真面目かつ優秀な学部四年生がゲージ理論を勉強したいと言ってきたら,大体こんなことを答えている.
Donaldson理論 or Seiberg-Witten理論
数学でのゲージ理論にはDonaldson理論とSeiberg-Witten理論がある. いずれは両方勉強することになるのだが,強いこだわりと信念がない限り,Donaldson理論から学ぶ方が結局は早いと私は思う.
Donaldson理論をどこから学ぶか?
Donaldson理論を学ぶためには,最初にFreed-Uhlenbeckを読むのがよい. これはゲージ理論の幾何解析のバイエルであり,基礎技術が全て詰まっている. 例えば,Uhlenbeckのrearrangement論法や貼り合わせのときの$\sqrt{\lambda}$など.
Donaldson-Kronheimerはもちろん素晴らしい教科書だが,あまりに浩瀚なので,最初に読む本としては薦められない.
Freed-Uhlenbeckの目標は,Donaldsonの対角化定理の証明であり,それはDonaldson理論の出発点にして金字塔である.
Freed-Uhlenbeckを読むためには何を知っていればよいか?
微分幾何では,例えばTaubesの教科書に書いてあることが分かってれば,全然足りる.
大域解析では,Atiyah-Singerの指数定理を理解していればよいが,それは必須ではない. 調和積分論を証明込みでわかっていればよく,WarnerのGTMで十分である.
Understanding/Mastering Analysis in Topology, necessary?@MathOverflowでのMrowkaの回答を参照のこと.
I am very sad. We wrote “Monopoles and Three Manifolds” with the idea that a good graduate student who had read something like Warner’s book through the chapter on Hodge theory could reasonably read much of the book. Oh well.
Tom Mrowka
しかし,Donaldson理論を本気でやるならいつかは族の指数定理まで理解する必要があると注意しておく. (特に族の指数の構成のアイデアそのものが重要である.)
Donaldson理論の三種の神器
次の三つがすらすら使いこなせるようになれば,ゲージ理論の黒帯は近い:
- Uhlenbeckのアプリオリ評価と特異点除去定理
- Uhlenbeckの計量摂動の議論
- Taubesの貼り合わせの技法
その後の勉強はどうするか?
2018年現在はHitchin方程式を勉強してみたらどうかと薦めている.