Date | Title | Speaker | Comments |
11/7/00 | Reversibility and level set | M. Petersen (Georgia Tech. Univ.) | Molecular Beam Epitaxyの数値研究。 分子を薄膜の上に落して、それがどのように積み上がるかを研究する。コンピュータの チップの開発や最近アメリカでお金になるとされているナノテクノロジーの基礎づけとなる分野。Caflisch教授も現在はこの分野を研究している。講演の内容はMBEにおいて 分子が一つの島構造(Island)を作るのだが、その界面時間発展をLevel Set法を基にした数値計算で研究したものである。LevelSet法をと確率的な方程式をKinetic Monte CalroシミュレーションのHybridさせて時間可逆(Reversible)なIslandの生成消滅の時間発展 の様子を計算したというもの。 |
A polulation density approach that faciliates large-scale modeling of nueral network | D.Q. Nykamp | 脳のニューロンネットワークの話。ほとんどわからなかったが、感じとしては 脳のニューロンのシミュレーションをするのに、ニューロンネットワークをいくつか に分割して、それを組み合わせて脳全体をモデル化しようという話だったように思う。 | |
Shocks and viscosity solutions | Y. Giga (Hokkaido Univ.) | 儀我先生がUCLAに来られた。話の内容は一階の双曲型方程式のCauchy問題の 解を人工的な粘性項を付け加えた正則化方程式の解による近似理論で研究すると いうものである。一般にこうした双曲型方程式にはショック不連続性を持つ解が 発生することが知られているので、そのような不連続性が生成した後の解をどう 記述するかが問題になる。空間微分に依存する項が保存則で与えられる時は entropy solutionという概念の枠組でその解はもとの双曲型の方程式の解に L^1収束することが知られているが、 保存則で与えられない場合には粘性解の理論による結果が知られているが、MBEの 運動を記述するような場合(ある種の単調性がなりたたない場合)にはこの粘性 解の方法はうまくいかない。そこで、subgraph solutionという拡張概念を導入 してその場合にショック形成後の解を近似することができるということを数学的 に厳密に示したという内容であった。過去2回に比べて、内容が実にしっかり していたので聴衆の反応がかなりよかったのが印象的だった。本来ならば儀我 先生をおもてなししなければならないのに、その夜は夫婦で先生にごちそう になってしまった。儀我先生ありがとうございました。 | |
11/28/00 | Nonlinear schrodinger equations as models of siperfluidity | N. Berloff (UCLA) | 極低温液体ヘリウムの超流動運動のモデル解析を数値計算と特異展開によって 研究したもの。この運動はGPモデルと呼ばれる非線形シュレーディンガー方程式 と連続の方程式、それにベルぬー意の方程式の組合せによって記述されるが、 これまでの解析では実験から知られている分散関係をうまく近似していなかったので うまく方程式を改良(一般化)してうまく近似したと言う話。具体的には球の周りの イオンの作る流れを数値計算し、そこから発生する渦輪の様子、境界との相互作用 などを可視化して見せていた。私にとっては非常に面白い内容だった。 |
12/05/00 | Difference schemes for conservation laws with a dicontinuous fux | J. Towers (CTSNET) | 一次元双曲型の偏微分方程式の数値解法に関する研究。空間部分が保存則で与えられない時の差分スキームの評価をしていた。スキームはStaggerd mesh schemeと名付けられていたが、要するに中間の値をうまく使って空間微分の項を評価しようというアイデアのようであった。その中間値はsingular mapping とよばれる写像を定義して計算する。このアイデアで2次のスキームが構成されたと言うのが結論。以上が私が聞き取れた内容である。OHPを出し入れするスピードが高速すぎて、私のような一見初学者にはよくわからなかったろころも多いので、このコメントは嘘を含んでいるかもしれない。 |
