下手な講義といえども、あれこれ準備はしてるんだな、わからないだろうけれど。
それで、はたと気づいたことが、ルベーグ積分と函数解析の間の思わぬギャップ。
何かというと、可積分関数の連続関数による近似。まともな本であれば書いてあることなんだが、
ルベーグ積分の授業でそこまでやることは稀なのではないか。
ちょっと鬱陶しいし、時間もないし、収束定理の使い方のお稽古もあるし。
一方、関数解析の授業としては、この連続関数の濃密性(density のことね)というか測度の正則性というか、
そういったものは、当たり前だね、知ってるね、という前提で話を始めてしまいがちなんだな。
やはり説明しだすと面倒だから。
しかし、まともな数学の学生であれば、大いに戸惑うのではなかろうか。
というか、困惑しないようでは、数学の学生と言えないな。
言われたことを、そのまま、はいはいそうですか、と頷いているようでは。
うーむ、困った。せめて、ギャップの存在を指摘した上で、各自勉強して隙間を埋めておいてね、とでもするか。
そもそも、測度中心で積分をやるからこういうことが起こるんだな、やはり Riesz の偉大さよ。
Daniell 積分で埋めたかったら、
ルベーグ積分速講。
おっと、怪我の功名、この隙間の存在が意識されているかどうかで、関数解析の本の判断材料になり得るか。
かなりの数の本が失格のような気がする。怖いことだ。
次はウィーン大学の Gerald Teschl 先生の160ページほどの講義ノートであるが、
この授業の内容を扱っているだけでなく必要な予備知識も提供してくれる。
記述の仕方は親切かつ明解であり、
気のあった仲間でゼミでもすると下手な授業を聞くよりはよっぽど有意義な時間を過ごせるであろう。
上で指摘した隙間のところもしっかり認識して書かれているし、
ヒルベルト空間のテンソル積まである。お薦めである。
Topics in Real and Functional Analysis
by Gerald Teschl.
一応、この授業の講義ノートも挙げておくか、 関数解析入門2011 と 進度予定表。
今日は、距離空間についての復習をし、バナッハの不動点定理とその応用を課題として挙げました。
途中のアンケートは、ある程度予測の範囲内とはいえ、参考になりました。
完備化とルベーグの収束定理がちょっとした関門であることが見えてきましたが、さてどうしたものか。
確認です。個人的(?)事情により試験を受けられなかったときは、課題レポートの方で点数を取って下さい。 それも困難な場合は、ご相談下さい。
教えて厳ならざるは師の怠りなり、という。 我が身を振り返り、厳ならざるところを反省すると、学生は迷惑であろうか。
今日は、ノルム空間の定義から始めってバナッハ空間の基本的な例をいくつか説明しました。
$C(X)$, $\ell^p$, $L^p(\Omega,\mu)$ は基本的ですが、あとでの扱いはそれほどでもないかも知れません。
とりあえず、概念を理解するための素材と理解してください。
今日の内容では、完備性が鍵となる概念ですが、
$L^p$ の完備性 (Riesz-Fischer) の証明の準備のところでの不備は、来週(の9時前に)改めて補足することにします。
既に答えを見つけた人もいたようですが。
講義ノートは、いろいろ改善すべき点も残っているので、ツッコミを入れていただくこと大歓迎です。
$\ell^\infty$ が可分でないことの証明は、$\{0,1\}^{\textbf{N}}$ が非可算集合であることを使えばわかります。
課題については、ノルム空間の完備化への挑戦(?)を勧めます。自らあれこれ考えることは、とても貴重な経験となるでしょう。 是非是非、己の手で実感してみられますよう、仮にうまくいかなくても。
いやー、今回はいろいろなことが重なってしまい、しんどかった。とくに年寄りには。
さて、近似定理である。近似定理といってもいろいろなものがあるが、
ここでは可積分関数を性質のよい関数でノルムに関して近似するおはなし。
関数解析としては、Stone-Weierstrass の近似定理ということになる。
Weierstrass の近似定理では、多項式であることが強調されるようであるが、それは内容の本質ではない。
