幾何解析における貼り合わせ技法

#幾何解析 #スライド #講演ノート #ゲージ理論

2020年10月5日から10月9日までの東大数理での集中講義の記録である.

講義で用いたスライド

2020-08-31時点でのシラバス

講義題目

幾何解析における貼り合わせ技法

授業の目標、概要

幾何解析とは幾何学に由来する偏微分方程式の研究の謂いであって,幾何と解析が渾然一体となる姿が,本当におもしろい. 今回の集中講義の主な目的は,その中心的手法の一つである「貼り合わせ(gluing)技法」を紹介することによって,幾何解析の魅力を伝えることにある. 特に,四次元トポロジーのDonaldson理論での反自己双対接続(インスタントン)の「Taubesノルム」による構成を例として紹介する. また,Green核の構成や加藤の不等式のように,専門家には常識だが適切な参考文献が見つけにくいものについて,詳しく説明したい.

Riemann幾何と函数解析を予め少し勉強したことがあると望ましい. 例えば接続と曲率やSobolev空間の定義など. 参考書の今野先生の教科書を読んでいれば充分である. 非線型解析やDonaldson理論については,予備知識を仮定しない. ただし,幾何解析の全くの初学者に,不等式の議論がおもしろいとはどういうことかを伝えることも講義の目的の一つなので,予備知識が全然ない受講者も歓迎する. 積極的に質問して欲しい.

キーワード

幾何解析・貼り合わせ・gluing・Taubes・Donaldson理論・反自己双対接続(インスタントン)・ゲージ理論

授業計画

  1. 線型幾何解析での貼り合わせ技法:Riemann-Rochの定理
  2. Green核の逐次近似による構成
  3. 非線型幾何解析での貼り合わせ技法の頂点:Taubesノルム
  4. 倉西写像:Floer-WeinsteinによるSchrödinger方程式の解の構成

まずは前座として,線型幾何解析における貼り合わせ技法を紹介する. 具体的には,古典的なRiemann-Rochの定理を現代的な貼り合わせの技法により証明する.

次に本編への準備として,Green核の逐次近似による構成を紹介する. そして,非線型幾何解析における貼り合わせ技法の一つの到達点としての「Taubesノルムによる反自己双対接続の構成」を紹介する. ここでは,反自己双対方程式の構造への透徹した洞察を背景として,Green函数と加藤の不等式とWeitzenböck公式が巧みに使われる. 応用として,無限個の反自己双対接続の貼り合わせと平均次元への応用について言及する.

最後に,発展として,Floer-Weinsteinの非線型Schrödinger方程式の解の構成を例にとり,倉西写像を紹介する. 時間が許せば,劣決定系での貼り合わせ技法の紹介として,スカラー曲率方程式とKazdan-Warnerの問題も紹介する.

また,全体として,幾何解析での些細だが必須の手法を数多く紹介していきたい.

授業の方法

オンライン講義.

成績評価方法

成績評価はレポートにより行う.

教科書

参考書

履修上の注意

Riemann幾何と函数解析を予め少し勉強したことがあると望ましい. 例えば接続と曲率やSobolev空間の定義など. 参考書の今野先生の教科書を読んでいれば充分である. 非線型解析やDonaldson理論については,予備知識を仮定しない.

ただし,幾何解析の全くの初学者に,不等式の議論がおもしろいとはどういうことかを伝えることも講義の目的の一つなので,予備知識が全然ない受講者も歓迎する. 積極的に質問して欲しい.

関連ホームページ

https://www.math.nagoya-u.ac.jp/~shinichiroh/2020/08/31/UT-intensive-lectures

その他

オンライン講義で無反応だと虚空に向かってしゃべることになって,さみしいので,積極的に質問してください.

メールアドレス

shinichiroh_at_math.nagoya-u.ac.jp