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ファイル更新日:2018年10月31日 名古屋大学数理科学同窓会■名古屋大学数理科学同窓会学生奨励賞■●学生奨励賞の概要学生奨励賞(飛田賞)は名古屋大学数理科学同窓会(以下, 同窓会)が優秀な学生・若手研究者を讃える目的で制定された.
●受賞者一覧
●飛田基金学術奨励賞(飛田賞)の名前の由来となっています飛田武幸名誉教授/同窓会名誉会員より, 受賞の記念となるものを受賞者に個人的に贈りたいとのことで, 2014年に高額のご寄付をいただきました. 数理科学同窓会では, ご寄付を飛田基金として管理させていただき, 受賞後の研究に役立つようにと受賞者が希望する書籍をお贈りすることといたしました. 第1回から第6回までの受賞者にはご希望の書籍をお贈りしました. 飛田名誉会員のご厚意による記念品(書籍)の贈呈を, 末長く継続する所存です. ●第7回学生奨励賞(飛田賞)名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して, 数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第7回受賞者が鈴木正俊氏(東京工業大学理学院数学系)に決定しました. 受賞理由Riemannゼータ関数に対するRiemann予想は整数論の予想の中でもとりわけ困難な問題として知られているものですが, 鈴木正俊氏はJ. C. Lagarias氏との共著論文の中で, ある種の大域的なゼータ型関数がRiemann予想の類似を満たすという, おそらく誰も予想していなかった驚くべき結果を証明しました. これはそれぞれ独立に得られた結果ですが, 同じ時期に同じ結果を得ていたので最終的には二人の共著となりました. 鈴木氏は, その後L. Weng氏によって導入されたWengのゼータ関数が種々の場合にRiemann予想の類似を満たすことを証明しています. 彼の手法は, 鈴木氏以前に示されていた, 関数体の合同ゼータ関数やSelbergゼータ関数の場合のRiemann予想の証明とは全く異なるものです. I. Fesenko, G. Ricotta氏との共著論文ではスキーム上のHasseゼータ関数について考察し,「平均周期的」な関数とゼータ関数との新しい関連を確立しました. さらに解析数論的な, 解析的計算を主体として, ゼータ関数の零点の「差」の挙動に, 一般の値分布を記述するいわゆるM関数が現れることを初めて発見しました. これらは, どれも画期的な内容を含んでいます. 最近の鈴木氏の主要な研究方向の一つは, ゼータ関数にHamiltonianを対応させ, それをできるだけ具体的に表示することでRiemann予想にアプローチする, というもので, de Brangesの関数空間の理論やSchrödinger方程式論などを背景とする壮大な試みであり, これも大変魅力的な方向です. 鈴木氏の研究は, もちろん現時点では本来のRiemann予想の証明には届いていませんが, にもかかわらず, Riemann予想の類似の成立する世界を拡大しより豊かにしたといってよいでしょう. その後も, 次々と新しい視点からの研究を進めていく独創性と数学的力量は誠に素晴らしいもので, こうした鈴木氏の業績は飛田賞受賞候補者として大変相応しいものです. 鈴木正俊 氏 略歴 (2018年10月現在)
受賞のひとことこの度は, 飛田武幸先生という偉大な先輩のお名前を冠した, 非常に名誉な賞を頂き, 大変光栄に思います. 残念ながら, 私は飛田先生と直接の面識はありませんでしたが, 実は愛知県岡崎市という同じ郷土の出身というご縁がありまして, その事をとても誇らしく思っております. 私が多元数理科学研究科に在籍していた頃は, 研究者を目指してはいたものの, その実現に向けて多くの悩みを抱えながらあがいていました. そのような私が研究者として歩みはじめるきっかけをつかめたのは, 指導教官であった松本耕二先生のご指導はもちろんのこと, 当時の多元数理科学研究科での講義, セミナー, 研究集会において知り合った多くの先生方のご指導や, 学生の仲間同士の議論を通じて, 研究するとはどういう事かを肌で感じることができたからだと思います. そのような環境の中で学び, 研究できたことは, 私にとってとても幸運なことでした. また, 学位を取得して就職した後も, 自身の研究を進めるうえで, 多元数理研究科には何度もお世話になりました. このような長年にわたるご指導, ご支援に対し深く感謝すると共に, 指導教員であった松本耕二先生をはじめ, 私が在学当時から多元数理科学研究科におられた諸先生方, 教育研究支援室, 事務室, 図書室の職員のみなさまに, この場を借りて改めて御礼を申し上げます. 最後になりますが, 一人の後輩として飛田先生の御冥福を心からお祈り申し上げると共に, 先生のお名前を汚さぬよう, この度の栄誉を糧に, 今後も研究・教育に全力を尽くす所存です.
