基研研究会 高次元Black Hole研究最前線

2009年12月24日-26日

場所

湯川記念館1F　パナソニック国際交流ホール

目的

　　超弦理論における開弦の端点の集合であるところのD-braneの存在から、 物質が高次元時空の中のbrane(〜薄膜)に局在しているというBraneworld模型 が1998年に提唱された。Braneworld模型の特筆すべき理論的な洞察の一つ として、量子重力が効くプランクスケールと弱スケールの間の１７桁に及ぶ エネルギー差を高次元時空で解消する(高次元時空のプランクスケールが弱 スケールと同程度になる)ことができることがあげられる。弱スケールの エネルギーで高次元のプランクスケールの物理が検証できる可能性がある のである。この可能性とも関連するが、Braneworld模型ではLHC(Large Hadron Collider)のような弱スケールの物理を検証するための地上実験で高次元Black Holeの生成の可能性が指摘されている。この指摘以降、高次元Black Hole研究そのものが注目を浴びることとなった。しかし、そもそも超弦理論は 高次元時空で定式化されており、しかもD-braneを表わす超重力理論の解は Black braneと呼ばれるある種の高次元Black Hole時空である。これらの観点 から系統的な高次元Black Holeの基礎研究が望まれ今日に至っている。
　これまでの研究から、4次元時空と比べ高次元時空では多様なBlack Hole の形態が可能であることがわかってきた。例えば、リング状のものや、 HoleとRingを足したBlack Saturnのような解も5次元時空に限るが続々と発見され てきた。このような発見ラッシュの一方で解の分類という観点の一つから、 解を唯一に特徴づけるパラメーター(4次元と異なりホライズンの形や位置を 指定する量)の特定の研究も進んでいる。また、高次元の数値相対論研究成果 も出始めている。しかし、いまだ高次元Black Hole研究は発展途上にあり、 解の安定性、6次元以上のBlack Hole厳密解の構成、唯一性定理、漸近条件な どの問題が山積している。
　　そこで本研究会では、これまでの研究の総括と今後の方向性を招待講演者 の講演を機軸に探りたい。これまで以上に日本がこの分野をリードしていくべく、 今後の戦略等の議論も行う。本研究会では高次元Black Holeの基礎研究に焦点 を当てているが、そもそもの大きな動機であるところの現実の検証との接点も 探ってきたい。

世話人

石橋明浩(KEK), 石原秀樹(大阪市大), 井田大輔(学習院), 小玉英雄(KEK), 佐々木節(基研), 杉本茂樹(IPMU), 柴田大(基研)
白水徹也(京大), 早田次郎(京大), 高柳匡(IPMU), 田中貴浩(基研), 中尾憲一(大阪市大), 細道和夫(基研), 前田恵一(早大)

サーキュラー

参加登録

旅費補助は締め切りました。参加登録をされていない方でも研究会参加は自由です。 参加者リスト

旅費補助

世話人にお任せください。

プログラム

12/24 13:30-14:30 泉圭介(東大IPMU)厳密解の系統的構成
14:30-15:00 木村匡志(大阪市大)Dynamical black rings with a positive cosmological constant
15:00-15:30 伊形尚久(大阪市大)Toroidal Spiral Strings around Five-dimensional Black Holes
16:00-17:00 重森正樹(Amsterdam)Brownian motion in AdS/CFT
17:00-18:00 吉野裕高(Alberta)高次元数値相対論
18:00-18:30 山田祐太(大阪工大)ブラックオブジェクトの数値解析
12/2509:30-10:30 村田佳樹(京大)高次元ブラックホールの安定性解析
10:30-11:30 井田大輔(学習院)Black Holeのトポロジーと唯一性
11:30-12:00 石橋明浩(KEK)　高次元臨界ブラックホールの分類問題
13:30-14:00 富沢真也(KEK)　dipole ring の一意性定理
14:00-14:30 宝利剛(大阪市大)Hidden symmetries of charged Kerr black hole
　 14:30-15:30 飯塚則裕(CERN)Matrix Models for the Black Hole Information Paradox
16:00-17:00 橋本幸士(理研)超弦理論の応用と重力解
17:00-18:00 浅井祥仁(東大)LHCでの余剰次元研究
18:30- 懇親会@基研　
12/2609:00-10:00 森田健(Tata)　ゲージ/重力対応と高次元BHのダイナミクス
10:00-10:30 宮本雲平(立教)重力/流体対応を用いた高次元ブラックホール安定性の理解
10:30-11:00 中村真(京大)Gravity Dual of Spatially Modulated Phase --- Instability of Black Holes Induced by Chern-Simons Terms
11:00-11:30 三島隆(日大)Black Di-ring 解の諸性質
13:00-14:00 田中貴浩(基研)　Black holes in brane world
14:00-14:30 柳哲文　高次元時空の構造とブラックホールの形成条件
14:30-15:30 前田恵一(早大)　Black Holes in and from Higher Dimensions

連絡先

白水徹也
京都大学大学院理学研究科物理学宇宙物理学専攻
tel:075-753-3882
e-mail:shiromizu_AT_tap.scphys.kyoto-u.ac.jp

過去の関連研究会

高次元ブラックホール研究最前線2007　〜厳密解とその安定性〜
高次元ブラックホール研究最前線2008