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ファイル更新日:2024年10月15日 名古屋大学数理科学同窓会■名古屋大学数理科学同窓会学生奨励賞(飛田賞)■●学生奨励賞の概要学生奨励賞(飛田賞)は名古屋大学数理科学同窓会(以下,同窓会)が優秀な学生・若手研究者を讃える目的で制定された.
●受賞者一覧
●飛田基金学術奨励賞(飛田賞)の名前の由来となっています飛田武幸名誉教授/同窓会名誉会員より,受賞の記念となるものを受賞者に個人的に贈りたいとのことで,2014年に高額のご寄付をいただきました.数理科学同窓会では,ご寄付を飛田基金として管理させていただき,受賞後の研究に役立つようにと受賞者が希望する書籍をお贈りすることといたしました.第1回から第6回までの受賞者にはご希望の書籍をお贈りしました.飛田名誉会員のご厚意による記念品(書籍)の贈呈を,末長く継続する所存です. ●第13回学生奨励賞名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して,数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第13回受賞者が日下部佑太氏(九州大学大学院数理学研究院)に決定しました. 授賞理由多変数複素解析において,岡とGrauertが創始し,Gromovが現代化したホモトピー原理の理論は,Forstneričによって岡多様体論として定式化されたが,複素多様体の岡性とGromovの提案した種々の楕円性条件との関係は未解明のままであった. このような状況において日下部氏は革命的ともいえる著しい貢献を岡多様体論に与えた. 主な業績としては以下が挙げられる.
上記3点の業績以外にも岡多様体論に関わる研究成果を多数得ており,最近では,代数的岡多様体論にも研究の幅を広げ,当該分野における指導的立場を確立しつつある. 以上の業績から日下部氏は飛田賞を受賞するに相応しい研究者であると判断した.
日下部佑太 氏 略歴 (2024年10月現在)
受賞のひとことこの度は,第13回飛田賞を頂戴し,誠に光栄に存じます. 私が名古屋大学で過ごした4年間の学部生活は,研究者としての基盤を形成する極めて重要なものとなりました. もともと高校教員を志して入学した私が,研究者の道へと進む決意を固めたのは,数理学科自習室の仲間たちとの出会いが契機でした. 私の研究テーマである岡理論に初めて触れたのは,自習室の仲間に誘われて1年生の後期に出席した大沢健夫先生の講義です. 当時は微積分が得意ではなく,複素解析には興味がなかったのですが,初回の講義から心を強く惹きつけられたことを今でも鮮明に覚えています. その後,大沢先生のご厚意により,卒業研究を含め3年間にわたってご指導を賜りました. 私の最初の論文は,大沢先生とのセミナーで読んだ論文から得た着想を基にして生まれ,これが研究者としての第一歩となりました. また,自習室の仲間たちとは,入学から卒業まで数えきれないほどの自主セミナーを共に行い,そこでの経験が私の基礎力と数学的嗜好を形作ったと感じています. この場をお借りして,名古屋大学でお世話になったすべての方々に,心より感謝申し上げます. 今回の受賞を励みに,今後も一層精進してまいります. ●第12回学生奨励賞名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して,数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第12回受賞者が榎本悠久氏(大阪公立大学学振特別研究員)に決定しました. 授賞理由榎本悠久氏氏は2020年9月に多元数理科学研究科で学位を短縮取得した,ホモロジー代数学の若手研究者である.現在は大阪公立大学で日本学術振興会の研究員として活躍している. 氏の代表的な研究は完全圏および部分圏の分類である.完全圏とは加法圏$E$に完全構造を与えたものであり,榎本氏は「$E$上の完全構造と,$E$の関手圏の特定の条件を満たすSerre部分圏の間に,一対一対応が存在する」ことを示すことにより,完全構造の分類問題に新たな手法を提供した.また,完全圏におけるジョルダン・ヘルダー性の成否がGrothendieckモノイドの自由性に還元できることを証明した. 部分圏に関しては,semibrickの一般化であるmonobrickを導入することにより分類論を進展させた.さらに新たにICE(Image, Cokernel, Extension)閉部分圏を導入し,その体系的な研究を行った.特に「箙の表現の圏ではICE閉部分圏とrigid加群が一対一に対応する」という画期的な結果を証明し,傾理論に大きな貢献をした. 以上の業績から榎本氏は飛田賞を受賞するに相応しい研究者であると判断した. 榎本悠久 氏 略歴 (2023年10月現在)
