ファイル更新日:2022年05月24日
  
教育・就職
■2022年度■
●「数理の香」コロキウム
「多元数理」という大きなゼミナールを実現する目的で,4年生・大学院学生向けの談話会を開催します.数理学科および多元数理科学研究科の学生向けの催しです.
- 数理科学におけるトリヴィア(trivia),豆知識,雑学から話を始め(導入);
- 関連する数理科学の基本概念と初等的な参考文献を提示し(発展);
- その先にあって,修士論文(さらには博士学位論文)のテーマにつながる話題を提供します(展望).
一回きりの講義,ゼミナール,さらにはチュータリングという形式を念頭におき,学問的な内容に限らず,学生さんが大いに関心をもつ様々な事項(例えば将来のキャリアパスなど)に関する情報提供(雑談)も行い,また参加者が自由に質問できる機会を設けます.
- このコロキウムは数理学科/多元数理科学研究科の学生向けに開講されています.一般の方の聴講はできません.
次回の講演
第4回「数学役にたちますか?」
- 日 時
- 2022年6月8日(水) 15:00〜16:30
- 会 場
- 多元数理科学棟 509講義室
- 講演者
- 大平 徹 (名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
- 要 旨
表題の質問は,大学を数学で専攻した人には,卒業後も様々につきまとう質問になると思います.文学と並んで長い歴史をもつ人間の文化活動の一つでありながら,実社会での評価は今一つというところではないでしょうか.しかし,実は科学技術を下支えする「言語」として数学は重要な役割を果たしてきています.特に現在話題になっている,機械学習,データサイエンス,量子コンピュータなどではより高度な数学がどんどん必要とされてきています.ここでは,現代的,現実的なトピックとして,数学教室の出身者の教養として知っておいた方がよいと思われる,感染症の数理,公開鍵暗号の仕組み,渋滞の数理などの概観を紹介するとともに,修士論文や博士論文の種になりそうな事例をいくつか示します.また,私は企業に長年いたので,そのあたりの経験についても少し触れます.数学的には高度な話はしませんので,学部2年生以上の方々であれば理解できると思います.
過去の講演
第3回「円板上のポアンカレ指数公式と流体力学」
- 日 時
- 2022年5月18日(水) 15:00〜16:30
- 会 場
- 多元数理科学棟 509講義室
- 講演者
- 森吉仁志 (名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
- 要 旨
閉曲面上に孤立した零点のみを有するベクトル場が与えられたとき,零点におけるベクトル場の指数(整数)の総和が閉多様体のオイラー数に等しいというポアンカレ・ホップ指数公式は,位相幾何ではよく知られている.しかしこの結果に先立ってポアンカレが示した,(境界がある)閉円板上で成立つ指数公式は余り知られてないように思われる.
ベクトル場は円板の境界を少しだけ超えて定義されており,零点はその内部にあって孤立しており,積分曲線は有限個の点で境界に接していると仮定するとき,零点におけるベクトル場の指数和は$1 +(i-e)/2$に等しくなる(積分曲線に関して,$e =$境界における外接点の個数,$i=$境界における内接点の個数とする).これが閉円板上のポアンカレ指数公式である.この公式の証明を位相幾何的に再考し,さらに流体力学的な解釈がベクトル場の位相的性質を理解するために大いに役立つ様子を示したい.
第2回「平面曲線とソリトン」
- 日 時
- 2022年5月11日(水) 15:00〜16:30
- 会 場
- 多元数理科学棟 509講義室
- 講演者
- 森吉仁志 (名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
- 要 旨
平面曲線は,かつては1年生の微積分学に含まれる学習内容であった.現在は学部3年生レベルの幾何学に含まれると思われるが,現代的な幾何カリキュラムではあまり扱わないかもしれない.しかし縮閉線(evolute)・伸開線(involute)や包絡線(envelope)の概念とともに平面曲線は微積分学の揺籃であり,知ると楽しくなる数学対象である.どのように開いても刃の成す角度が一定であるハサミはベルヌーイの螺旋で与えられるという事実から始めて,いくつかの平面曲線に関する視覚的体験を提供する.また,等積アファイン曲線という平面曲線の族を考えると,曲率方向に変化する曲線の運動が,非線型波動方程式の一つであるKdV方程式を与えることを導き,平面曲線がソリトンと密接に結びついている様子も示す.
第1回「オイラーのコマと測地線方程式」
- 日 時
- 2022年4月13日(水) 15:00〜16:30
- 会 場
- 多元数理科学棟 509講義室
- 講演者
- 森吉仁志 (名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
- 要 旨
外力が働かない剛体の運動(あるいはその剛体)をオイラーのコマとよぶ.
無重力状態で運動する剛体はその一例である.
宇宙船内で生じる不思議な回転運動を映したビデオから話をはじめ,その運動を記述するオイラー方程式が,回転群$SO(3)$上の測地線(2点間の最短距離を実現する曲線)を与える方程式であることを導く.
この解釈(アーノルドによる)を無限次元の群(微分同相群)に延長すると,KdV方程式などの非線形波動方程式へつながってゆく.
同様に,無限次元の対象(多様体)を考えることで,回転群$SO(3)$上の力学を拡張した南部構造につながる様子も示す.
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