第六日目:10月16日(月曜日)

【空腹感のある朝】

8時に起床した。眠い目をこすりながら、シャワーを浴び、昨日もって帰って

きたパックを開けて、二人で朝食代わりに食べる。冷めて、お世辞にも美味しい

とはいえないが、暖かくても美味しいというわけでもなく、もうそんなことで

いちいち嘆いても仕方がないという境地になっている。それでも山のように

残されたポテト群は捨てざるを得なかった。ただ、昨日は夕飯を残して

持って帰るという技を覚えたので、食事の摂取量を適度に減らすことが出来た

せいか、朝起きると空腹感があった。これはアメリカにきて初めての経験である。

 

【アパート移住計画本格始動!】

ホテルを出て、まず大学のHousing Officeへ向かった。昨日あけられなかった

ドアの鍵についてclaimをつけるためだ。事情を説明するとメンテナンススタッフが

部屋にいくので、そこで見てもらってくれと、部屋のスペアキーの鍵束を手渡してくれた。

我々は早速部屋に向かう。行ってみると、そこには青い作業服を着たおじさんが

立っていて、鍵を見せろという、渡すと一つ目の鍵は確かに開かない。

でよく見ると渡された鍵とは切れ込みが違う。どうやら違う部屋の鍵を渡されて

いたようである。もう一つの鍵も間違いかと思って試してみると、今度は開いた。

どうやらこちらの方は我々の鍵の開け方がまずかったようである。

実際、ドアには二つの鍵穴があって(これはロスではたいへん重要なこと)

その二つを順番にあけないと開かない仕組みになっているということが判明した。

そこで、間違えている方の鍵をおじさんに返して、鍵束からあけられる別のキー

を抜き出してもらった。これで部屋に入るという作業は完了である。

 

部屋にはいると、次にしなければならないのはDamage Reportの作成である。

その前に昨日確認しておいた、洗濯機室に行き、洗濯を済ませることにした。

洗濯機が回っている間にDamage Reportを作成しようという考えである。

洗濯機は昨日も書いたが一回1ドル。25セント追加すれば洗濯時間を3分延長し、

さらにすすぎを一回多くするSuper Cleaningをしてくれる。

妻の話によると海外の洗濯機は日本とは少し違って落ちにくいという情報があるらしい。

ここはSuperにしておいて、さらに洗剤が変わるのも何なので日本から持ってきた

洗剤を使って洗濯しようということになる。洗濯時間は45分。

我々は洗濯室を後にして部屋に戻ってDamage Reportの作成に入った。

 

Living Room, Bathroom, Bedroom そしてKitchenと各部屋について、傷・汚れなど

をこと細かにレポートする用紙がHousing Officeからもらってあるので、

それに気がついた点をすべてもれなく記入しなければならない。

そうしないと退去時に再びチェックが入り、記入されていない傷などについては

別途補修費用を請求されることになる。最初に部屋を見たとき、改装後でかなり

きれいに思えた部屋もいろいろ細かく見ていると、所々に細かい傷がある。

家具のペンキの剥げ(scaling)、ドアの掻き傷(scratch)、壁に開いたピンの差し穴、

網戸(screen)の小さな穴など、ちょっと日本でやったらやりすぎではないかと

思える所まで我々はチェックした。その中で困ったことは風呂のバスタブからの

排水がやや悪いということ(今はちゃんと流れるが、後々詰まる(clogged)可能性

がある。詰まってからだと余計なコストがかかってしまう羽目になるので、

今の内にレポートしたおくのがよい)それにガスコンロが使えないということであった。

初めはガスが通じていないのかとも思ったが、シャワーから湯はでるし、

ガスによる全館冷暖房システムも正常に動作しているので、ガスが来ていないと

言うことはないはずである。おそらく危ないのでガスコンロへ来るガスの元栓が

閉じてあるのだろうと推測しているが、日本のように目に見える位置にガスの元栓が

あるわけではなく、また説明書を読んでもどこをいじったらいいかわからない

有様なので、これはレポートに書いておくことにした。

 

このレポートとは別にこの大学アパートに標準装備されているインターネットの

口を利用するに当たっての契約書ももらっており、それにも目を通してサインを

して再びHousing Officeに戻って、提出した。すると、このレポートに応じて

2週間以内に各種補修を行うとのこと。まあ、ガスが今使えなくても困りはしないので、

それに対しては何も言わずオーケーを出した。

 