●第6回学生奨励賞(飛田賞)名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して, 数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第6回受賞者が川上 裕氏(金沢大学理工研究域数物科学系)に決定しました. 受賞理由曲面の古典微分幾何学は微分幾何発祥の地とも言える古典的な題材でありながら, 現在でも多くの研究者を惹きつける, 尽きることのない研究分野です. 川上裕氏はこの分野において, 曲面論にNevanlinna理論を導入して新機軸を開拓するなど, 独創性に富んだ多くの業績を挙げており, 現在最も活動的なこの分野の若手研究者の一人です. 川上氏の最初の大きな発見は, 宮岡・佐藤曲面と呼ばれる代数的極小曲面の中に, Gauss写像の全分岐指数が2.5の例があるという, 複素解析の専門家を驚かせた注目すべき指摘でした. この発見は川上氏の学位論文の一部となっております. 続いて川上氏は3次元空間内の完備極小曲面のGauss写像の最良の除外値数を与えた藤本坦孝氏の研究を深く分析し, 除外値数の上限の幾何学的な意味を明らかにしました. そして4次元Euclid空間内の完備極小曲面のGauss写像の除外値数の評価に関する結果の統一的解釈を与え, 種々の応用を与えています. さらに分岐定理や一意性定理といったGauss写像の値分布論的な性質の幾何学的背景を明らかにし, Ahlforsの5島定理やBernshtein型定理の別証明を提示しました. またこうした活発な研究活動が注目されて, 日本数学会からの推薦で, 雑誌「数学」に曲面のGauss写像の値分布に関する論説を執筆しています. こうした川上氏の業績は曲面論に新風をもたらす意義深いものであり, 飛田賞受賞者として誠に相応しい研究者です. 川上 裕 氏 略歴 (2017年10月現在)
受賞のひとことこの度は, 第6回名古屋大学数理科学学生奨励賞(飛田賞)を頂きまして有難うございます. 誠に身に余る光栄でございます. 私は他大学の教育学部出身で, 多元数理科学研究科に入学した際は大学院を修了できるのか不安でしたが, 研究科の教育システムを利用したり, 同期の仲間と自主セミナーを行ったりすることで, 専門分野の基礎を身に付け, 幅広い分野の知見を得ることができ, 研究が評価され学位を取得することができました. 私の研究テーマである「ガウス写像の値分布論」は幾何学と函数論を跨ぐもので, 多元数理科学研究科で培った学力のおかげで, 研究を更に発展させることができたと思います. 最後になりますが, ご指導をいただいた指導教員の小林亮一先生, 副指導教員の納谷信先生, 多元数理科学研究科教員の皆様, 陰に陽に私を支えていただいた小崎和子さんをはじめとする教育研究支援室・事務室の皆様, そして共に学んだ多元数理科学研究科同期および先輩, 後輩の皆様にこの場をお借りして深く感謝を申し上げます.
