数学通論授業日誌

授業は、進度予定表春進度予定表秋まとめと宿題に沿って行う。 まとめと宿題、教科書の該当箇所は事前に印刷し、目を通しておく。 宿題の解答例も参考に。
どうも統計の授業がない予感。伝統的な統計が大事かどうかは措くとしても、 データを扱う上での基本的な考え方や手法は極めて大事であり、高校での扱いも漸く改善の兆しあり。
一方で、大学でのカリキュラムは、個別の実際的な部分への対応を急ぐあまり、 肝心の原理・原則をないがしろにしているような。 流行を追いかけることはできても流行を作り出すことはできなくなりつつあるか。
相変わらず上への忖度はひどくなる一方で、肝心の教育の土台が根腐れ状態では、 見かけの最先端対応が高転びするのも時間の問題か。
ぼーっと生きていられる状況にないことだけは確かである。さて、どうするか。

宿題をなぜ評価しないかの理由を書いておきます。
一部例外的な人を除いて、いくつかのオリジナルな解答の書き写しが横行するから。 しかも大部分はオリジナルの劣化コピー。お互いに時間の無駄であるだけでなく、 それを悪いこととも思わなくなるモラルの低下がより深刻かもしれません。
宿題を評価の対象から外すのはそれを避ける意図からです。
しかし、これだけはなくなりません。他人の書いたものを意味もわからず機会的に書き写すという、 人を駄目にする行為を続けるよりも複数連名で一つの宿題をレポート提出する方がどれだけ有意義か知れません。


4月11日

川面を埋める桜花はどこに流れつくものやら、御岳日和。

べき関数、指数関数、対数関数の増大度の比較、これは高校でもやろうと思えばできる話ではあるが、 理由はともかく、どの程度の感覚のものであろうか。

曽呂利新左衛門を知るものは如何程なりや。 秀吉の時代にして既にそういった知的土台があったということで、それが故に公的インフラの整備も可能であったのだろう。
米粒の計算は、自分でもぜひやってみて欲しい。人の計算を信用しないでやってみる。

関数の増大度のスピードの違いは、覚えるというよりは感じ取るもの。 そのためには、沢山の計算例をこなすか、違いの理由(証明)を調べる。これは銘々が行うべきことで、 指示されてするようなことではない。
スビードの違いがわかれば、極限計算に応用することも、関数の端での様子を正しく認識することも可能。

4月18日

積分の意味と基本的な性質を確認しました。 また具体的な計算の際の指針についても述べました。 指針通りにいかない場合も多々あり、悩ましいのですが。
宿題を提出際の注意点として、箱のラベル(科目名)の確認を忘れずに、締切日(次週月曜13:00)の厳守。

4月25日

今日は定積分の拡張としての広義積分でした。 いわゆる広義積分には、良いものと悪いものの2種類があるのですが、ここでは専ら良いものを扱いました。 普通の定積分でも変数変換により(良い)広義積分が現れることがあるので、これもまっとうな積分と呼ぶべきものです。

広義積分で表される回転体の体積の応用として、ガウス積分の公式を導きました。

問3.2の訂正と補足説明、正しい等式は \[ \frac{1}{\sqrt{2\pi \sigma^2}} \int_{-\infty}^\infty e^{-(x-\mu)^2/2\sigma^2}\, dx = 1 \] で、この場合の平均と分散とは、 \[ m = \frac{1}{\sqrt{2\pi \sigma^2}} \int_{-\infty}^\infty x e^{-(x-\mu)^2/2\sigma^2}\, dx \] \[ \frac{1}{\sqrt{2\pi \sigma^2}} \int_{-\infty}^\infty (x-m)^2 e^{-(x-\mu)^2/2\sigma^2}\, dx \] のことです。

連休明けに1回目の試験です。説明した内容、宿題を中心に復習しておいてください。

5月09日

曇天の中、母の日を前にして何を思う。

今日は、軽く復習の後に中間アンケートを行い、予定通り 1回目の試験をしました。採点してみての感想を少しばかり。
$\fbox{1}$ では、$\lim_{x \to +0} y' = 0$ について言及している者は極めて少数でした。
$\fbox{2}$ では、部分積分の怪しいものがかなりの数に。 これは、高校(予備校)での(大学でも?)教え方が悪いのですが、心当たりの方は、 積分の技法 で早目の治療を、是非。

5月16日

晴れて緑もまぶしく、いよいよ終わりの始まり。

今日は、空間の幾何と題して、平面の方程式をひとしきり。
高校の数学から消えて久しい(?)のですが、これは最大の誤りと個人的には思っております。 ベクトルを知っていれば難しいことはないのですが、 この式を使って図形を調べるということを人間の直感が効く3次元まで何故にしないのか、 まったくもって不可解です。
とは言っても、これだけを丁寧にするわけにも行かず、計算練習は最小限度に。

