本多勝一「日本語の作文技術」朝日文庫 2015
原則集
原則の前提となる観察(第二章)
- わかりにくい文章の実例を検討してみると,最も目につくのは,修飾する言葉とされる言葉とのつながりが明白でない場合である.原因の第一は,両者が離れすぎていることによる.
- 日本語の大黒柱は述語であって,いわゆる「主語」ではない.
修飾語の語順の原則(第三章)
- 節(一個以上の述語を含む複文)を先にして,句(述語を含まない文節)を後にする.
- 長い修飾語ほど先にして,短いほど後にする.
- 大状況・重要内容ほど先にする.
- 親和度(なじみ)の強弱により配置転換する.
- 節を先にして,句を後にする.
- 「厚手の白い横線の引かれた紙」ではなく「横線の引かれた厚手の白い紙」とする
- 「速く止まらずに走る」ではなく「止まらずに速く走る」とする.
- 長い修飾語ほど先にして,短いほど後にする.
- 「明日は雨だとこの地方の自然に長くなじんできた私は直感した.」ではなく,「この地方の自然に長くなじんできた私は明日は雨だと直感した.」とする.
- 大状況・重要内容ほど先にする.
- 「豊かな潤いをもえる若葉に初夏の雨が与えた.」ではなく,「初夏の雨がもえる若葉に豊かな潤いを与えた.」とする.
- 親和度の強弱により配置転換する.
- 「初夏のみどりがもえる夕日に照り映えた.」も「もえる夕日に初夏のみどりが照り映えた.」も上記三原則からは優劣つけがたい.しかし,「みどり」と「もえる」の親和性から,前者では「みどりがもえる」との誤読の可能性が生じる.よって,後者がよい.
読点の打ち方の原則(第四章)
- 必要最小限のテンだけを打つ.
- 長い修飾語が二つ以上あるとき,その境界にテンを打つ.
- 語順が,修飾語の語順の原則に照らして逆順の場合にテンを打つ.
- 強調のために,テンを打つ.
- 重文の境目にテンを打つ.
- テンを打つ,述語が先にくる倒置文の場合に.
- なんと,呼びかけ・応答・驚嘆などの言葉のあとにテンを打つ!
- 挿入句の前後または前だけに,このように,テンを打つ.
- 分かち書きを目的とするテンは一切打たない.
- 語順が,修飾語の語順の四原則に照らして逆順の場合にテンを打つ.
- 「修飾語の語順の四原則に照らして語順が逆順の場合にテンを打つ.」->「語順が,修飾語の語順の四原則に照らして逆順の場合にテンを打つ.」
- 強調のために,テンを打つ.
- 「強調のためにテンを打つ.」->「強調のために,テンを打つ.」
- 分かち書きを目的とするテンは一切打たない.
- 「あけまして,おめでとうございます.」とはしない.
- 分かち書きの代用としてはカタカナや傍点の使用がある.
目次
- なぜ作文の「技術」か
- 修飾する側とされる側
- 修飾の順序
- 句読点のうちかた
- マル(句点)そのほかの記号
- テン(読点)の統辞論
- 「テンの二大原則」を検証する
- 漢字とカナの心理
- 助詞の使い方
- 象は鼻が長い -> 題目を表す係助詞「ハ」
- 蛙は腹にはへそがない -> 対照(限定)の係助詞「ハ」
- 来週までに掃除せよ -> マデとマデニ
- 少し脱線するが・・・・・・ -> 接続助詞の「ガ」
- サルとイヌとネコがけんかした -> 並列の助詞
- 段落
- 無神経な文章
- 紋切り型
- 繰り返し
- 自分が笑ってはいけない
- 体言止めの下品さ
- ルポルタージュの過去形
- サボリ敬語
- リズムと文体
- 文章のリズム
- 文豪たちの場合