●第5回学生奨励賞(飛田賞)名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して, 数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第5回受賞者が神田遼氏(大阪大学大学院理学研究科)に決定しました. 受賞理由Grothendieck圏の研究に関して最も中心的なテーマの一つに, 部分圏の分類問題がある. 神田氏は, 各Grothendieck圏に対しそれの「原子スペクトル(atom spectrum)」という位相空間を定義し, 局所ネーター的なGrothendieck圏の局所化部分圏と原子スペクトルの開集合の間に一対一対応を構成した. これは先人の定理をはるかに拡張するものであり, (非可換)ネーター環の加群圏の場合でさえまったく新しい結果である. Grothendieck圏の原子は可換環の素イデアルの類似物であるが, 神田氏はこの点に着目し, 可換環論における素イデアルのBass数や剰余体の概念を一般のGrothendieck圏の原子に対して拡張した. さらにその応用として, Grothendieck圏の入射包絡不変部分圏と原子スペクトルの部分集合の間にある一対一対応を見出した. これらの結果を鑑みると, Grothendieck圏の原子スペクトルとして実現される位相空間がどのようなものか調べることが重要になる.
一般に原子スペクトルはT0空間であるため, そこには閉包の包含関係を用いて自然に半順序集合の構造が入る. 神田氏は, 任意の半順序集合が, あるGrothendieck圏の原子スペクトルとして実現できることを証明した. 色付き箙という箙を導入し, それに付随するGrothendieck圏を構成するという斬新な手法である. さらに, 局所ネーター的なスキームX上の準連接層のなすGrothendieck圏Qcoh Xに対して上述の結果を深化・拡張した. すなわち, Qcoh Xの閉部分圏とXの閉部分スキームの間, およびQcoh Xの前局所化部分圏と構造層OXの局所フィルターの間に一対一対応を構成したのである. これは, 閉部分スキームという幾何学的な対象と閉部分圏という圏論的な対象が等価であることを示すものであり, Xがアフィンスキームの場合の先人の結果を含む. 以上の神田氏の研究業績は, 環論・表現論双方に意義深い貢献をもたらす重要な成果であり, 飛田賞受賞者として誠に相応しい. 神田 遼 氏 略歴 (2016年10月現在)
受賞のひとことこの度は第5回飛田賞を受賞させて頂けることを大変光栄に思います. この多元数理科学研究科は紛れもなく私の数学の出発点であり, また研究者として成長するための場でもありました. 国内外の研究者を迎えて開催される環論・表現論セミナーでは, いつも最先端の話題が提供されて活発に議論が行われており, その中で私は自分が飛び込もうとしている世界がいかに広く, 豊かで, そして自由な発想に満ちているのかを実感することができました. 特に日本に長期滞在する外国人研究者と継続的に交流できたことは, 私の価値観を大きく変える貴重な経験であったと感じています. 指導教員であった伊山修先生には長年に渡り温かくご指導頂いたこと, そしてこのような多様性に満ちた環境を整えてくださったことに心より御礼申し上げます. また, 高橋亮先生には私の研究のために惜しみない助言をくださったことに感謝致します. 今回の受賞を励みにして, より一層研究に邁進して参ります. ●第4回学生奨励賞(飛田賞)名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して, 数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第4回受賞者が木村杏子氏(静岡大学)に決定しました. 受賞理由可換環論と組合せ論の境界領域で, 組合せ論的対象から派生する可換環の環論的性質や不変量の研究において, 独特の新しい感性で新局面を切り開きました. とくに, 単項式イデアルの算術階数の計算は, 一般に計算困難な算術階数について豊富な計算例を与えたもので, 可換環論の立場からも高く評価されています. 他にも, 有限グラフのエッジイデアルの環論的性質を精力的に調べて, 正則性の評価を始めとして, 優れた成果を挙げました. 院生時代の問題設定を継承発展させて次々と成果を挙げるとともに, 研究対象や問題意識を広げつつあり, 今後の更なる活躍が期待されます. 木村杏子 氏 略歴 (2015年10月現在)
受賞のひとことこのたびは飛田賞を受賞することができ, 大変うれしく光栄に思います. まだまだ未熟者ですが, 研究者として独り立ちできたのも, 何を研究したいのか具体性のなかった私を丁寧に指導してくださいました吉田健一先生のおかげです. ここに, 改めて感謝申し上げます. 当時の多元数理科学研究科のシステムの関係もあり, 私は学部4年, 修士1年, 修士2年とそれぞれ異なる分野を学びました. なかなか自分の専門分野を決めることができなかった私にとって, いろんな分野にチャレンジできたことは幸運でありました. また, 様々なセミナー等が開催されていたため, 大学院生の頃にはいろんな分野に触れることができました. そのような環境を作ってくださいました先生方, また, 様々な方面からサポートしてくださいました支援室の皆様, そして一緒に勉強した仲間たちに感謝申し上げます. 公私を含めた様々な環境の変化に伴い, 研究時間を確保できるよう少しずつ生活を変えてきました. 私事ですが, 今回はその大きな節目に差し掛かっているように思います. そのような折での受賞となりました. この賞を糧に, より一層研究に精進していきたいと思います. ●第3回学生奨励賞(飛田賞)名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して, 数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第3回受賞者が野原雄一氏(香川大学)に決定しました.