一般の場合の証明というのもさほど難しいわけではないので、それを紹介してみてもよかったのであるが、
少しでも具象を心がけたいということで、あと微分方程式への応用とかも意識して、
ここでは近似デルタ関数とたたみ込みの方法を採用してみた。
ただ、具体的であるのは良いのであるが、色々と計算のチェックも必要になったりするので、
ゆっくり長く登る、といった感じになり、その分、準備が必要になるのだが、泥縄式のあらが目についたようである。
多項式近似のために使った近似デルタ関数が、原点集中の性質を満たすことは、
チェビシェフ不等式を使うとよい。分散を評価しないといけないので多少の積分計算が必要であるが、
球面積分なので、これを機会に知っておかれるとよいだろう。ガンマ関数の復習にもなる。
講義ノートの方で、随時改訂のつもりでいるが、あまり頻繁は迷惑かもしれないので、 少しまとまってから上げることにしよう。 それとは別に、ノートのミスプリ、勘違い、ギャップなどの指摘は随時受付中。メールいただければ、ありがたい。
ちょっと、ひとり言。 $L^p$ は、あまり取り上げるつもりはなかったのだが、カリキュラムのどこかにしっかり書いてあって、 無視するのも何なので、入れてみたのだが、やはり意に染まぬことはするものではないな。 人から話を聞くべき内容と(本とかを見ながら)自分でやってみないとしようがない内容とあって、 $L^p$ は、このあとの方なんだな。位相空間とか測度もそんな感じ、ぶつぶつ。
もっと早く出してもよかったヒルベルト空間。 今日のおもなところは、直交関数系の紹介と直交分解定理。どの教科書にも書いてある軽めの内容なれど、 馬鹿にはできない。フーリエ級数展開を関数解析的に扱うところも、比較的楽な部分ではある。 デリケートな問題とかは、もう少し関数の実態に配慮した硬派の解析が必要で、あえて触らぬ親心。
ヒルベルト空間の次元が確定するところは、 大雑把にいえば、個々のベクトルを支える基底の元がベッセル不等式から高々可算であること、 可算無限は、すべての無限集合に含まれていることによる。 実際のところは、可分な場合=可算次元、でたいていの用には足りる、ということもあり、これも深入りしないでおいた。
苦しい時の米百俵、などと思いつつも、溶け落ちる国家もまたと連想してしまう悲しさ。 不測時にわかる、人の価値、noblesse oblige は、一朝一夕のものに非ず。
最後にお知らせ。5月17日(火)のオフィスアワーは、事情により中止します。
今日は、線型汎関数その一をしました。前回の直交分解定理をうけて、
いわゆるリースの補題(リースの表現定理ということもある)が主な内容ですが、それに至る多少の背景というか、
復習というか、そういったところもまぶしてみました。
うなぎは、江戸風がうまいな。つけ焼きだったら、家でもできるし。
有界線型汎関数という言い方が、有界関数という言い方と整合性が取れていないという指摘を受けました。 たしかにその通りではあるのですが、連続といわず有界という言い方を多用する弁解をしておくと、 無限次元ベクトル空間の場合、仮にノルムが指定されていても、それ以外の位相を考えることがよくあり、 単に連続では、どの位相に関してなのか紛らわしいから。 まあ、ノルム連続とかいえば済むことではありますが、慣れもあって有界ということが多いことと思います。
リース繋がりで、Radon-Nikodym もしましたが、こちらは、確率論とかで必要になることでしょう。
世間でラドンといえば、放射性元素のことであろうか、ラドン温泉のあれである。元素のラドンは、ラテン語の radius が語源(放射するもの、半径と同じだ)らしいが、数学でラドンといえば、 Radon-Nikodym theorem, Radon measure, Radon transform 辺りがよく目にするところか。 測度とか積分に関係した内容であるが、どうも実際に研究した内容と命名された事柄と多少ずれがあるようだ。 今回取り上げた結果は、通常 Riesz-Markov と呼ばれているもので、正線型汎関数を位相的な測度として 表示するものであるが、いいかげんに調べた範囲では、