【困ったときのBurger King

一つ大きな仕事が終わったので、我々は昼御飯を食べることにした。

洗濯物を回しっぱなしなので、あまり遠くへも行けないので、近場のファースト

フード店に行くことにした。IN-N-OUTという店である。日本では見たことがない

店なので二人とも楽しみにして行ってみたが、残念なことに店はお昼時の学生など

でごった返しており、時間がかかりそうだったので別の店に行くことにした。

でたどり着いたのが、昨日のBurger King。ここはすいている。昼時なのに空いている。

これは何を意味するのだろうか?あまりに昼食としてスタンダード過ぎて、

客が敬遠して空いているのか、あるいは他の店例えばIN-N-OUTの方が美味しいから

空いているのか、それはわからない。これは後日IN-N-OUTをトライしてみて

判断してみたいと思っている。

【英会話上達の道】

さて妻の事である。妻は英語が苦手である。どれぐらい苦手かというと、

中高を通じて人並みの成績を取るのがかなり精一杯と言う感じである。妻の家族

からは「あの和ちゃんが英語をしゃべれるようになれるのだろうか?」と言われているし、

実際本人も英語が話せるようになるとは信じてはいなさそうである。それでも、

アメリカ行きに備えて半年英会話学校にいったが、その効果のほどは、たくさん

のロスに遊びに来てくれる日本人の英会話友達を作ることに現れただけである。

そんな状態であるにもかかわらず、アメリカに来てくれると言う点で彼女は私に

とって尊敬に値するのだが、それはメンタルの問題で実際にアメリカに来てみれば、

確かに言葉には不自由している。それでも、一日一つずつ生きていくために必要

なフレーズを教えて、それを覚えていくことを日課とするようになった。

今回のアメリカ滞在の興味はもちろん研究の上での様々な成果をえることにあるが、

もう一つ妻の英語力がどこまでアップするかということにも大きな興味がある。

私の持論としては言葉の修得には二つのペアがある。それは「読み」「書き」と

「聞く」「はなす」である。前者の方は日本の中学・高校・大学を通じてみっちり行われている。

このメリットはアメリカに来ても、一応書いてあることがわかるようになると

いう点に現れるし、英語で文章をつづる時にも助けになる。明治以後の英語能力

が外国人との意志疎通より、書かれた物の翻訳や日本社会への解題という点にあったので、

そういう方法も大きな成果を生みだしたことは否定しない。しかしながら、

現代のように世界が狭くなり、かつては世界から学ぶことだけをしていた日本人も

自らの発明や考えを世界に向けて発信する機会が増え、また世界の人がそれを

期待する時代にあって、今の「読み」「書き」中心の英語教育は片手落ちという感じがする。

一方後者の方であるが、言葉として「文盲率」というものがあるのに、話せない人の率は

統計としてとらない。というぐらいだから、言葉を話し聞くことは読み書きより

も修得しやすい能力だと思っている。実際に、日本に来ている多くの外国人の

多くは、かたことながら日本語を話すことはできるが、文章を読んだり書いたり

するのはきわめて困難であることは、これまで私が知り合った在日の外国人の

経験として教えてくれたことである。だから、英語を話す・聞くというのはもっと違う方法でもって、

身に付く技術なのではないかと考えている。その一つとしてよく言われるのが

「海外で住む」という方法だが、これが本当に効果があるのか、これは私の妻が

証明してくれるであろう。読み書きが苦手でも話す・聞くはできるんだぞという

ことを。

 

話がそれてしまった。要するにBurger Kingに行って、彼女に昨日lectureした

決まった英語を聞き取りそしてはなすと言うことを実践させるべく、彼女一人に

注文をしてもらったのである。するとどうだろう。向こうもこちらの顔を覚えていたらしく、

ゆっくりはなしてくれたのであるが、実際に彼女の注文が通じたではないか。

そんなことぐらいと思えることだが、この一歩を実は大きな一歩だと私自身は感じている。

 

で注文したのはやっぱりWhopperである。昨日の反省をふまえ、Double Whopperでは

なくて普通のWhopperにした。Value meal(日本で言うところのバリューセット)で3.69ドル。

もちろんソフトドリンクは飲み放題のLサイズである。ハンバーガーもでかい。

 

【洗濯をさせながら思うこと】

食べ終わってアパートの洗濯機室に戻ると洗濯が終了していた。

洗濯物を今度は乾燥機にかける。一回50セント。時間は35分と出た。

その時間を部屋で過ごすことにした。部屋にはいると二人とも床に寝転がり仮眠。

二人ともアメリカに来て元気でいるが、やはり疲れが溜まっているようである。

それにしても、思いがけずいい部屋を早い内にゲットしたというラッキーにも巡り会い、

こんなに早くゆっくりできるとは思っても見なかった。新聞やアパートガイド、

新聞のClassifiedなどを見ているとWestwood近辺はだいたい月々1300ドル

以上出さないと、ゲート付き出入り口、ゲート付き駐車場、冷蔵庫などの電気製品標準装備

という部屋は確保できないし、それでもキャンパスから歩いて10分内にあるので

部屋を借りようとする人は多い、最初はどこに住むかをずいぶん考えていた。

近さを取って高い家賃を払うか、遠いところで安く住んで車で通うかなどという

具合にである。が何度も言うようにラッキーにもこのような安価で安全な部屋を

借りることができたし、インターネットも使いたい放題。スタートは実に快調である。

 