受賞のひとことこの度,名誉ある飛田賞を授与していただき,心から感謝申し上げます.このような形で研究を評価いただいたこと,とても光栄に思っております. 私の研究テーマは,多元環の表現論です.私がこの分野にふれるきっかけとなったのは,学部4年の卒業研究において,現在東京大学に在籍する指導教員,伊山修先生と出会ったことです.学部4年の卒業研究から修士の少人数セミナー,さらに博士以降の研究打ち合わせに至るまで,先生からは数え切れないほどの指導や助言を頂きました.この機会に,伊山先生へ深く感謝申し上げます. また名古屋大学数理学科には,学部生が自由に使用できる「学部生自習室・数理学科自習室」というスペースがあります.私は学部1年のころからこの場所を第二の家のように活用し,そこで私と同じように数学を志す多くの同期や先輩,後輩と出会い,自主ゼミや,また数学以外でも多くの交流がありました.今もそこで知り合った後輩との共同研究を行っており,私の学問的な道のりはもちろん,人間関係の大事な礎ともなっております.ここでの繋がりを持った多くの方々に,この場を借りて感謝を申し上げます. 最後に,学部から修士・博士まで9年間サポートしていただいた多元数理科学研究科の先生方,また支援室の方々に感謝したいと思います.この賞を励みに今後も勉強と研究を続けていきたいと思います. ●第11回学生奨励賞名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して,数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第11回受賞者がGustavo Jasso氏(Lund大学数理科学センター)に決定しました. 授賞理由Gustavo Jasso 氏は2014年9月に多元数理科学研究科で学位を取得した,多元環と箙の表現論を専門とする若手研究者である.学位取得後はドイツでの博士研究員を経て,現在は Lund 大学(スウェーデン)の数理科学センター講師として国際的に活躍されている. 多元環の表現論分野では,近年,活発な研究が進んでいるが,そのなかで Jasso 氏は $\tau$ 傾加群の退化理論や $\tau$ 傾有限多元環の基礎理論の構築,さらに高次元 Auslander–Reiten 理論に関連する $d$ 完全圏という新しい圏のクラスと $d$ 中山多元環という新しい多元環のクラスを導入するなど著しい研究成果を挙げている.最近では環の表現論とシンプレクティック幾何学や $K$ 理論との間の新たな関連を研究するなど研究の幅も着実に拡げている. 以上の理由から Jasso 氏は飛田賞を受賞するに相応しい研究者であると判断する. Gustavo Jasso 氏 略歴 (2022年10月現在)
受賞のひとことI am honoured by the committee’s decision, which came to me as a great surprise, to award me with the 11th Hida Prize. My time as a doctoral student in Nagoya University remains one of the highlights of my mathematical career. I have very fond memories of the teaching and administrative staff of the Graduate School of Mathematics and of the various seminars and mathematical discussions that I was able partake during my time there. I wish also to express my sincere gratitude to my doctoral supervisor, Prof. Osamu Iyama. His deep mathematical insights continue to have a profound impact in my research and this will undoubtedly continue to be the case in the years to come. It is through his generous teachings and guidance that I was able to become a research mathematician, and I will always be grateful to him for having given me the privilege of being his student. ●第10回学生奨励賞名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して,数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第10回受賞者が松井紘樹氏(徳島大学大学院社会産業理工学研究部)に決定しました. 授賞理由松井紘樹氏は可換環論,その中でも表現論や代数幾何学との境界領域で融合的な研究を行ってきました.可換環論や代数幾何学に現れる三角圏の部分圏の分類理論,特に「テンソル三角幾何学」などについて多くの業績を有し,さらに最近はテンソル構造を考えない「三角幾何学」の構築に向けて重要な貢献を行っています. 三角圏は数学の様々な分野に現れますが,ミラー対称性を介して物理学と密接に結びつくなど,近年活発に研究されています.Balmer 氏はテンソル構造を持つ三角圏である「テンソル三角圏」に対して幾何学を展開する「テンソル三角幾何学」を創設しました.テンソル三角幾何学における主要な道具は,テンソル三角圏のスペクトラムと呼ばれる環付空間です.