微積分2022授業日誌

今回はウィルス対応3年目ということで、原則として教室での対面授業を4月13日(水)から執り行います。
各自、講義ノートをダウンロード・印刷の上、 シラバスに沿って学習していきます。 週ごとの概要を授業前に提示するので、予習に役立ててください。
質問等はメールで(メールアドレスはシラバスに書いてあります)、 回答はここ(授業日誌)に載せます。
宿題の扱いは以下の通りとします。

  1. 問題の解答レポートを割当て日以降に提出、締切はその週の金曜13:00
  2. 問題の番号ごとに解答を pdf ファイル(ファイル名は学生番号-宿題割当月日)として作成し NUCT にて登録(upload)。
    ファイル名の例:学生番号が0201930421で4月27日の宿題であれば、0201930421-4-27.pdf
  3. 提出されたレポートは、TA が点検の上、必要に応じてコメントを入れたものを、 解答例つきで次回授業前日の17:00までに提供。
  4. レポート提出の有無は成績には一切関係しない。
宿題の提出ファイルについて補足しておきます。
写真経由で作成する際は、ファイルサイズが大きくならないように解像度を調整して下さい。
また pdf 形式のファイル指定は、コメントを追記しやすくするためです。
画像データを pdf に変換する方法ですが、そういったアプリがいろいろあります。
携帯端末をスキャナー代わりにできるアプリも。
印刷コマンドから出力先として pdf ファイルを選ぶという方法もあります(OS に依存)。
具体的な方法はここ を見てください。

学期途中の試験も対面で実施の予定ですがオンラインになるかも知れません。いずれの場合もシラバス記載の日に概ね45分で行います。

授業日誌は毎週更新していきます。古いのが表示されるようでしたら、再読込をしてみて下さい。

参考までに過去の Q&A を再掲しておきます。

Q:進度予定表の項目と講義ノート(?)の項目がかなり異なると思うのですが内容は同じなのでしょうか。 また、講義ノートの1項目につき1つ分の講義という認識でよろしいでしょうか。
A: シラバスの項目に挙げてあるのは、講義ノートの内容の一部です。別の言い方をすると、 講義ノートは、授業内容+追加の内容、ということになります。

Q:1.微分積分学の講義で音声講義はしませんか。 2.出席点数はどう付けますか。あと、科目の全体的な評価はどうなりますか。
A: 1.動画・音声を配信する予定はありません。授業日誌の中で紹介することはあるかも知れませんが。
2. 出席点というのはありません。成績の評価は、シラバスにある通り試験の成績100%でほぼ線型につけます。 過去の授業日誌をご覧いただくと、大体の成績分布がわかります。

Q:講義ノートの中に問がありますが、問の解答はありますか。
A:過去の授業日誌からの引用です。
予想されたことではありますが、問題の答え(それもできるだけ詳しいもの)を欲しいという声が複数ありました。
これについては、授業の最初でも説明したように、苦しくとも自らの手で正否を確認する、 といった意識がとても大事で、 できるだけ早くそういった状態になっていただきたい、という意図によるものです。
大学卒業後、皆さんに求められるのはそういう部分だと思うからです。 (答えが、それも詳細なものがわかっている案件など処置する必要はない。)
ただ、問題によっては、あるいは予備知識・経験の多寡によっては、困難を感じることもあるでしょう。 その場合は、できるだけ不明点を具体的に自覚した上で、オフィスアワーの時間なりに質問されますよう。
なお、参考書として挙げた演習書は、授業項目に近い内容になっているはずです。

国を守る最大の武器は、口うるさい国民の存在であるか。
口うるさいことはわがままを意味しない、おかしいことはおかしいと口に出す理性の発露なきことのおぞましさ。
同じ石に何度でも躓いて、しかもそれを自覚しない、ということであっては。


微分の復習

汗ばむ陽気に藤の花。

今日はテキストの1章ですが、その前に ベクトルあれこれ の最初にある「数と量」の解説を見ていただきます。これは誰でも知っているようで、意外にわかっていないことだったりします。
指数関数 $e^x$ で、$x$ に単位つきの量は代入できない(定義できない)、ということを自覚してましたか?
その上で、1章は概ね高校の復習ですが、$o(h)$ 方式の微分というのは、新しいことと思います。
微分を商の極限ではなく、一次近似式と見る際に重宝する表現形式です。
慣れると合成関数の微分とか積の微分の公式が直感的に理解できるようになりますが、 ここではそういう記述の仕方もある、といった程度の認識で結構です。

