偏微分の順序の交換

#初等解析

函数$f \colon \mathbb{R} \to \mathbb{R}$を,$f(0,0)=0$かつ原点以外で [ f(x,y) = xy \frac{x^2-y^2}{x^2+y^2} ] と定める. このとき,$f$は二階微分可能だが$C^2$級ではない. さらに,$\partial_x \partial_y f (0,0) = 1$かつ$\partial_y \partial_x f (0,0) = -1$である. 実際,極座標に移れば,$f(r,\theta) = r^2 \sin (4\theta) / 4$となって,原点を廻るとき四回波打つわけなので,$f$が二次曲面では近似できないことは不思議ではない.

しかし,ちょっと考えてみると頭が混乱する.

Step 1. 原点の外で$f$の二階微分を計算してみれば, [ \frac{\partial^2 f}{\partial x \partial y} = 1 - \frac{6y^2}{(x^2+y^2)}+ \frac{4y^2(3x^2+y^2)}{(x^2+y^2)^2} - \frac{16x^2y^4}{(x^2+y^2)^3} = \frac{\partial^2 f}{\partial y \partial x} ] となって,偏微分の順序に依らないように見える.

Step 2. また,$f$は連続なので,特に局所可積分であり,超函数と見なせる. 超函数は,いつでもどれだけでも微分できるし,いつでも順序が交換できる. だから,$f$を超函数と見たとき偏微分の順序が交換できたとして,何も問題はない.

Step 3. 頭が混乱する.

Step 4. 一時間くらい悩む.

Step 5. 函数$1 - \tfrac{6y^2}{(x^2+y^2)}+ \tfrac{4y^2(3x^2+y^2)}{(x^2+y^2)^2} - \tfrac{16x^2y^4}{(x^2+y^2)^3}$が原点で連続ではないことの真の意味を悟る.