松井氏は,高橋亮氏との共著論文において,可換ネーター環の右有界導来圏に対するこのスペクトラムについて研究することにより,Hopkins氏による結果(1987年)と Neeman 氏による結果(1992年)を一般化し,また2010年の国際数学者会議で Balmer 氏の提唱した予想に否定的解答を与えました. 2019年に発表した単著論文では,松井氏は特異圏の森田理論における基本的な結果を確立し,可換環論,スキーム論,有限群のモジュラー表現論など広範な分野への応用を与えました.この論文の鍵は,テンソル構造を持たない三角圏に対する台理論を展開しているところにあります.テンソル三角幾何学は非常に強力な理論ですが,テンソル構造を持たない三角圏や,テンソル構造を保たない三角同値の研究には直接応用できないという大きな欠点を有しています.松井氏は,この欠点の改良を目指す中で,一般の三角圏に対するスペクトラムと呼ぶべき位相空間の構成に成功し,最近単著論文として発表しました.フーリエ向井対などへの応用を含むこの論文は,テンソル構造によらない「三角幾何学」の構築に向けた大きな第一歩であり,この論文をランドマークとして「三角幾何学」が大いに発展することが期待されます. 松井氏は様々な問題を解決するとともに,関連分野の今後の発展の基礎となるべき概念を導入し応用しています.松井氏のこのような業績は,飛田賞受賞候補者として大変相応しいものと考えます. 松井紘樹 氏 略歴 (2021年10月現在)
受賞のひとことこの度は第10回飛田賞を頂き誠にありがとうございます.このような形で自分の研究を評価していただき,大変光栄に思います.多元数理科学研究科で学んだ8年間は私の数学の原点であり,そこでのさまざまな出会いが現在の私につながっています.私は学部生の頃には特に研究者を目指していたわけではなかったのですが,先生方の講義や仲間達と行った自主セミナーはそのどれもが刺激的で,私を数学研究の道へと進めていきました.特に,指導教員の高橋亮先生には長年に渡り温かくご指導賜り,数学はもちろんのこと,研究者としての心構えなど多くのことを学びました.現在まで数学の研究を続けて来られたのも高橋先生のおかげです.このような出会いの場を作ってくださった多元数理科学研究科と多元数理科学研究科での生活を支えてくださった先生方,一緒に学んだ仲間達,支援室・事務室の方々にこの場を借りて感謝申し上げます.研究者としてまだまだ未熟者の私ですが,飛田賞受賞者の名に恥じないように今後も研究に邁進してまいります.
●第9回学生奨励賞名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して,数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第9回受賞者が加藤睦也氏(群馬大学理工学基盤部門)に決定しました. 授賞理由加藤睦也氏は,モジュレーション空間とその非線形分散型方程式への応用に関する一連の優れた業績を有している.モジュレーション空間とは,Feichtinger らにより導入された関数空間の一種であり,近年になってその基本的性質や偏微分方程式論における有用性が次々と解明されてきている.加藤氏の研究もこのような状況を背景としたものであり,モジュレーション空間論の有用性を示す重要な貢献として位置づけられる. 例えば,Wang–Hudzik により示されていた非線形シュレディンガー方程式の初期値問題におけるモジュレーション空間での適切性の結果に対し,それをより一般の分散型方程式の場合にまで拡張する結果を与えているが,その最も重要かつ非自明な部分は,一般の分散型方程式の基本解に対するモジュレーション空間における時間減衰評価の部分である.これに関しては Guo-Peng-Wang によるベゾフ空間における先行研究が存在していたが,モジュレーション空間で考えることによりベゾフ空間では取り込むことができない振動型の摂動を持った方程式をも扱うことができることを指摘した点は,モジュレーション空間の有用性に関する新しい知見である. また,非線形分散型方程式の一つである Zakharov–Kuznetsov 方程式に対しては,モジュレーション空間を用いることによりかなり正則性が低いところで適切性が示されることを指摘している.その証明の鍵である基本解に対する時間大域的な最大関数評価は,この解析のために新たに加藤氏によってもたらされたものであり,モジュレーション空間の新しい可能性を示唆する汎用性の高い優れた結果である. さらに,モジュレーション空間やその類似物である $\alpha$-モジュレーション空間,ウィーナ・アマルガム空間などの基本的性質の解明も,加藤氏による顕著な業績として上げることができる.特に $\alpha$-モジュレーション空間とソボレフ空間との包含関係の決定,シュレディンガー時間発展作用素のウィーナ・アマルガム空間での有界性や擬微分作用素の $\alpha$-モジュレーション空間での有界性の確立,モジュレーション空間における非線形作用の閉性の解明などは,いずれも函数空間論における重要な成果である. 加藤睦也氏によるこれらの研究成果は,飛田賞を受賞するにまことに相応しいものである. 加藤睦也 氏 略歴 (2020年10月現在)