ついでながら、導関数を表わす記号を dash と呼ぶのは、ある時期のイギリスでの習慣(業界方言のようなもの?)がいつのころか日本に伝わり広まったようで、 世界の大勢は prime と呼びます。
dash は短い横棒を表します。こういう日本独特の習慣は他にもあって、$\not=$ の斜線の向きとか。

基本的な関数として、べき関数、三角関数、指数関数、対数関数の微分を思い起こします。 その中で、弧度法 (radian) と $e = 2.71828\cdots$ という特別な数が現れる理由を確認します。

微分の計算は、これらに積と合成の微分を組み合わせて計算します。 例えば、$(a^x)' = (e^{x\log a})' = (\log a) e^{x\log a} = a^x\log a$ のように。
今日の内容としては、例1.3の合成関数の微分計算が大事です。必ず確かめておきましょう。
最後に触れた集合と写像については本格的な本もありますが、取り敢えず 集合入門 程度でも役に立つはずです。機会を見つけて(例えば5月の連休のときとか)読んでみてください。

来週から宿題の提出があります。ご注意下さい。

なお、3回の定時試験は、教室でできない場合、日時指定のオンライン試験として実施、宿題と同様の提出方法を予定しております。

Q: 微分積分学の教科書はいずれのものを購入すればいいのでしょうか。
A: 指定の教科書はありません。
参考書ですが、実物を見て、気に入ったものがあれば購入し利用するのがよいでしょう。
シラバスに挙げておいたものはあくまでも例示なので、それ以外からでも構いません。
必ずしも出版されているものである必要はなく、ネットで公開されている講義ノートを利用する手もあります。
過去の授業日誌で紹介したものにはリンクの切れたのも多いのですが、 浦田先生はお薦めです。

関数の増大度

つつじも盛りに穏やかな晴れ間のひとときも、身動きの不自由さよ。 破滅と隣り合わせの豊かさであったか、相変わらず周りを気にしながら。

今日は2章、関数の増大度を学習していきます。高校で既に経験済みであれば良いのですが、 初めての人もこれを機会に認識しておきます。(大部分の人には既知だったようです。)
なお、自分はロピタルを知っているから平気、とは思わないことです。
ここで身につけていただきたいのは、増大度のスピード感覚で、多項式、指数関数、対数関数の増え方の違いです。
機械的・形式的に計算できるだけでは不十分です。
典型的な使い方が、(i)極限計算への応用と(ii)関数のグラフの境界点(無限遠方も含む)での様子ということになります。
一通り読み込んだら、宿題をどうぞ。

宿題の提出方法については、上の方をご覧ください。 試験でも同じ方式を採用する可能性があります。
いざというときに慌てないで済むように pdf 化とファイルの upload の練習もしておいて下さい。

$y=e^x$ のグラフと $y=x^a$ のグラフが交点を持つかどうかでは、意見がわかれました。そういったときは、実地に調べるに限ります。 議論するよりも。

この回の 授業動画(streaming)です。 それなりの通信量 (270MB?) になるのでご注意ください。

逆三角関数

虫が元気に雨のち晴れ、荒天の海にも。

今日は逆三角関数の導入とその微分、積分による言い換えまでします。
三角関数は周期関数であるため、定義域を制限してその逆関数を考えます。
逆三角関数を表わす記号に arc がつくのは、円弧の長さ(正確には弧度法による角の大きさ)を表わすことに由来します。
アーク・サイン、アーク・タンジェントのように言います。
$\sin$, $\tan$ の典型的な角での値を列挙し、それを逆に対応させることで、$\arcsin$, $\arctan$ の値を求める練習をします。
また、$y = \arcsin x$, $y = \arctan x$ のグラフも描いて見ます。

次に、逆関数の微分を復習し、$\arcsin x$ と $\arctan x$ の微分を求めます。
せっかく微分の公式を導いたので、それを使った積分計算まで練習します。
こちらは、テキストの例4.9にあります。$\arcsin$ を使って計算する例は自分で作ってみます。