12/12/00 | On a motion of a two-dimensional vortex sheet and a double branched spiral | T. Sakajo ( Nagoya Univ.) | 2次元渦層の運動を記述するBirkhoff-Rott方程式を正則化した方程式の解が爆発する時間を調べた。本来、正則化が行われているためにこの解は爆発しないことが知られているが、時間変数を複素数に拡張すると、複素時間平面の中に解の爆発する時間が存在する。このような時間を複素特異時間と呼ぶことにする。Sulem, Sulem, Frischらの方法とMooreによる漸近解析の結果に基づき数値的にその時刻を検出した。その複素特異時間の分布の特徴と振舞の様子を考察し、Birkhoff-Rott方程式の解が有限時間で爆発するのに正則化方程式の解がいつまでも滑らかであると言う事実の説明に成功した。さらに、正則化された2次元渦層のスパイラルの巻上がり解を近似する、あるモデルを提案し、その数学解析と渦層との比較を通じて、このモデルがある時刻以降の渦層の解をよく近似し、さらに数値的に得られた渦層運動の複素特異時間構造をよく説明していることを示した。また、いくつかのモデルと渦層の諸量の比較を通じて、Birkhoff-Rott方程式の特異点発生後の解としてこのスパイラル解を認めることができるのではないかとのconjectureを得た。 |
1/16/01 | Ridgelets and Neural Networks | E. Cande (Cal. Tech.) | タイトルを見た時、脳科学の話だと思ったが、聞いて見ると関数近似の話で あった。Ridge 関数と呼ばれるある種の関数群(その関数の一例としてニューラル ネットワークのシナプスの作用を近似するsigmoid関数が含まれるので、そう呼んで いるのだが)の線形結合で近似するというもの。その基底関数としてはこのRidge関数 をshiftしたものと拡大縮小したもの、これをWaveletsのアナロジーからRidgeltesと 呼ぶらしいが、を用いる。係数はおなじみのRidgeletsと関数との積分によって定める というもの。この分解作用素はL^2ノルムを保存する等長作用素(まあ、これは 当然の結果であろうが)であることと、不連続関数の近似において、Waveletsより よい近似オーダーを持っていることが特徴。いくつかの計算例を見た。が、話が 長すぎたために、最後は聴衆の方が疲れていたようである。 |
1/23/01 | Superconsistency discretization | D. Funaro (Univ. Modena, Italy) | 与えられた作用素Lを離散化した離散作用素L_dを与える場合 そのconsistencyが問題になるが、今回の話では|L(v)-L_d(v)|を exactに0にするように離散点を選んで、少ない離散点でも安定に 計算ができるようにするというアイデアを幾つかの例とともに 解説した。一次元の場合はLegendre多項式の0点を使うのがよく、 2次元の場合はそれらの0点に加え、いくつかの点を領域内に 選んでやればうまくいくということだったが、英語が聞き取りにくい ので詳細まではわからなかった。しかし、結果を見る限り、なかなか 有望そうなメソッドではある。一度調べて見る必要性あり。 | 1/30/01 | On discontinuous solutions of Hamilton-Jacobi equations | Bo Su (Univ. Wisconsin-Madison, USA) | Hamilton-Jacobi方程式の解の定義を石井先生のSemi-continuous solution を拡張することで、L^\infty解までの解のクラスを考えて、そのような解が 存在することをPeronの方法によって示す。という話だった。最初にこの方程式の 研究の歴史についてのレビューがあったので、勉強になった。が、彼の喋りは ぼそぼそとしていて、板書も落書のような程度だったので、内容を理解するのに 苦労した。 | 2/6/01 | Active shielding and control of environmental noise | S. Tsynkov (North Carolina Univ. and Tel Aviv Univ.) | 与えられた空間の中で発生するノイズ除去をHelmholtz作用素のグリーン関数 などをうまく使うことで最適なノイズ除去関数を導入して行うというもの。 想定している応用は掃除機のノイズを外へ出さないようにすること、あるいは携帯 電話が拾う環境ノイズを除去することにあるという。ノイズを消すには勿論、ノイズ を打ち消すような波動をつくればいいわけだが、それを計算するのはたいへんなので、 あるコスト関数を導入して、その関数が最小になるようなノイズ除去関数を見付けよ うというアイデアだと私は理解した。このノイズ除去関数が厳密に計算できる簡単な 領域形状の場合について、このアイデアがどのようにノイズを除去しているかを見せ てくれた。本格的な応用はこれからとのこと。しかし、環境ノイズのように 時間変調するような場合に応用ができるのだろうかと言われれば、少し難しいように も思う。 |
2/13/01 | First-Order system least squares and its dual for partial differential equations | Z. Cai (Purdue Univ., visiting UCLA) | First Order System Least Squares (FOSLS)と呼ばれる高階楕円型方程式の 変分問題定式化における、そのエネルギー最小値を与える関数を求めるアルゴリ ズムについて解説し、その最小値を与える関数空間を性質のよいものにするため の工夫として、線形作用素のDualを考えて、その上で最小関数を求めるという方法 を紹介。また、そのいくつかの応用例について発表があった。高階の楕円型作用素 (セミナーでは具体的に2階の楕円型方程式を出していたが) を1階の楕円型方程式 のシステムへと人工的に変更し、その上でのエネルギー関数を考え、適当な関数空間 から最小値をみつけるという問題に再定式化する。この定式化によって、方程式は overdeterminedな系となってしまうので、境界条件や、補助的な方程式を導入して 適当な関数空間からそのエネルギー関数を最小化するものを最小二乗法で見付ける というもの。 |