受賞のひとことこの度は,飛田賞をいただきまして誠にありがとうございます.とても嬉しく思っているのと同時に,賞と名のつくものとは無縁と思っておりましたので,私自身とても驚いております.そんな私がこのような名誉ある賞をいただけたのは,ひとえに,指導教官である杉本充先生のご指導の賜物です.杉本先生には,在学時から現在に至るまで,数学のことのみならず多くのことを教えていただき,いつも優しく,温かくご指導していただきました.今の私があるのは先生のおかげです.ここに,改めて心より御礼申し上げます.本当にありがとうございます.今回の受賞は,一緒に研究をしてくださり,その都度色々と教えてくださる先生方のおかげでもあります.その先生方へも日頃の感謝も込めて,この場をお借りして御礼申し上げます.また,在学時に方程式セミナーなどでお世話になった先生や仲間たちにも感謝しております. まだまだ分からないことしかない未熟者ですので,至らぬ点も多々あるかと存じますが,今後ともご指導ご鞭撻の程どうぞよろしくお願いいたします.この賞を励みに今後も勉強と研究を続けていきたいと思います.最後に,数学の道へ進むことを理解し支えてくれ,また,遠く離れて数学をすることを受け入れてくれている家族へこの場をお借りして感謝申し上げます. ●第8回学生奨励賞名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して,数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第8回受賞者が高橋良輔氏(京都大学数理解析研究所)に決定しました. 授賞理由高橋良輔氏はこれまで,複素多様体の標準計量およびそれに纏わる力学系,量子化の研究を行ってきました.この分野は Donaldson 氏らの一連の仕事に触発され近年多くの若手研究者が参入し,さらに急速に発展しています.高橋氏は解析的な手法,特に geometric flow と呼ばれるような計量の時間発展方程式に精通しており,その独自の強みを活かしてこのテーマにアプローチし,多くの重要な貢献を挙げてきました. 高橋氏の博士論文では,完全交差や射影空間束といった代表的なクラスの多様体について標準計量の問題を詳細に論じ,特に Kähler–Ricci flow とその自己相似解について基本的な結果を与えています.その後,一般の Fano 多様体においてこの自己相似解を量子化するという問題に取り組み Berman–Witt Nyström の先行する結果を修正し,より自然な定式化を与えるという著しい成果を得ました.また,斎藤俊輔氏との共同研究では,$D$ エネルギー汎関数の量子化を調べ,無限遠での勾配を代数幾何的に与える公式を得ました.これは Fano 多様体の漸近的安定性を記述するために重要な結果です.中でも注目に値するのは,inverse Monge–Ampère flow とよばれる発展方程式の時間大域解の存在に対する高橋氏の貢献です.この方程式は標準的テスト配位を与える方程式と考えられているものです.この方程式の大域解の存在は,標準テスト配位の構成問題の今後の展開の礎となるものです. 高橋氏はその後も國川慶太氏との共同研究において,hyper-Kähler 多様体における平均曲率流の存在定理を得ました.geometric flow においては Kähler–Ricci flow,inverse Monge–Ampère flow そして平均曲率流と,これらの性質や解析に用いられる技術は大きく異なっており,一連の研究成果は幾何解析に対する彼の深い造詣と驚くべきバイタリティを示しています. また,最近は計量の結合(coupled metric)に対し標準計量の概念を一般化した Kähler–Einstein 結合についても複数の論文を執筆し,領域の幅をさらに広げています.これは運動量写像の幾何学や情報幾何学の観点からも自然な一般化のようで,今後の展開が楽しみな分野です. このような実績をふまえて,高橋氏は今後益々精力的に成果を挙げ続けてゆくものと期待され,これまでの業績と合わせては飛田賞受賞候補者として大変相応しいものです. 高橋良輔 氏 略歴 (2019年10月現在)
受賞のひとことこの度は第8回飛田賞を頂きまして誠にありがとうございます.今回,自分の業績が多くの方々に認められたということを今だに信じられず,ただただ感動しているばかりです.このような非常に素晴らしい賞を頂くことができ,大変光栄に思います. 私は当時,多元数理科学研究科に片道3時間かけて電車で通学しておりました.今となってはよくもまあ辛抱強く通ったものだと思います.しかし,電車の移動中というのは案外集中できるもので,大抵は新しい論文を読んだり,頭の中で計算をしたりして有意義に過ごしていました.ひょっとしたら机に向かって勉強した時間よりも長かったのかもしれません. 本研究科には学部時代も含めると合計で8年間通いました.同じ研究科の仲間たちと休日・深夜を問わず合宿や自主セミナーに明け暮れ,数学していたことを今でも鮮明に覚えています.比較的初期の段階から優秀な先輩や同期に恵まれ,絶えず刺激を受けていたことも,私が数学を続けていく上での大きな原動力になったと思います.また,授業面においても,本研究科の先生方の授業はどれも自由でのびのびとしており,私にとっては魅力的なものばかりでした.楽しく数学の勉強に取り組むことができたのも,ひとえに先生方のご指導の賜物と思っております.