試験の結果の見方:原則として、各大問ごとに、○(2点)か✕(0点)の二分法です。 ただ、迷う場合は△(1点)となります。
答案は返しませんが、見たい方はオフィスアワーかメールで appointment を。

最後に大事なお知らせです。授業のスケジュールが一部変更になりました。 7月11日(木)は休講になり、7月20日(土)に補講(宿題はなし)となります。 進度予定表を新しいものに替えておいたので、確認しておいてください。

5月23日

晴天が続くようで、今年も酷暑の予感。

今日は、(空間)直線のパラメータ表示、連立一次方程式の幾何学的意味。
それと、平面における座標変換、2次式の標準形でした。
三平面の位置関係で、三角柱の側面を構成する場合(解なし)が抜けておりました。 まとめとテキストは直したものと替えてあります。

今日の宿題ですが、以下の修正を施しておいてください。
問5.1 直線 $L$ のパラメータ表示を求め、云々。
問5.2 二次式の係数を $x^2 + 2xy + 3y^2$ に変更。

6月06日

いよいよ夏を予感させる梅雨前の暑さかな。エアコンの試運転に助けられつつ。

先週は事情により休講だったので、今日はその代講で、重積分とくり返し積分をしました。
数学的にきっちり説明するのはかなり骨が折れるし、先達もそこは程々に、具体的な適用範囲を広げることで、 様々な応用・発展が図られたという歴史にしたがい、おおまかな意味と具体的な計算の hybrid 構成でした。
まずは形から入るということで、意味を押さえつつも、具体例で計算練習を。

本日予定の二回目の試験は、持ち帰りで実施とします。 万一、事情があって本日の授業を欠席した方は、速やかに連絡を。

来週木曜日は、大学祭の準備のため、授業はありませんが、午前中を学習相談日としますので、 授業に遅れがちの人は是非ご利用ください

6月20日

今日は梅雨の中休みか、前線は南海上に、ぶどうも粒も目立つほどに。

前回の重積分を受けての偏微分。今日もしつこく重積分を使って微分の順序交換。 密度と積分の関係は、教養の授業で取り上げられること稀なれど、圧力と力、質量と密度の関係とか、 ごく普通に現れる。確率・統計であれば、確率密度というものもある。
続いて一次近似式と chain rule (合成関数の微分)。 ここにもベクトルの内積が現れ、 こういったものが多変量のデータ解析に連なっていく、などということは、どうでもよいことであろうか。

静かに蓄積される地震のエネルギーと末法の蔓延。 批判の理性もどこかに消し飛んで、訳知り顔に未来ありや。

都合により6月26日のオフィスアワーはありません。

6月27日

ようやく梅雨らしく、蒸すような雨。

前回を受けて、極値点の候補としての停留点が連立方程式の解として捉えられること。
求めた停留点が実際に極値点であるかどうかを調べるために、二次近似式を求め、 その符号を調べました。大きく4つの場合、(i) 極小点、(ii) 極大点、(iii)鞍点、 (iv) それ以外、となります。 関数のグラフでいうと、(i) は谷底、(ii) は山頂、(iii) は峠、にそれぞれ対応します。

取り上げた例の説明が少し不正確だったので、以下に再録しておきます。
$f(x,y) = (x+y) e^{-x^2-y^2}$ を $x$, $y$ で偏微分すると、 \[ f_x = (1-2x^2 -2xy) e^{-x^2-y^2}, \quad f_y = (1-2y^2 -2xy) e^{-x^2-y^2}. \] これから、停留点は $(1/2,1/2)$ と $(-1/2,-1/2)$ の2つであるとわかります。
次に二次の偏微分を計算すると、 \[ f_{xx} = (-6x - 2y + 4x^3 + 4x^2y) e^{-x^2-y^2}, \quad f_{yy} = (-6y - 2x + 4y^3 + 4y^2x) e^{-x^2-y^2}, \quad f_{xy} = f_{yx} = (-2 + 4xy)(x+y) e^{-x^2 - y^2} \] となるので、$(x,y) = \pm(1/2,1/2)$ を代入して、 \[ f_{xx}(1/2,1/2) (\Delta x)^2 + 2f_{xy}(1/2,1/2) \Delta x \Delta y + f_{yy}(1/2,1/2) (\Delta y)^2 = e^{-1/2} ( -3 (\Delta x)^2 - 2 \Delta x \Delta y - 3(\Delta y)^2), \] \[ f_{xx}(-1/2,-1/2) (\Delta x)^2 + 2f_{xy}(-1/2,-1/2) \Delta x \Delta y + f_{yy}(-1/2,-1/2) (\Delta y)^2 = e^{-1/2} ( 3 (\Delta x)^2 + 2 \Delta x \Delta y + 3(\Delta y)^2). \] したがって、符号の判定条件により、$(1/2,1/2)$ は極大点(実は最大点)、$(-1/2,-1/2)$ は極小点(実は最小点) であることがわかります。