2/27/01 | Stochastic perturbations uniqueness and selection principles of motion by mean curvature | A. Yip (Purdue Univ., visiting IPAM of UCLA) | 平面の平均曲率流の問題において、解の一意性などが保証されない初期状態 から始めた時に解がどの最終状態に近付くかという問題を考えている。講演者は 曲率方程式にランダムなノイズ項を付け加えた確率平均曲率流による定式化を 行って、そのノイズ項の影響を0に近付けた時の解の振舞に付いて、幾つかの結 果を紹介した。結果は二つの円が一点で接している状態から始めた場合で、かつ ノイズがブラウン運動的、つまりホワイトノイズの場合の確率平均曲率流に限定 されてはいたが、平均曲率+ノイズの場合、ほとんど確実(almost surely) に二つの円は一つの円にくっついて運動をするということを示した。また、 平均曲率+ある外力+ノイズの場合、50%の確率で一つの円に、50%の確率で 二つの離れた円になることを示した。一意性が保証されないような物理問題に おいて、ノイズの効果が解の選択に役割を果たしていることがよくわかった。 |
3/6/01 | Degenerate parabolic euations; entropy solution theory, numerics and applications | K. Karlsen (IPAM of UCLA) | 退化放物型の方程式のエントロピー解の定義とその存在と一意性に ついての話。あと数値計算するときの収束定理とそのオーダーに付いての 話があった。OHPが多すぎて、私のような背景をあまり知らない素人には 理解しにくかったように思う。 |
3/20/01 | Vortex shedding from a torsionally oscillating sphere | R. Hollerbach (Glasglow Univ and Princeton Univ.) | 久しぶりの流体の話である。糸の先に球をつけて剛体回転させると、その表面 での粘性の効果により、表面流ができる。その表面流は極から表面を這うように 平行に進み、そして赤道付近から外に向けてジェット流のように吹き出して行く。 このジェット流れは、球の回転が強くなると、不安定化しレイノルズ数200付近 でマッシュルーム状の渦構造を作る。さらに回転数を上げると渦の剥離が赤道以外の ところからも起こり(この段階でもある種の対称性は失われていない。)、そして 最終的には乱流状態になる。この実験の結果とそれを数値的に調べて、流れによる 流体粒子の運動などをシミュレートして詳しいメカニズムの説明を行おうとしている。 現象そのものはたいへんおもしろいと思った。うまくこの話を発展させれば 土星の周りの輪っかがどうして赤道の上だけに出来るのかが説明できそうな 気がする(既に説明されているのか?)。惑星科学の本を読んで見て、この仮説を 検証する価値はある。 |
4/10/01 | A common level set framework for active contours and Mumford-shah sengmentation in image processing | L. Vese (UCLA) | 与えられた画像の輪郭を取り出すという操作を行うアルゴリズムとして edge関数と呼ばれる境界で0、その他の領域で正の定数になるものを選んで 大きな閉曲線を初期曲線として、それを縮めて行き、ある点でedge関数が0に なったらその点を縮めるのをやめるというステップを繰り返して最後にその 閉曲線の長さと内側の面積を最小にするようなものを求めるというものがある。 これをactive contour with edgesというが、これは与えられた画像の境界が はっきりしていない場合や内部に境界があるような画像(例えばドーナツの ような形)そして、ノイズが入ったようなものにはあまり有効でない。そこで Level Set methodを援用して、レベルセットが平均曲率流で縮む過程で、ある エネルギー関数が最小になるようなものを選び出すというアルゴリズムを 開発し上記の古典的な方法がうまく動作しない場合にでもかなり強固に働く ことを例とともに紹介された。アイデアもおもしろいし、複雑な物体の境界を (例えば脳の画像解析など)捉えるのにはたいへん有効に思える。3次元の 物体を定義するのにポリゴンではなくレベルセットの0境界として定義する というやり方は、トポロジーの変化にフレキシブルに対応できるので、応用 の上でも重要かと思える。Level Set methodという言葉は平均曲率流の 数値計算で使うと言う話は知っていたが、ここまでくると思想の領域に近い。 |