現在は逆に自分が教える立場にまわる機会も増えてきましたが,その際には学生時代に受けた講義がとても参考になっています. 最後になりますが,本研究科の方々や卒業生の皆様,6年間に渡ってセミナー等でご指導頂いた小林先生,そして日常生活を支えてくれた家族に対して,この場を借りて心より感謝申し上げます.研究者としてまだまだ至らぬ点も多々あるかと存じますが,この賞の名に恥じぬよう,今後もより一層の努力をしていきたいと思います. ●第7回学生奨励賞名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して,数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第7回受賞者が鈴木正俊氏(東京工業大学理学院数学系)に決定しました. 授賞理由Riemann ゼータ関数に対する Riemann 予想は整数論の予想の中でもとりわけ困難な問題として知られているものですが,鈴木正俊氏は J. C. Lagarias 氏との共著論文の中で,ある種の大域的なゼータ型関数が Riemann 予想の類似を満たすという,おそらく誰も予想していなかった驚くべき結果を証明しました.これはそれぞれ独立に得られた結果ですが,同じ時期に同じ結果を得ていたので最終的には二人の共著となりました.鈴木氏は,その後 L. Weng 氏によって導入された Weng のゼータ関数が種々の場合に Riemann 予想の類似を満たすことを証明しています.彼の手法は,鈴木氏以前に示されていた,関数体の合同ゼータ関数や Selberg ゼータ関数の場合の Riemann 予想の証明とは全く異なるものです. I. Fesenko,G. Ricotta氏との共著論文ではスキーム上のHasseゼータ関数について考察し,「平均周期的」な関数とゼータ関数との新しい関連を確立しました.さらに解析数論的な,解析的計算を主体として,ゼータ関数の零点の「差」の挙動に,一般の値分布を記述するいわゆるM関数が現れることを初めて発見しました.これらは,どれも画期的な内容を含んでいます.最近の鈴木氏の主要な研究方向の一つは,ゼータ関数にHamiltonianを対応させ,それをできるだけ具体的に表示することでRiemann予想にアプローチする,というもので,de Brangesの関数空間の理論やSchrödinger方程式論などを背景とする壮大な試みであり,これも大変魅力的な方向です. 鈴木氏の研究は,もちろん現時点では本来のRiemann予想の証明には届いていませんが,にもかかわらず,Riemann予想の類似の成立する世界を拡大しより豊かにしたといってよいでしょう.その後も,次々と新しい視点からの研究を進めていく独創性と数学的力量は誠に素晴らしいもので,こうした鈴木氏の業績は飛田賞受賞候補者として大変相応しいものです. 鈴木正俊 氏 略歴 (2018年10月現在)
受賞のひとことこの度は,飛田武幸先生という偉大な先輩のお名前を冠した,非常に名誉な賞を頂き,大変光栄に思います.残念ながら,私は飛田先生と直接の面識はありませんでしたが,実は愛知県岡崎市という同じ郷土の出身というご縁がありまして,その事をとても誇らしく思っております. 私が多元数理科学研究科に在籍していた頃は,研究者を目指してはいたものの,その実現に向けて多くの悩みを抱えながらあがいていました.そのような私が研究者として歩みはじめるきっかけをつかめたのは,指導教官であった松本耕二先生のご指導はもちろんのこと,当時の多元数理科学研究科での講義,セミナー,研究集会において知り合った多くの先生方のご指導や,学生の仲間同士の議論を通じて,研究するとはどういう事かを肌で感じることができたからだと思います.そのような環境の中で学び,研究できたことは,私にとってとても幸運なことでした.また,学位を取得して就職した後も,自身の研究を進めるうえで,多元数理研究科には何度もお世話になりました. このような長年にわたるご指導,ご支援に対し深く感謝すると共に,指導教員であった松本耕二先生をはじめ,私が在学当時から多元数理科学研究科におられた諸先生方,教育研究支援室,事務室,図書室の職員のみなさまに,この場を借りて改めて御礼を申し上げます. 最後になりますが,一人の後輩として飛田先生の御冥福を心からお祈り申し上げると共に,先生のお名前を汚さぬよう,この度の栄誉を糧に,今後も研究・教育に全力を尽くす所存です. ●第6回学生奨励賞名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して,数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第6回受賞者が川上 裕氏(金沢大学理工研究域数物科学系)に決定しました. 授賞理由曲面の古典微分幾何学は微分幾何発祥の地とも言える古典的な題材でありながら,現在でも多くの研究者を惹きつける,尽きることのない研究分野です.川上裕氏はこの分野において,曲面論にNevanlinna理論を導入して新機軸を開拓するなど,独創性に富んだ多くの業績を挙げており,現在最も活動的なこの分野の若手研究者の一人です. 川上氏の最初の大きな発見は,宮岡・佐藤曲面と呼ばれる代数的極小曲面の中に,Gauss写像の全分岐指数が2.5の例があるという,複素解析の専門家を驚かせた注目すべき指摘でした.