授賞式は2014年10月18日, 名古屋大学ホームカミングデイの折りに多元数理科学研究科において執り行われ, 数理科学同窓会会長より記念の楯と副賞が贈呈されました. 受賞理由シンプレクティック幾何における「ミラー対称性問題」「幾何学的量子化問題」をテーマに, 優れた業績をあげている. 代表作は
である. 野原雄一 氏 略歴 (2014年10月現在)
受賞のひとことこの度は素晴らしい賞をいただき, 大変光栄に思います. 大学院生の頃は趣味のようにいろいろなセミナーや集中講義に参加して楽しんでいただけのような気がしますが, そのときに勉強したことが予想より多く今の研究につながっており, 最先端の数学に触れられる機会が多い恵まれた環境だったのだと改めて感じております. 様々な形で勉強や研究をサポートしてくださった先生方, 支援室の皆様, そして一緒に勉強した仲間に心より感謝申し上げます. ●第2回学生奨励賞(飛田賞)名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して, 数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第2回受賞者が見正秀彦氏(東京電機大学)に決定しました.
授賞式は2013年10月19日, 名古屋大学ホームカミングデイの折りに多元数理科学研究科において執り行われ, 数理科学同窓会会長より記念の楯と副賞が贈呈されました. 受賞理由S. M. Voronin は1975年に, 次のようなRiemannゼータ関数ζ(s)のuniversalityを証明した. 正確さを欠くが, Voroninの定理の主旨を一言で述べれば次のようになる. 0 < v < 1/2をみたす実数vに対して, f(s)を閉円板Dv = {s ∈ C; |s| ≤ v}上の0を取らない連続関数で, さらにDの内部で正則とする. この時, 正の実数tを選んで, Dv上の与えられた関数f(s)を関数ζ(s + 3/4 + ti)で近似することができる. 見正氏は一貫して, universalityの研究に取り組み, 次々と成果をあげている. その成果の一つは, このVoroninの定理の類似をDirichlet級数L(s, χ)をはじめ様々なL-関数について証明するのに成功したことにある. Universalityの数論的意味については, Riemann仮説との関わりはどうなのかという自然な疑問が生じる. これに関しては, B. Bagchiが1981年に, Riemannゼータ関数については, Riemann仮説をuniversalityの言葉によって表現できることを示した. 見正氏はこの結果もDirichlet級数に一般化した. また, 類数の分布とuniversalityとの関係にも成果を上げ, universalityの数論的意義を示した. さらには, Riemannゼータ関数と保型L-関数による同時近似を論じ, mixed universality 理論の創始者として高く評価されている. 見正氏のこれらの業績は顕著なものであり, 学会で高く評価されており, 飛田賞にふさわしいものであると考える. 見正秀彦 氏 略歴 (2013年10月現在)
受賞の一言このたび, 第2回名古屋大学数理科学学生奨励賞を賜ることが出来, 誠に光栄に思います. 大変嬉しく思うと同時に, 身の引き締まる思いであります. この賞の受賞者に選ばれることは, 多元数理科学研究科出身者とってはこの上ない名誉であること, また, これまでの研究が評価されただけではなく, これからの更なる研究の進展が期待されていることを肝に銘じ, 今後はより一層研究に力を注ぐ所存でございます. まだまだ未熟ではあるものの, 現在, 数学者として独り立ち出来たのは, 多元数理科学研究科在学時に多くの出会いに恵まれたからであると常日頃から感じております. まず何をおきましても, 直接ご指導をいただいた谷川好男先生, 松本耕二先生のお二人の先生に感謝を申し上げます. このお二人との出会いがなければ, 私が解析的整数論に進むことも, また研究テーマである「ゼータ関数の普遍性」と出会うこともありませんでした. ここで改めて先生方に敬意を表します. 