ふと気がつくと30分が経過していた。洗濯物を取りに行く。

乾燥機は実に優れ物で生乾きなどということはなく、ちゃんと乾燥している。

(あたりまえか?でも、基本的にアメリカでは物事の品質については無条件で

信用しないのが私の経験から学んだ信条である。なんでもトライして、いいもの

を見つけないと、というか実際にいろいろトライすれば良い物が見つかる国である。)

 

【電話とCDラジカセを買いに行く】

部屋に戻って、洗濯物を整理して、今度は電話機を買いに行く。外に出て、

電気屋(Circuit City)に入る前にSanwa Bankに行き、20ドルを25セントの束に

替えてもらった。洗濯機は25セントしか受け付けないと言うことを昨日書いたが、

それに対応するための措置である。銀行を出て、Circuit Cityにたどり着いて電話を購入。

店員はやたらにフレンドリーで説明をしてくれる。はなしていると彼は日本に3年いたという。

日本語も多少分かるらしい。白金台に住んでいたとやたらにローカルな話題をふって

きたので。私は関西から来たと話をグローバルにのばした。すると、京都大学の

出身かという。そうだと答えると、ここにもたくさんの京大からの学生が来ると

教えてくれた。こういう四方山話で客の警戒を解いて、一気にセールス開始。

電話はこれがいい。お奨めだと。しかし、こちらにはそういう英語での攻撃を意

に介さない妻がいる。彼女は迷うことなく安い電話を選択したことはいうまでもない。

イーサーネットケーブルとCDラジカセも同時に購入して部屋に戻った。

 

【電話接続】

部屋に戻る時、一人の住人に出会った。年齢は60ぐらいか、おしゃれな格好を

した白髪、白髭の老人である。名をジョルジュと言った。専攻は考古学らしい。

最近こちらへ越してきたなどという情報を交換して別れる。なかかな、いいおじいさんであった。

部屋に帰って、早速電話をつないでみる。受話器をとってみると、ちゃんと待ち受け音がなる。

よかった。それに気をよくして日本に電話してみようとするが、何が悪いのかつながらない。

なんでやねん?またなんかトラブルかいな?といろいろ電話のInstructionを読んでいると

電話がかかってくる。すると、おととい行った家具のレンタル会社からの電話である。

家具の搬入は明日の12時から15時の間に行われるということらしい。

その時には部屋にいて下さいということを告げて電話は切れた。。。

ほぅ、電話は繋がってんねんやん。それではと、もう一度トライ。しかし、

結果は×。この電話は現在使われておりませんという自動応答の音声がむなしく

聞こえる。

どういうこっちゃ?今度は方針を変えて、近距離電話にする。大学の教授の部屋

に電話してみることにした。しかし結果はやっぱり×。そういえば、この大学の

アパートは大学の内線番号が割り当てられていると書いてあったことを思い出した。

ということは外線番号というものがあるのではないかということにおもいが至った。

しかし、それが何番なのかわからない。Officeに聞こうにも、その電話が使えないの

だからどうしようもない。この時点でだいぶん煮詰まっていたので、

すぱっと諦めてホテルに戻ることにした。ホテルに戻って、電話の問い合わせを

してみると、ダイアル8が外線番号であることが判明。

明日もう一度トライしてみることにした。電話をつなぐという簡単なことさえも

簡単にはいかないのも異国居住の醍醐味である(?)

 

【食いしん坊万歳!−ISSHIN

そろそろアメリカ食にも飽きてきたので、今晩は日本食を食べに行くことにした。

ISSHINというお店である。今年の2月に一度一人で食べに行ったことのある

レストランであるが、大将はどっからみても江戸っ子風。店員はすべて日本人。

店にはいると「いらっしゃーい」という声が飛ぶ。アメリカ人客も多いので、ある

意味でこのかけ声も一種の演出なのかもしれない。さて、一般にアメリカの食料品は

安いし税金もかからないので、普通のお店では当然量も多くなる。が、日本食材

となると入手が難しいので比較的高価になりがちである。その結果、量を維持し

て値段が高い店と、量を減らして値段を維持する店ができる。この店は後者のほうである。

手ごろな価格と手ごろな味付けでgreasyhotなアメリカンフードに飽きた二人

の胃袋には優しく感じた。ただし、客観的に言えば、この店の味は日本で言うと

街の和食屋程度の味である。(それでもここでは美味しいとしなければならない)

私はうどんすきやき、彼女は天ぷら定食を注文した。

 

 


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