この発見は川上氏の学位論文の一部となっております.続いて川上氏は3次元空間内の完備極小曲面のGauss写像の最良の除外値数を与えた藤本坦孝氏の研究を深く分析し,除外値数の上限の幾何学的な意味を明らかにしました.そして4次元Euclid空間内の完備極小曲面のGauss写像の除外値数の評価に関する結果の統一的解釈を与え,種々の応用を与えています.さらに分岐定理や一意性定理といったGauss写像の値分布論的な性質の幾何学的背景を明らかにし,Ahlforsの5島定理やBernshtein型定理の別証明を提示しました.またこうした活発な研究活動が注目されて,日本数学会からの推薦で,雑誌「数学」に曲面のGauss写像の値分布に関する論説を執筆しています. こうした川上氏の業績は曲面論に新風をもたらす意義深いものであり,飛田賞受賞者として誠に相応しい研究者です. 川上 裕 氏 略歴 (2017年10月現在)
受賞のひとことこの度は,第6回名古屋大学数理科学学生奨励賞(飛田賞)を頂きまして有難うございます.誠に身に余る光栄でございます. 私は他大学の教育学部出身で,多元数理科学研究科に入学した際は大学院を修了できるのか不安でしたが,研究科の教育システムを利用したり,同期の仲間と自主セミナーを行ったりすることで,専門分野の基礎を身に付け,幅広い分野の知見を得ることができ,研究が評価され学位を取得することができました.私の研究テーマである「ガウス写像の値分布論」は幾何学と函数論を跨ぐもので,多元数理科学研究科で培った学力のおかげで,研究を更に発展させることができたと思います. 最後になりますが,ご指導をいただいた指導教員の小林亮一先生,副指導教員の納谷信先生,多元数理科学研究科教員の皆様,陰に陽に私を支えていただいた小崎和子さんをはじめとする教育研究支援室・事務室の皆様,そして共に学んだ多元数理科学研究科同期および先輩,後輩の皆様にこの場をお借りして深く感謝を申し上げます. ●第5回学生奨励賞名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して,数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第5回受賞者が神田遼氏(大阪大学大学院理学研究科)に決定しました. 授賞理由Grothendieck圏の研究に関して最も中心的なテーマの一つに,部分圏の分類問題がある.神田氏は,各Grothendieck圏に対しそれの「原子スペクトル(atom spectrum)」という位相空間を定義し,局所ネーター的なGrothendieck圏の局所化部分圏と原子スペクトルの開集合の間に一対一対応を構成した.これは先人の定理をはるかに拡張するものであり,(非可換)ネーター環の加群圏の場合でさえまったく新しい結果である. Grothendieck圏の原子は可換環の素イデアルの類似物であるが,神田氏はこの点に着目し,可換環論における素イデアルのBass数や剰余体の概念を一般のGrothendieck圏の原子に対して拡張した.さらにその応用として,Grothendieck圏の入射包絡不変部分圏と原子スペクトルの部分集合の間にある一対一対応を見出した.これらの結果を鑑みると,Grothendieck圏の原子スペクトルとして実現される位相空間がどのようなものか調べることが重要になる. 一般に原子スペクトルは $T_{0}$ 空間であるため,そこには閉包の包含関係を用いて自然に半順序集合の構造が入る.神田氏は,任意の半順序集合が,あるGrothendieck圏の原子スペクトルとして実現できることを証明した.色付き箙という箙を導入し,それに付随するGrothendieck圏を構成するという斬新な手法である.さらに,局所ネーター的なスキーム $X$ 上の準連接層のなすGrothendieck圏 $\operatorname{Qcoh} X$ に対して上述の結果を深化・拡張した.すなわち,$\operatorname{Qcoh} X$ の閉部分圏と $X$ の閉部分スキームの間,および $\operatorname{Qcoh} X$ の前局所化部分圏と構造層 $OX$ の局所フィルターの間に一対一対応を構成したのである.これは,閉部分スキームという幾何学的な対象と閉部分圏という圏論的な対象が等価であることを示すものであり,$X$ がアフィンスキームの場合の先人の結果を含む. 以上の神田氏の研究業績は,環論・表現論双方に意義深い貢献をもたらす重要な成果であり,飛田賞受賞者として誠に相応しい. 神田 遼 氏 略歴 (2016年10月現在)
