオイラー数という.正多面体のオイラー数はいつも$2$であるというオイラーの公式は,良く知られていよう.一方,オイラーの先達というべきデカルトが1630年に証明した定理によると,閉多面体の各頂点において定まる “angle defect” という実数をすべての頂点に関して足上げると,$2\pi \times (\mbox{閉多面体のオイラー数})$に一致する.この定理は,ライプニッツによって記録され,数奇な運命を経て2世紀後に再発見された.現代幾何の言葉で言い直すと,デカルトの定理とは「離散的ガウス–ボンネ定理」ということになる.ほぼ4世紀を経たデカルトの定理を振り返り,それが現代幾何学の先端研究につながっていく様子を解りやすく解説する.
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