本研究科では多くの集中講義, セミナーが行われてきましたが, そういった機会に出会った先生方との共同研究が現在も続いています. また, 本研究科の先生方の講義, 交流から得た刺激は, 直接研究と関わることはなくとも, 教育, 学生指導に携わる立場となった今では, とても参考になっています. 多元数理科学研究科で学び, 研究できたことは私にとって大変幸運であったと感じております. 最後になりますが, 多元数理科学研究科の諸先生方, 解析的整数論研究室の先輩, 後輩をはじめとする当時学生であった皆様, 現在学生の皆様, そして研究生活, 学生生活をご支援いただいた事務室, 図書館職員のみなさまにこの場を借りて深く御礼を申し上げます. 誠にありがとうございました. ●第1回学生奨励賞(飛田賞)名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して, 数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第1回受賞者が和田堅太郎氏(信州大学)に決定しました. 授賞式は2012年10月20日, 名古屋大学ホームカミングデイの折りに多元数理科学研究科において執り行われ, 数理科学同窓会会長より記念の楯と副賞が贈呈されました.
受賞理由和田氏はワイル群の q 類似として定義されるHecke環の表現論の研究において重要な貢献をしております. それを裏付けるのが, 既に出版されている7篇の論文と, その内容の水準の高さです. 和田氏の主要な研究テーマは, 古典型Weyl群の拡張である複素鏡映群に付随するArki–Koike algebra Hn,r 及び q-Schur代数 Sn,r のモジュラー表現です. 一般に「表現論」では既約な表現の決定と, 可約な表現の既約表現への分解が主要な問題となりますが, Hn,r については量子群の結晶基底と関連付けることによって有木氏により既約表現への分解についての問題が解決されております. 和田氏が目指しているのは未解決な Sn,r の場合であり, 修士論文の時点からこの問題への重要な貢献を行っております. 中でも量子群 Uq(g) の ± 分解 Uq± を用いた Sn,r の構成法は, Sn,r を詳しく調べる方法を提供したばかりでなく, 新しい代数構造を創造した点で大いに評価されるものです. 和田氏の結果はこの分野で必須なものであり, この結果を踏まえて本人によってもあるいは他の研究者によっても今後次々と先端の成果が生まれることが期待されます. また, 和田氏は広く代数学の分野においても将来を嘱望される研究者です. 従って,「これまでの業績」および「独創性と発展性」の双方の観点から, 和田氏の研究は高く評価されるものと考えます. 和田堅太郎 氏 略歴 (2012年10月現在)
受賞のひとこと名古屋大学数理科学学生奨励賞(飛田賞)が創設され, その第1回目に受賞することが出来たことを大変嬉しく, また光栄に思います. まだまだ駆け出しの研究者で, 自分の仕事をこなすことで精一杯の日々を送っている中で, このような形で自分の専門分野とは限らない方々にも私の仕事を評価して頂けたことは, 大変励みとなり, 今後もますますがんばっていこうと改めて思っています. 私が大学院に進学した頃に, ちょうど多元数理科学研究科では大学院教育の改革が進んでおり, 少しでも学びやすく, 研究しやすい環境を作ろうと, 先生方がいろいろな取り組みをされていました. そのような環境の中で, 大学院生として多元数理科学研究科で学び, 研究できたことは大変幸運であったと感じています. 最後に, 指導教員であった庄司先生をはじめ諸先生方, 教育研究支援室の方々, 多くの友人等に支えられて今の自分があることに, この場をかりて感謝致します. 関連記事
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