受賞のひとことこの度は第5回飛田賞を受賞させて頂けることを大変光栄に思います.この多元数理科学研究科は紛れもなく私の数学の出発点であり,また研究者として成長するための場でもありました.国内外の研究者を迎えて開催される環論・表現論セミナーでは,いつも最先端の話題が提供されて活発に議論が行われており,その中で私は自分が飛び込もうとしている世界がいかに広く,豊かで,そして自由な発想に満ちているのかを実感することができました.特に日本に長期滞在する外国人研究者と継続的に交流できたことは,私の価値観を大きく変える貴重な経験であったと感じています. 指導教員であった伊山修先生には長年に渡り温かくご指導頂いたこと,そしてこのような多様性に満ちた環境を整えてくださったことに心より御礼申し上げます.また,高橋亮先生には私の研究のために惜しみない助言をくださったことに感謝致します.今回の受賞を励みにして,より一層研究に邁進して参ります. ●第4回学生奨励賞名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して,数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第4回受賞者が木村杏子氏(静岡大学)に決定しました. 授賞理由可換環論と組合せ論の境界領域で,組合せ論的対象から派生する可換環の環論的性質や不変量の研究において,独特の新しい感性で新局面を切り開きました.とくに,単項式イデアルの算術階数の計算は,一般に計算困難な算術階数について豊富な計算例を与えたもので,可換環論の立場からも高く評価されています.他にも,有限グラフのエッジイデアルの環論的性質を精力的に調べて,正則性の評価を始めとして,優れた成果を挙げました. 院生時代の問題設定を継承発展させて次々と成果を挙げるとともに,研究対象や問題意識を広げつつあり,今後の更なる活躍が期待されます. 木村杏子 氏 略歴 (2015年10月現在)
受賞のひとことこのたびは飛田賞を受賞することができ,大変うれしく光栄に思います.まだまだ未熟者ですが,研究者として独り立ちできたのも,何を研究したいのか具体性のなかった私を丁寧に指導してくださいました吉田健一先生のおかげです.ここに,改めて感謝申し上げます. 当時の多元数理科学研究科のシステムの関係もあり,私は学部4年,修士1年,修士2年とそれぞれ異なる分野を学びました.なかなか自分の専門分野を決めることができなかった私にとって,いろんな分野にチャレンジできたことは幸運でありました.また,様々なセミナー等が開催されていたため,大学院生の頃にはいろんな分野に触れることができました.そのような環境を作ってくださいました先生方,また,様々な方面からサポートしてくださいました支援室の皆様,そして一緒に勉強した仲間たちに感謝申し上げます. 公私を含めた様々な環境の変化に伴い,研究時間を確保できるよう少しずつ生活を変えてきました.私事ですが,今回はその大きな節目に差し掛かっているように思います.そのような折での受賞となりました.この賞を糧に,より一層研究に精進していきたいと思います. ●第3回学生奨励賞名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して,数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第3回受賞者が野原雄一氏(香川大学)に決定しました. 授賞式は2014年10月18日,名古屋大学ホームカミングデイの折りに多元数理科学研究科において執り行われ,数理科学同窓会会長より記念の楯と副賞が贈呈されました. 授賞理由シンプレクティック幾何における「ミラー対称性問題」「幾何学的量子化問題」をテーマに,優れた業績をあげている.代表作は
である. 野原雄一 氏 略歴 (2014年10月現在)
受賞のひとことこの度は素晴らしい賞をいただき,大変光栄に思います.大学院生の頃は趣味のようにいろいろなセミナーや集中講義に参加して楽しんでいただけのような気がしますが,そのときに勉強したことが予想より多く今の研究につながっており,最先端の数学に触れられる機会が多い恵まれた環境だったのだと改めて感じております. 様々な形で勉強や研究をサポートしてくださった先生方,支援室の皆様,そして一緒に勉強した仲間に心より感謝申し上げます. ●第2回学生奨励賞名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して,数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第2回受賞者が見正秀彦氏(東京電機大学)に決定しました. 授賞式は2013年10月19日,名古屋大学ホームカミングデイの折りに多元数理科学研究科において執り行われ,数理科学同窓会会長より記念の楯と副賞が贈呈されました. 授賞理由S. M. Voronin は1975年に,次のようなRiemannゼータ関数 $\zeta(s)$ のuniversalityを証明した.正確さを欠くが,Voroninの定理の主旨を一言で述べれば次のようになる. $0 \lt v \lt 1/2$ をみたす実数$v$に対して,$f(s)$ を閉円板 $D_{v} = \{s \in \mathbb{C}; |s| \leq v\}$ 上の $0$ を取らない連続関数で,さらに $D$ の内部で正則とする.この時,正の実数 $t$ を選んで,$D_{v}$ 上の与えられた関数 $f(s)$ を関数 $\zeta(s+3/4+ti)$ で近似することができる. 見正氏は一貫して,universalityの研究に取り組み,次々と成果をあげている.その成果の一つは,このVoroninの定理の類似をDirichlet級数 $L(s, \chi)$ をはじめ様々な $L$-関数について証明するのに成功したことにある.Universalityの数論的意味については,Riemann仮説との関わりはどうなのかという自然な疑問が生じる.これに関しては,B. Bagchiが1981年に,Riemannゼータ関数については,Riemann仮説をuniversalityの言葉によって表現できることを示した.見正氏はこの結果もDirichlet級数に一般化した.また,類数の分布とuniversalityとの関係にも成果を上げ,universalityの数論的意義を示した.さらには,Riemannゼータ関数と保型 $L$-関数による同時近似を論じ,mixed universality 理論の創始者として高く評価されている. 見正氏のこれらの業績は顕著なものであり,学会で高く評価されており,飛田賞にふさわしいものであると考える. 見正秀彦 氏 略歴 (2013年10月現在)
