第二日目:10月12日(木曜日)

American Morning

目覚ましを7時30分にセットしたのに、二人とも起きたのは9時。

よっぽど旅の疲れが出ていたようである。飛び起きて急いで用事を済ませ、

朝を食べに行く。ホテルの朝食だが、ひたすらに甘いドーナツと地獄のように

熱くそして水のように薄いコーヒーとアメリカでは相場が決まっている。

ここもそうだった。まだ、良心的なのはシリアルがあったということと果物が

おいてあるということである。ヨーロッパでもそうだが、だいたいホテルの朝食

というのは質素である。

#ヨーロッパの名誉のために言っておくが、質素であるが味はたいへんよい。

一方日本や韓国などでは朝は盛りだくさんである。これは文化の違いなのだろうか?

単なるサービスなのかとあまり意味のないことを考えながら朝食を済ませた。

 

【行動開始!】

ホテルをでて、今日は例の物件を借りるための契約に行った。

すると、いろいろと申請書類を書いた後、

「契約をするスタッフが15時30分に来る」と告げられた。

今日は昼から車を借りてSocial Security Administrationへ行こうと思っていたが、予定が狂ってしまった。

しかたがないので、とりあえず空いた時間に数学科に行くことにした。

今日は教授はいるだろうか。が彼はいなかった。

うーん。日本の大学と同様、ここのスタッフも朝早く(といっても10時30分ぐらいだが)には

大学にはこないのだろうか。しかたなく次の作業にとりかかる。

まずは昨日予約しておいた日本への往復便のチケットをゲットした。800ドルだった。

それからAvisに車を引き取りに行った。車はMetroである。後でLAを走って

分かるのだが、これがまたしょぼいエンジンとしょぼいサス、ホームポジション

などどこへやらといったしょぼいシート。何もかもが安い。そりゃ日本車売れるわ。

一週間で車代が180ドルそしてFull Coverageの保険が140ドル併せて320ドルである。

日本よりもやすいのは言うまでもない、というか安くなければ借りない。

キーを受け取り車を点検する。

アメリカではとにかく見つけた不具合はすぐに聞いて確認することが必要である。

後で何を言われるかわからないからだ。点検すると車の何かの線が足下にたれている。

なんじゃと思って、スタッフに聞くと、「大丈夫」と軽くいわれた。

ちゃんと確認してあるから大丈夫ということらしい。車をピックアップして、

とりあえずホテルに戻る。

 

【UCLAのスタッフになるために】

ホテルでメールをチェックするとCaflisch教授からメールが届いていた。

今、部屋にいるという。早速彼のOfficeへ電話。見事つながり、今から逢おうと言うことになる。

そして30分後、無事教授と会うことができた。ここからUCLAのスタッフになるための手続きが始まった。

  1. 大学の職員票(UCLA Bruin Member)の作成
  2. コンピュータのアカウント作成
  3. 図書館の使い方
  4. コピーカードの使い方

などなど数学教室内をあるきまわることとなった。

 

Russel Caflisch教授はNice Guyである。気さくだし、不慣れな何かと私に便宜を

図ってくれる。研究者としては超一流であることは言うまでもない。

子供は6歳と2歳の双子の女の子が3人いる。

部屋の中に子供の写真を飾ってあるところはいかにもアメリカのお父さんという感じがした。

研究のことについても少し話をした。

渦層の最近の研究に関する論文が彼の所にはたくさん集まってくるらしく、

その一つ一つを私に手渡してくれた。

実は彼は今多くの研究業績を残しているこの流体の分野を研究しているわけではない。

今の主な興味は材料科学(Material Science)である。その理由を尋ねると、要するに

今アメリカが次世代の科学技術のメインテーマの一つとしてNano technology

あげており、それに関する研究に莫大なお金を投入しているからと答えてくれた。

生物・工学・物理・数学のあらゆる分野の研究者が共同で研究をしている。

このような環境は日本では到底達成されにくい。

なぜかという問題は一考に値すると思うし、この一年間の滞在でその答えを探す

ことも私の個人的な目的の一つなので、今後ゆっくり考えたいと思っている。

で、今は学生がいないらしい。流体を専門にしていたときはたくさんいたが、

材料をやりだした途端にいなくなったという。

理由は材料をやるには物理的な素養も必要で数学科の学生にはちょっと手が出しにくいということらしい。

流体もそういう面があるのではと訪ねると、流体の方が数学として面白い問題がたくさんあって、

数学として取り組みやすいという答えが返ってきた。

流体をテーマにした数学をする学生すらが少ない日本では材料をやる人も少ないと言うことだろうか。

(むろん優れた研究者は日本にもたくさんいる。 学生が両方の素養を持つこと

が難しいという意味でなかなか選択しにくい分野ではある)

外でコーヒーを飲みながらそのような話をしているとあっと言う間に時間が過ぎ、

アパートの契約時間が近づいたのでその旨を教授に告げその場を離れた。

 