来週は、3回目の試験です。授業で取り上げた例と宿題を復習しておいてください。

2回分の試験の結果を掲示しておきました。ご確認ください。

7月04日

梅雨も盛りというのか終盤というのか、前線は南岸沿いを上がったり下がったり。鹿児島方面が気がかり。

偏微分、一次近似式、二次近似式を復習して、3回めの試験をしました。

来週は都合により休講で、再来週は土曜日にその補講(C14, 14:45--16:15)となります。内容も少し変更する予定です。

[試験の講評] 易しかったはずです。易しすぎたかも知れません。 ただ、$\fbox{1}$ (i) で、式だけの答案があまりにも多すぎました。
この設問は、サービスのつもりだったのですが、書くこと説明できることの大切さをどうか日頃から認識してください。 これがごく自然というか苦もなくできるかどうかが、3年後の明暗を分けます。 説明することのみの問題を期末試験で、再度問うてみたい気分にはなりました。

7月18日

いいかげんいやになる程に、雨空は続く。気温も上がってきて、夏空は那辺にありや。

今日は一変数の場合の高次近似式にからんでテイラー展開。 通常は2回に分けて説明する内容なので、少し飛ばし気味だったかも知れません。 ただ、単刀直入という面もあります。
例は近似計算と極限計算。昔の人はやって今の人がやらないものにこの手計算があるような。 良し悪しは別にして。
宿題をお忘れなく。都合により、これが最後になります。

明日(土曜)は補講、14:45-16:15, C14 だったような。

7月20日

台風は対馬方面にそれて、曇天の蒸し暑さ、相撲もいよいよの試験前。

一次近似式から接平面への移行話をひとしきり。 当初予定していた条件付き極値は省略、すなわち試験範囲外。 まとめの資料を更新しておきました。

最後にグラフとしての曲面の場合の例を挙げて、授業アンケートで締めました。

来週の試験範囲ですが、新たなところから2題。過去の試験範囲からも2題。 過去の試験範囲については、この日誌に書いてあることから忖度。
いうのを忘れてましたが、明日は選挙。 誰を選んで良いかわからない、という声もあるみたいですが、実はそんな大げさなものではなく(かなりのコストがかかっている ことは事実なれど)、授業アンケートに準じた気楽な気分でぜひどうぞ。
ということで、授業アンケートも実施しました。焼け石に水か、はたまた糠に釘、もっと意地悪く馬耳東風かも。 日頃から、言いたいことは言うべきで、おかしいことはおかしいと言う健全性が失われた先に待っているのは、・・・。

7月25日

どうやら梅雨が明けたようで、猿も紅白の彩りをそえて。

今日は、最後の試験をしました。 先週の授業2回分が、個人差はあれどやはり消化不良の予感。
部分積分への対応の悪さは、高校・予備校・大学を通じて広く蔓延している指導のまずさに由来することを強く実感。 ものすごい損失であるか。

結果の掲示をいつものところに。今回の成績に疑問点ある場合は、8月2日(金)までに、メールで連絡を。

それでは今生のはかなき夢を、次は秋風の頃にまた。

10月2日

10月とも思えぬ蒸し暑さ、海水温も高く、さんまは何処。

ここから数学通論IIです。授業としても内容も独立してますが、私の気持ちとしては、前期の続きといいますか、 両面のうちの片面半分といったところです。

今日配ったスケジュール表にあった「まとめと宿題」の URL が仮のもののままでしたので修正しておきました。 いまご覧のこのページからは正しい場所にたどり着けます。

本日は、行列の導入とその計算でした。足し算と定数倍は分かりやすいのですが、掛算が曲者で、説明に悩む所。 ここでは、変数変換としての一次変換でしてみました。これがもともとケイリーさんがたどり着いた道筋です。
一次式の代入から行列の積を導きました。世間に多い説明は、一次変換を線型写像と捉えるものですが、 それはもっとずっと後になってわかった説明です。
初めての行列の考え方ですが、新しいおもちゃ(ゲーム、パズル?)と思って、いろいろ試しいじってみてください。