受賞の一言このたび,第2回名古屋大学数理科学学生奨励賞を賜ることが出来,誠に光栄に思います.大変嬉しく思うと同時に,身の引き締まる思いであります.この賞の受賞者に選ばれることは,多元数理科学研究科出身者とってはこの上ない名誉であること,また,これまでの研究が評価されただけではなく,これからの更なる研究の進展が期待されていることを肝に銘じ,今後はより一層研究に力を注ぐ所存でございます. まだまだ未熟ではあるものの,現在,数学者として独り立ち出来たのは,多元数理科学研究科在学時に多くの出会いに恵まれたからであると常日頃から感じております.まず何をおきましても,直接ご指導をいただいた谷川好男先生,松本耕二先生のお二人の先生に感謝を申し上げます.このお二人との出会いがなければ,私が解析的整数論に進むことも,また研究テーマである「ゼータ関数の普遍性」と出会うこともありませんでした.ここで改めて先生方に敬意を表します.本研究科では多くの集中講義,セミナーが行われてきましたが,そういった機会に出会った先生方との共同研究が現在も続いています.また,本研究科の先生方の講義,交流から得た刺激は,直接研究と関わることはなくとも,教育,学生指導に携わる立場となった今では,とても参考になっています.多元数理科学研究科で学び,研究できたことは私にとって大変幸運であったと感じております. 最後になりますが,多元数理科学研究科の諸先生方,解析的整数論研究室の先輩,後輩をはじめとする当時学生であった皆様,現在学生の皆様,そして研究生活,学生生活をご支援いただいた事務室,図書館職員のみなさまにこの場を借りて深く御礼を申し上げます.誠にありがとうございました. ●第1回学生奨励賞名古屋大学大学院多元数理科学研究科出身の若い研究者に対して,数理科学同窓会から贈られる名古屋大学数理科学学生奨励賞「飛田賞」の第1回受賞者が和田堅太郎氏(信州大学)に決定しました. 授賞式は2012年10月20日,名古屋大学ホームカミングデイの折りに多元数理科学研究科において執り行われ,数理科学同窓会会長より記念の楯と副賞が贈呈されました. 授賞理由和田氏はワイル群の $q$ 類似として定義されるHecke環の表現論の研究において重要な貢献をしております.それを裏付けるのが,既に出版されている7篇の論文と,その内容の水準の高さです. 和田氏の主要な研究テーマは,古典型Weyl群の拡張である複素鏡映群に付随するArki–Koike algebra $H_{n,r}$ 及び $q$-Schur代数 $S_{n,r}$ のモジュラー表現です.一般に「表現論」では既約な表現の決定と,可約な表現の既約表現への分解が主要な問題となりますが,$H_{n,r}$ については量子群の結晶基底と関連付けることによって有木氏により既約表現への分解についての問題が解決されております.和田氏が目指しているのは未解決な $S_{n,r}$ の場合であり,修士論文の時点からこの問題への重要な貢献を行っております.中でも量子群 $U_{q(g)}$ の $\pm$ 分解 $U_{q^{\pm}}$ を用いた $S_{n,r}$ の構成法は,$S_{n,r}$ を詳しく調べる方法を提供したばかりでなく,新しい代数構造を創造した点で大いに評価されるものです.和田氏の結果はこの分野で必須なものであり,この結果を踏まえて本人によってもあるいは他の研究者によっても今後次々と先端の成果が生まれることが期待されます.また,和田氏は広く代数学の分野においても将来を嘱望される研究者です. 従って,「これまでの業績」および「独創性と発展性」の双方の観点から,和田氏の研究は高く評価されるものと考えます. 和田堅太郎 氏 略歴 (2012年10月現在)
受賞のひとこと名古屋大学数理科学学生奨励賞(飛田賞)が創設され,その第1回目に受賞することが出来たことを大変嬉しく,また光栄に思います.まだまだ駆け出しの研究者で,自分の仕事をこなすことで精一杯の日々を送っている中で,このような形で自分の専門分野とは限らない方々にも私の仕事を評価して頂けたことは,大変励みとなり,今後もますますがんばっていこうと改めて思っています. 私が大学院に進学した頃に,ちょうど多元数理科学研究科では大学院教育の改革が進んでおり,少しでも学びやすく,研究しやすい環境を作ろうと,先生方がいろいろな取り組みをされていました.そのような環境の中で,大学院生として多元数理科学研究科で学び,研究できたことは大変幸運であったと感じています. 最後に,指導教員であった庄司先生をはじめ諸先生方,教育研究支援室の方々,多くの友人等に支えられて今の自分があることに,この場をかりて感謝致します. 関連記事 |
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