連休明けの次回は、まとめと1回めの試験(45分程度)です。先週と今週のところから2題出します。
逆三角関数の微分を積分計算に利用するところも含みます。ご注意ください。
例と宿題を中心に復習します。以前の授業日誌に過去問もあります。

前回の宿題の補足をしておきます。ここでの $x$ は定数で、変化させるのは $n$ の方です。
ということで、$|x| = e^{-b}$ ($b>0$) と表し、 \[ |n^ax^n| = \frac{n^a}{e^{bn}} \] と書き直せば、その極限は $t^a$ と $e^{bt}$ ($t \to \infty$) のスピード比較に帰着します。

宿題の提出は、文章で説明するといった訓練も兼ねています。これが実は最も大事だったりします。
ということで、解けたからいいや、あるいは分からなかったので出さない、ということではなく、 どう考えてどこまでたどり着いたかが、第三者に伝わるようにまとめ提出します。
なお、締切と提出方法 (pdf ファイル)は守っていただきます。 成績に反映しないとは言っても、だらだらと人の時間を浪費させることは避けます。
人の厚意を受けられるということもあり得ますが、いつもいつもそれを期待してはいけません。

今日の動画その1(39分)今日の動画その2(33分)です。

試験1

気温は穏やかなれど、季節のうつろいに日の見え隠れ、桑の実もそぞろ気がかりに。

今日は、過去2回の内容を軽く復習したあとで1回目の試験でした。

[試験の講評]

概ねできてたように思います。
$\fbox{1}$ では、定義域の端での様子に目が行かない人が少々。
$\fbox{2}$ (i) では、正弦関数の定義域を制限することがわかっていない者がちらほら。(ii) では定積分の問題である点を無視するものが少数ながら。
説明が大きく不足のものは減点。
いろいろと心当たりがあるかたは復習その他、ご対処ください。
最後に点数について一言。1問2点(2問で4点)が満点ですが、 とりわけ良い答案には、3点つけることもあります。 成績欄には合計点が表示されますが、問題ごとの点数はコメント欄で確認できるはずです。 合わない等がありましたなら、ご連絡下さい。

積分の意味と計算

さわやかに晴れ上がり、桑の実も色づき。季語に縛られず、自由に。

今日は定積分の正しい意味を理解します。標語的に短冊和の極限と言っておきます。
高校でも区分求積法ということで経験があろうかと思いますが、それをもう少し一般化したものです。
これから、様々な積分の性質も導くことができます。そういったことを一通り確認した上で、 微小量の和の極限としての積分の様々な実例に触れていただきます。
物理とかでの実際の応用では、符号付き面積を越えた量のやりくりが普通のことでもあり。

定理4.4(定積分の存在)の周辺は、気になる人が後で読めばよろしいので、スキップします。(次回、説明します。)
それ以外でも既知のところはスキップしていいのですが、それはその人の修得状況によりけり。 判断に困ったらメールにてご相談ください。

次に具体的な積分計算で必要となる積分の技法である「置換積分」と「部分積分」を復習していただきます。
ここのところは、個人的には、高校・大学を通じて誤った指導(特に部分積分が)が蔓延しているように感じているのですが、 それが少しでも改善されると幸い。
元々は高校生向けに書いたものですが、 積分の技法も参考になるでしょうか。

9ページから18ページまで、とにかく量が多いので(復習もまた多し)、今日の宿題の問題を目標に、取捨選択してください。
この何を捨てて何を拾うかの個人的判断の適否が、今後とても大きな意味を持ってきます。
そのための訓練の一歩も兼ねているとお考えください。

今日の動画その1(48分) (最初の24分は音が悪いです)と 今日の動画その2(30分)です。

微積分の基本定理

麦の穂も青みがとれて、水のあるなし。

先週の続きというか、やり残した理論的なところを学びます。
積和極限(短冊近似)としての定積分というものは、古代からあった求積法の仕上げとも言える内容で申し分ないように見えるのですが、 その実体を仔細に検討していくといろいろな綾とともに欠点もちらほら。

まずは、こうして定義した定積分の性質を確認します。
(0) 定数関数の積分値(規格条件)
(i) 線型性
(ii) 順序保存(正値性)
(iii) 積分域についての加法性(分点等式) です。
それと、積分の基本不等式 \[ \left| \int_a^b f(x)\, dx \right| \leq \int_a^b |f(x)|\, dx \] も併せてどうぞ。これは、$f$ が積分可能であれば $|f|$ も積分可能である(これには積分の定義の言い換えを使う)、という内容を含みます。