【アパート賃貸契約】

賃貸契約はあっさりとした物だった。

いくつかの契約書に目を通し、その一つ一つにサインをして約1時間ですべて終了。

10月31日までの家賃750ドルと(日割り計算)Security Deposit500ドルを小切手で払って鍵をもらって出た。

16日までに電話と電気・ガスを引いてしまわなければならない。

明日の仕事ができた。それにしても意外とあっさりと部屋が決まってしまった。

大学まで歩いて10分。小さなスーパーまで歩いて5分。

大きな通りからは離れているし、車は完全にゲート付き。

それがこの値段でゲットできるとは思ってもみなかった。

渡米前にいろいろな現地情報L.A.WeeklyとかL.A.Apartmentmagazieとか

大学のHousing Officeが提供しているClassifiedなどをWebから調べたりして、

相場をだいたいつかんではいたが、やはり私個人の身分に付随して借りられるような部屋、

つまり今回のように大学関係者だけが居住できる建物などはやすく済む。

L.A.では(他のアメリカの都市もそうかもしれないが)「高い家賃を払える=お金持ち=身分の保証」

という図式が成り立つ。逆にいえば、大学の関係者であれば身分は十分保証され

るので、その分家賃などは割安になるという図式になる。

ここに部屋を確保できたと言うことを数学科の人に話すと、

「なんてラッキーなんだ!」Youre in the right place in the right timeと言われた。

どうやら大学のアパートは部屋の空きがなかなか出ず、パーマネントのスタッフですら

部屋を借りるのは至難の技だとのこと。たまたま、我々の住むFaculty Levering

は内装を大改装した後だったので、空き部屋がたくさんでたことが

私たちの部屋確保に有利に働いたようである。

(改装したてだから入居する部屋のすべての設備は全くの新品である。これも入居を決める要件であった)

 

Westwood青空市】

最悪の場合2週間はかかるだろうと思っていたい家探しも簡単に済み

気をよくした二人はWestwoodの街を少し歩いてみることにした。

これから一年お世話になる街だからよく観察しておこうと思ったからである。

するとWestwood Blvd.Weyburn St.の交差点から西側が歩行者天国となり、

そこでFarmers Marketなるイベントが行われていた。

日本で言うところの「青空市」である。産地取れたての野菜や果物、花などを

作った農家の人たちが直接に売りに来るというイベントである。

後で調べてわかったのだが、この市は毎週木曜日に定期的に行われるそうである。

値段も安いし新鮮である。さらにTastingをしてから買えるので、なかなか有益な市であると思った。

妻はもう毎週木曜日は市場の日だということでしきりに屋台にトライしては物産を買っていた。

こういうイベントは日本ではあまり見なくなって久しい。

私が小学生の頃などは毎週朝市があって、母親と一緒によく買い物に出かけたものだが、

周囲が便利になり物がどこにでもあるという状態になると、朝市もだんだん寂れていき、

今では毎週というようなペースでは開かれていない。

いや、もうなくなっているかもしれない。アメリカも確かに物にあふれた便利な

土地柄だが、土地が広いため買い物は車で郊外の大型店に出かけ一週間分を買いだめする

ということになり、結局こういう小さな市が都市部の真ん中に成立する余地を残しているのである。

スーパーでレジに並んで物を買うというのも便利でいいが、こうして売っている人から

直接買うという経験も楽しいものである。日本では駅前商店街などがそれに当たるが

、一部の元気な商店街をのぞいて、そういう風景が街道沿い

(日本の場合は土地が狭いので結局郊外の大型店というのは街道沿いになると

同時に居住地にも近くなる)スーパーによって寂れていくのが寂しくもある。

 

【食いしん坊万歳!−Schzewan Chinese Food

屋台で買った果物を片手にかじりながら、ホテルに戻る。

今晩は何を食べようかという相談になった。気がつけば昼を食べていない。

昨日のDennysでだいたいアメリカンサイズというものを知ったので、今回は

Westwood近辺の「食に耐えうる店」を探そうということになった。

ここで「おいしい店」ということにしなかったのは、そういう店を探すのが容易

ならざる事であると考えてのことであるが、とにかく日本人の我々が食べても、

なんとか大丈夫なものを出す店を少しでも開拓しておかなければならない。

で今日は中華にした。選択メニューはSpecial Dinner (B) $10.95 / personである。

Hot & Sour Soupがスープ、春巻き(Egg Roll)とエビフライ(Fried Shrimps)

それにチキンのホイル蒸し(Steamed Chicken)が前菜、メインはいくつかの

品物から各自一品ずつチョイスする。

私はSour Pork(酢豚)、妻はBeef Foo Yang(牛肉芙蓉)を注文した。

話はそれるが芙蓉という食べ物はあまり日本では聞き慣れないメニューではなかろうか。

どのようなものかと言えば、お好み焼きの種をハンバーグ風に丸めて、それに

衣をつけて油であげ、そこに(今回の場合は)ハッシュドビーフライクなソースが

かかっているという食べ物である。

で、味と量はというと、わかりやすく言えば量が1.5倍の王将といった感じである。

量はやはりアメリカンサイズこの半分から3分の2が適正サイズだと思うが、

まわりの客はみな、何事もないように食べている。

Diet Cokeなどでカロリーを気にする前に食べる量を減らすことを考えた方が

よっぽどダイエットになると思うし、経済的だと思うのだが、それは通じない。

こういうものは「生活習慣」なので、いつもより少ない量だと「食べたりない

」と感じる。量をキープしてカロリーを下げる。これがアメリカ人のダイエット

観であると思ってみたりした。もちろん私たちは残したことはいうまでもない。

 

【寝る前は明日の予定を組たてる】

部屋に戻り、明日の予定を二人で相談した。明日は電話回線を開いて、

電気・ガスの契約をして、Social Security Admin.に行き、Sanwa Bankに住所と

電話番号を告げに行くことにした。この手続きが完了した時間帯によって、

その後の動きを決めることにした。その後はそれらの手続きの方法や場所をいろいろな本で調べた。

 


L.A.徒然草ホームへ
第一日目の記録へ --- 第三日目の記録へ