10月9日

初めての秋晴れと言ってよいか、空も山も遠くまで。

今日は、正方行列についてあれこれ実例とともに。 行列のべき、連立一次漸化式、回転の行列など。
他に、転置行列についても一言。これは後の方で必要になるもので、その頭出しとして。

来週は、早くも1回目の試験。お忘れなく。

10月16日

ようやく気温も落ち着き、鈴鹿の山並みもくっきりと。

1回目の試験をしました。
ほぼ出来ていたということもあり、講評はいたしません。
今週は授業がありません、オフィスアワーもありません。 次回は行列式です。

10月30日

雨上がりの秋晴れ、なれど気分は下降ぎみか。舌が。

行列式の導入と列についての性質。行列式の幾何学的意味ここで多少なりとも親んでおくと次が楽。

1回目の試験結果を掲示しておきました。

11月6日

すがすがしくも秋の空。残照の空にあづけし柿ひとつ、であるか。
季語か何か知らないが、秋はさわやかというべし、としたり顔でいう人が多いが、くだらんことだ。

行列式の2回め、帰納的な定義の仕方と、性質をひとしきり説明しました。 証明はあえてしませんでしたが、気になる人はテキストをご覧ください。それなりの手順が必要になります。
それよりも基本的な性質を使って具体的な行列式の計算を練習しておいてください。来週の試験問題の一つとなります。

早いもので、次回は2回めの試験+授業アンケート。

11月13日

風も陽も穏やかに、西の山なみに思う、雪雲の一すじ二すじ。

簡単な復習のあとで、 2回目の試験をしました。
常のごとく説明に手こずる人多く、それでも計算と合せて一本。
これもお約束の4次行列式でしたが、今回は極めて独創的な計算を試みる人一名。 点数にはならなくとも何となくの期待感。

11月20日

いよいよ紅葉も末の空の青さと高さ。

今日は連立一次方程式の掃き出し法、九章算術。 加減法を係数だけでやりくりするだけ。ポイントはゴールが何かを認識すること。 ということで段々行列 (echelon form)。
解の表示に関連して、ベクトルの一次結合・一次独立、部分空間と基底。

11月27日

生暖かい雨上がりの末の中日、人もまばらに。

今日は変則的な補講日の中、ゆるゆると逆行列と行列代数の基本定理をひとしきり。
ランクと逆行列の関係をもう少し説明すべきところを、 最後は一次変換とその逆変換についてのお話で締めて。昼に備えるもその甲斐なく。

12月4日

記録をする気力も失せることあり、めぐる思いのはざまで。

12月11日

相変わらず気温高めにうすく晴れて、初七日もすぎ。

いつもの復習のあとで、3回目の試験をしました。

巻き出し法で明記するも無視するもの多数。人の思いを受け取れぬことの悲しく。
固有ベクトルの何たるかを自覚せぬは、教え方のせいなりしか。 技術の伝承もおぼつかなく、先々の惨状みるにしのびなく、早々と命仕舞いにしくはなきか。

問題2を期末試験で再度問うことにします。

12月18日

昨日来の雨もようやく止むも湿度も気温も高めに、残ったいちょうの葉の敷き詰めを促して。

数ベクトルの内積とその不等式でひとしきり。
ノルムの三角不等式との関係、角度との関係。
組データを調べる上での基本量である、分散・標準偏差・共分散・相関係数について一通り。

1月8日

日本海を低気圧が東進中で、雨のち晴れ、の温い一日。

前回の内積の復習の後、正規直交系と正規直交基底。それと部分空間による直交分解(射影定理)。 最後に、正規直交基底の行列表現としての直交行列。 これは座標変換の行列とも思えるのですが、それについては最終の授業時に、改めて。

来週は4回目の試験です。いつもの倍の時間と点数。

1月15日

穏やかな天気はありがたいことなれど、記録的な高温状態が続いていることの不気味さよ。

4回目の試験と授業アンケートをしました。 直交分解は、宿題として出すべきだったか、という出来でした。 それでも、欠席者も含めて全員合格点に達していたようなので、これで良しとしよう、またはやって来ないので。 濱田君謹製の解答集を、この日誌の上部に貼り付けておきました。

最終の成績を掲示しておきます。疑問点がある場合は、今月中にメールにてお問い合わせください。

1月29日

雨上がりの空に気温も上がり、春風にのって pandemic の脅威もまた。

期末試験真っ只中の授業、4人の参加者(実質は0か)に、最後の授業。
もっとも直接的な対称行列の対角化でした。 もう少し華やかな終わり方もあったような気もしますが、もったいなくも儚くも、幻のごとく。 深いため息とともに。


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