次に連続関数が積分可能であるという定理を確認します。
実は、講義ノートで与えた「証明」には穴があるので、 疑いの目をもって見てください。
それで、とくに不具合が見えなかったら、気にせず先に進みます。
証明のgapに気がついた人は、それはそれはそれで結構なことなので、心にとめてやはり先に進みますが、 夏休みとかのまとまった時間が取れるときに、 これでも読んで穴を塞ぐ作業をしておきます。
実は、積分の性質 (0), (i), (ii), (iii) だけから、連続関数の定積分の積和極限表示とその存在が出てきます。

不連続な関数の積分は、いつでもできるものではなく、できてもややこしいことがいろいろ起こるのですが、
実用的に困らないであろう「不連続な点は有限個でよいものに限る」場合も連続関数の場合と大差なく積分可能であることが示されます。

定積分に関連して、不定積分を導入し、原始関数との違いを強調しておきます。
この原始という言い方ですが、原子とか原資あるいは幻視などと音で区別がつかないので、避けたい気分ではあります。
(音だけで区別がつかない言葉が多用される言語として、明治以降とくに戦後の日本語はものすごく特異というか奇異であるような。)
もっとも不定積分という言い方も不逞積分とか不貞積分のようにも聞こえるので似たりよったりではありますが。

ともかく、連続関数の不定積分の大事な性質として、 微分積分の定理と積分微分の定理(ここでは式の順序に合せておきます)を確認します。 \[ \frac{d}{dx} \int_a^x f(t)\, dt = f(x), \quad \int_a^b F^\prime(x)\, dx = F(b) - F(a). \]

今週は宿題がありませんが、問27、問28、問29をお好みで。

本日の動画その1(40分)動画その2(30分)です。(どちらもビデオの質がいまいち。)

有理関数の積分

はや6月、桶狭間である。遠雷の如き港の花火、気温の上り下りも梅雨への一里塚。

今日は、有理関数の不定積分の周辺をあれこれ。 具体的な練習は、既に答えが分かっている場合でするのが良いような。
計算のやりっぱなしは大変危険なこと、答えが出たからと言って安心せずにいろいろな方法で確認するという習慣こそが。

来週は、はやくも2回目の試験です。授業で取り上げた例、宿題の復習を。

有理関数の積分はその仕組みが完全に分かっているのですが、 理屈の部分よりは具体的な手続きをいくつか経験すればそれで結構です。
そういう具体的なものを整理・統合したものが「理論」なので。 具体的な問題にまず挑戦し、詰まってから「理論」を見るというのが実践的かと。
最後に、有理曲線が関係した積分をこれも具体例でやってみます。
積分の計算では、しばしば技巧的な変数変換が登場しますが、 それには諸々の背景があるもので、そういったからくりの一端をここでは学びます。
宿題8は、本文の該当箇所を読んでから解いてみてください。 例4.8の前にある式が出てきます。そういう仕組みです。

本日の動画その1(52分)動画その2(20分)です。

試験2

梅雨入前の鈴鹿日和、麦の秋に小さき西瓜。

今日は2回めの試験

試験後の情報とかは後ほど、ここに書きます。

[試験の講評] やさしかったはずですが、それなりに点差が。 説明不足の答案も目につきました。
$\fbox{1}$ 変数変換と部分積分の基本問題でしたが、理解不足の答案がちらほら。
$\fbox{2}$ これは宿題の問題かつ復習コーナーでも「次元の視点」を取り上げたのですが、出来はイマイチでした。 はっきりいって、勉強不足の人が目立ちました。 宿題を疎かにしていないでしょうか。

試験の点数を開示しましたので、ご確認ください。

一次・二次の近似式

梅雨入り、紫陽花も色あざやなに、桶狭間。

今まで、高校の復習のようなことをしてきましたが、今日からが本番というか、最初の山です。
テキストだと「関数の状態と近似式」の項です。
まずは、一次近似式を接線と関連付けて幾何学的に理解し、ついで近似計算と極限計算への応用をしてみます。
次に、一次近似式の誤差項の積分表示に進みます。部分積分の応用にもなっています。
この積分表示の近似から2次の近似式が導かれます。
2次近似式についても近似計算と極限計算への応用をやってみます。
そのあとにある凸関数の不等式と変曲点は、軽く眺める程度でスキップしましょう。