Date | Seminar | Title | Speaker | Comments |
11/13/00 | Perspective in Mathematical Physics | Inverse Problerms on Mathematical Physics | 記録忘れる | このセミナーは様々な分野の専門家を呼んで、これまでの 研究の歴史と、その概説、それに未解決問題などを詳しく解説 するためのもので、日本で言えば集中講義のようなもの。と いっても講演時間は一時間なので、かなりコンパクトにまとめ られないと、話がまとまらない。話者の能力が問われる。今回 の話はタイトルの通り逆問題の講義だった。一般論をこまかく やるのではなく、Electric Impedance Tomography, Inverse Scattering Problem in quantum mechanics, Inverse Problem of reflection seismologyの具体的な応用を説明して、逆問題 とは何か、そして何がわかっていて、何がわかっていないかを 丁寧に解説するというスタイルであった。たいへんわかりやすくて よかった。 |
1/26/00 | Special Applied Math Colloquium | Computational models and results for martensitic thin films | M. Luskin (Univ. Minnesota) | 非常に薄い結晶膜の温度による相変化に伴う、運動の様子を、運動の 表面エネルギーなどのエネルギー関数の最小化問題として数値計算して、 それが現実の現象をよく説明している事を解説したもの。最近アメリカでは マイクロマシーンに関する数理的研究が盛んである。この研究も同様である。 与えられたエネルギーはダブルウェルポテンシャルになっているようで、 その二つの0点をどのようにして求めるかを議論していた。 |
2/8/00 | Mathematics Colloquium | Deforming a surface in the direction its mean curvature vector | Mu-Tao Wang | 平均曲率に従って曲面が時間発展する問題に関する話。余次元1の曲線に 対するこの手の問題はよく話を聞いて知っているのだが、今回の話は余次元が それより大きい場合の研究である。これに対して、写像のヤコビアンが1以下の 場合、平均曲率流は定常流に近付くという定理を話者は示した。証明はその場で 聞いても私にはわかるものではなかった。確かに余次元(自由度)が増えれば、一 点に縮小せずに定常な流れに近付くようなものがあるのは容易に予想できる。 また、本質的にどういう現象を念頭においてなされている研究かはわからなかった。 私が聞き逃しただけかもしれないが、いずれにせよ数学コロキウムでの講演だから、 別に数学的な興味だけでいいのかもしれない。(本当はよくないかもしれないが。) |
5/9/01 | IPAM Geometric Based Motion | Theory and Modeling for Turbulent Reactive Fronts | A.J. Majda | A.J.Majda が来た。話しは巨視的スケールの平均流の中に 乱れた流れの効果をいれたTurbulent Reaction-Diffusion方程式 の簡単なモデルの導入とその数学解析と応用についての話であった。 その数学理論の概要を前半でざっと説明し(詳細はPhysics of Fluids 314を参照の事)、後半はその応用として、このような乱れた 流れの中における燃焼問題の解析と数値計算の例が示された。その 計算結果はなかなか面白そうだったが確率微分方程式の知識がかなり 要求されるので、その内容の詳細までははっきり理解できなかったのが 残念であった。日本に帰ったらぼちぼち勉強して見よう。 |
5/10/01 | IPAM Geometric Based Motion | Convolution-based Methods for Interface Problems | Steven Ruuth | 拡散が生む(平均曲率流)による界面の運動を有限差分で解く場合、 メッシュのサイズが粗いと界面が前に進まないという現象が起こる。そこ で十分な精度を得る為にはメッシュを細かくしなければならないが、それは 大きな計算機資源を要求する。この話者はそこで、スペクトル法に基づく 数値計算法を提案し高速計算に成功した。この界面計算方法を一般化して、 様々な核とのConvolutionとそのThresholdが生み出す界面の運動という問題 を考えて幅広い応用を可能にしたという話。この一般化によって明示的に 界面の運動とセルオートマトンとの関係が示され、多くの問題に応用が可能 であるということを実例を交えて解説した。また、この方法は3次元にも 簡単に応用でき、かつJunctionのある界面に対してもrobustに適用できると いうメリットがあるということもいくつかの例で示した。 |