Q: 例5.1~3の近似式をf(x)≒f(x)+f’(a)(x-a)を使って求める方法がわかりません。
A: 5.1, 5.3 であれば、$a=0$ として、上の近似式を書き下します。5.2 は $a=r$ で $\Delta r = x-r$ の意味です。 どの文字がどの量に対応するかは、状況に応じて適宜読み替えます。

Q: 講義ノートの23ページ中ごろの ∫ b af′(t)dt−f′(a)(b−a) =∫ b af′′(t)(b−t)dt の部分に関して 上式の上の式を積分したのなら−f′(a)(b−a)ではなく+f′(a)(b−a)になると思うのですがどうでしょうか
A: $[f'(t)(b-t)]_{t=a}^{t=b}$ なので $-f'(a)(b-a)$ です。

本日の動画その1(43分)動画その2(32分)です。

テイラー近似式

前線は南に、水分多めの一日、麦のあとに刈谷の西瓜。

前回の2次の近似式を受けて、$n$ 次の近似式を学習します。
テキストだと、p.27からp.34にかけて。

量が多いのですが、そのうち、定理6.2、例6.4、オーダー記号、定理6.8、例6.9、 例6.12、例6.13、例6.14、例6.15、例6.16。
これでも多いかも知れませんが、何しろ最初の山なので。
このうち、定理6.8 は、前回導いた誤差項の積分表示の 拡張になっていることを確認するだけで前に進むことも可能。
それでは気持ち悪いということであれば、 2次近似式の誤差項を3次導関数の積分として、部分積分により導いて見ます。
帰納法のお作法を形式的に書くよりは、公式の正しさが実感できるかと思います。

テイラー近似を、近似計算と極限計算に応用する、 そしてそれを表現する便利が記号・考え方であるオーダー記号 (O-notation) についても経験を積む、とよいでしょう。
近似式を具体的に求める際は、公式を機械的に使うよりも、基本関数の近似式(これは覚える)の組合せで処理します。
そのための一連の手法が上で挙げた例に入っています。

参考になりそうな動画をいくつか挙げておきます。
テイラー展開
テイラー展開の気持ち
O記号の定義

講義ノートの例6.4にタイポが見つかりました。$\cos x$ と $\log(1+x)$ の剰余項の符号が反対でした。 講義ノートを修正したものに置き換えましたので、ダウンロードしなおして下さい。

本日の動画(82分)

Taylor 展開

あじさいに入道雲、季節も踊りだすように梅雨明け。

今日は、テキスト p.35-38。
テイラー近似式を極限移行させた級数表示(テイラー展開)を5種類の基本関数について確かめます。 その際、収束範囲に注意します。
証明も難しくはありませんが、まずは、近似式を補足する情報という認識でよいかと思います。
むしろ、前回の多かった内容を再度見直す機会と捉えて、極限計算と無限小のオーダーの復習をしてみてください。
最後に、p.38 にある積分を使った級数表示の方法を知っていただきます。
これは、テーラー近似式を導く際に使った積分表示に比べて、もっと単刀直入な関数表示を与えてくれます。
ただし、関数の具体的な形に依存するので、万能というわけではありませんが、使えるときはかなり重宝します。
有名な $\log 2$ の級数表示にも役立ちます。

次回は、いよいよ3回目の試験。例と宿題を中心に復習しておいてください。

本日の動画(77分)

試験3

台風のような梅雨のような、いつもの異常気象、天も人も狂うばかりに。

今日は、復習のあとで3回目の試験でした。

[講評]:全体として計算のつめの甘い答案が目につきました。
$\fbox{1}$ (i) で $(x-\pi/6)^2$ を展開するなど無駄(無意味)な計算をするもの多し。 近似値なので、小数で書かれるべきものをそうしていたのは一人か二人。 二次近似式がどう関係するか不明のものがそれなりの数に。
$\fbox{2}$ こちらも必要のない計算をして時間が足りなくなったようなもの多し。
多項式の計算で間違えるもの、これまた多し。

広義積分

カオスな気象に、サルスベリのくれないも鮮やかに。

今日は7節の広義積分です。
まず、べき関数 $y = \frac{1}{x^\alpha}$ ($x>0$) のグラフをかいてみて下さい。
$a$ が $\alpha=1$ より大きくなる、あるいは小さくなるときグラフがどのように変化するか観察します。
その上で、 \[ \int_0^1 x^{-\alpha}\, dx = \lim_{s \to +0} \int_s^1 x^{-\alpha}\, dx \] \[ \int_1^\infty x^{-\alpha}\, dx = \lim_{t \to +\infty} \int_1^t x^{-\alpha}\, dx \] を計算してみます。
発散するか収束するかが $\alpha=1$ を境に変化する様子を、先程観察したグラフの変化と比べてみます。 連動していることに気づいて欲しいのですが・・・。
なお、$\alpha=1$ は常に発散します。このタイプの発散を対数発散といいます。
発散はすれど、そのスピードが遅いのがその特徴です。かろうじて発散しているという感じのものです。
広義積分の境界での処理では、数列のスピードがしばしば問題になるということも押えておいてください。

ついで例7.2をやり、定理7.3を納得します。
その上で、例7.4、例7.5、例7.6 を一気にします。ガンマ関数という言葉も。意味は階乗関数。

最後に、今日の宿題をやってみます。

3回目の試験結果を確認しておいてください。先週の日誌の講評も。 期末試験は、3回目までのところから2題、新たな内容から2題の予定。過去の不十分点の復習を。

本日の動画(76分)

級数の収束・発散

前線は暴れに暴れ、セミは季節を忘れず鳴き急ぐがごとく。

いよいよ最後の学習内容となりました。級数です。
これを苦手にする人も多いかと思いますが、理由は単純で、経験不足、これに尽きます。
数を次々と足していった極限のことですが、それが存在する(収束する)と、 次々加える数は $0$ に近づくことになります(命題8.2)。
しかし、逆は正しくない。
例8.3で対数発散という現象を、広義積分の応用として学びます。
さらに、命題8.5と例8.6で知識を補強します。
宿題17もお忘れなく。

その後に書いてある「和の一般論」は、余裕があればどうぞ。
ただその中に出てくる、一気の和(総和という)が考えられる場合(絶対収束という)と、 そうでないない場合(条件収束という)は、本来、明確に区別されるべきものです。
テーラー展開で現れる級数表示は、基本的に絶対収束します。
広義積分でも同様の現象が起こることにも注意します。

来週は4回目の試験です。試験範囲は、過去3回行った試験のところから2題、広義積分と級数から2題です。
とくに、成績の思わしくなかった(理解が十分でなかった)ところを重点的に復習しておいてください。

Q: 微分積分学の例の8.18の(3/2)log2がなぜそうなるのかわかりません。
A: これは、$p=2$, $q=1$ の場合なので、 \[ \log(2\sqrt{\frac{2}{1}}) = \frac{3}{2} \log 2 \] となります。

総和について追記します。
和は順番に足すものと思い込んでいる人も多いと思いますが、 本来は一気に足し上げて良いもの。それができるか否かが「絶対収束」かそうでないかの違いになります。
級数の積を表示するのに \[ (\sum_{j=0}^\infty a_j) (\sum_{k=0}^\infty b_k) = \sum_{n=0}^\infty c_n, \quad c_n = a_0b_n + a_1b_{n-1} + \cdots + a_nb_0 \] というのが良く本に書いてあって、どうして好きに足してはいけないのか、と思うあなたは正しい。
これ以外の足し方は許さない、といった風潮はとても危険です。
総和法は、数学科の学生でも知らない人が多いくらい、触れられることがまれではありますが、 極めて基本的な考え方であると常々思っていたのが、講義ノートの記述になりました。
まあ、迷惑といえば迷惑な話かも知れないので、普通は授業で取り上げたりしません。 匂わすだけです。心ある人にだけ伝われば、という思い。

BA5が蔓延中のようです。対処のよりどころはサイエンスにも通ずる「合理精神」。これだけが頼りと言うか。

本日の動画(72分)

試験4

いよいよ炎夏の到来、最後の一仕事。

今日は 4回目の試験でした。
これまでの試験問題の類題から二つ、広義積分の基本の基本、級数の収束の宿題の一部から一題ずつ。
満点続出と思いきや、これで十分差がつくという経験則。

夏の月に儚き夢も数えるほどに。


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