さて、その Riesz-Radon の表現定理であるが、大事な点は測度ではなくて積分だ。 通常の教程だと、ルベーグ積分は、測度の構成を経て行うので、 講義ノートもそれに配慮して、外測度をつくって見せたのであるが、 それが良い理解のしかたかどうか。というのは、測度の構成が目標なのではなく積分表示が目標なので。
同じ手間暇をかけるのだったら、最初に積分の定義をしてしまうのがどれだけ楽か、Riesz-Radon とも相性がよいし。
ラドン個人については、 Johann Radon (1887--1956) とか。
そうそう、来週は、試験であった。
30分程度復習してから、
9時半ー11時の予定。
ノルム空間・バナッハ空間・双対空間、
近似デルタ関数の具体例、正規直交基底
の辺りを復習しておくと幸せになれるかな。
前半レポートの締切りも6月2日。名大祭はそのあとで。
前半部分の試験をしました。約20名の出席でした。登録者は50名を越えていたので、少ないと思うべきか、
こんなものと見るべきか。受験率の低さもさることながら、答案を見ての感想は、
ひとり芝居。残念ながら空転していたようです、多くの方にとって。
個人的には、この段階で、話を手取り足取りしてもしようがないと思っていることもあり、
あまりしつこくしない方針ではあったのですが、いろいろと考えさせられました。
やはり、試験はしてよかったと思うことにしましょう、お互いに。
ひとつだけ。完備でないノルム空間として有理数体上のベクトル空間を挙げている人が多かったのですが、
$\ell^\infty$ とかの部分空間で示して欲しかった。
これも予期していたことですが、レポートの方は、課題を選べたということもあるのでしょうが、
試験よりも良い成績だったと思います。
結果は、近々掲示する予定です。お楽しみに。
前回の試験について、簡単な解説をしてから、 線型写像のノルムの話をしてから、 Baire の定理、一様有界性の原理、Banach-Steinhaus の定理、それとちょっとした応用について説明しました。 暑さで頭がやられていたせいか、レポート課題を出すのを忘れてしまいました。 これについては、次回の復習コーナーあたりで説明したいと思います。
前半の成績(点数は、レポート、問題1,問題2、問題3の順です)を3階の掲示板に掲示しました。 とくに、前半の評価が3点以下の方はご注意下さい。
以下ひとり言。速さでは codecogs だが、見栄えは mathjax であるか。 おっと、今日はさくらんぼを供える日であったよ。何度目の桜桃であるか、早いものである。 国産はまだであるが、cherry でがまんがまん。あこがれのひと粒ふた粒、無念の涙。ぶつぶつ。
今日は、ヒルベルト空間上の有界線型作用素の用語についての説明(復習?)が中心でした。
エルミート共役に関係した、いろいろな種類の作用素についてでした。
エルミート共役が存在するところで Riesz lemma を使うのですが、
これはそうしないといけないというものでもありません。
前ヒルベルト空間上の作用素 $S$, $T$ が互いにエルミート共役である、ということを
\[
(S\xi|\eta) = (\xi|T\eta)
\]
が成り立つことと定義すればよいだけなので。
また、このようにしておけば、非有界作用素を扱う際にも使えることになります。
ほぼ形式的な内容でしたが、閉部分空間と射影作用素の対応関係は大事です。
これは、代数的および幾何学的意味においても。
あと、等距離作用素とユニタリー作用素の違いの認識。これは、無限次元特有の現象です。
レポート用の課題6と課題7についても説明しました。
早めの準備を心がけられますよう。
梅雨の中休みというのでしょうか、炎暑の予感。
例によって、最初に前回の復習、とくにユニタリー作用素について要点を確認した後、 フーリエ変換です。フーリエ解析の基本概念であり、フーリエ解析そのものも、 数学の中の基本の一つ、大きな交差点になっているのですが、 実際の扱いはどうでしょうか。まあ、道具には違いないのですが、道具以上の何ものかが潜んでいるのも事実で、 単純に解析の一分野にとどまらない、というのがその実態です。 双対性がキーワードであるような。
今日の目標は、フーリエ変換を $L^2$ 空間のユニタリー作用素として解釈するというもので、
Plancherel の定理です。次の等式に集約される内容です。
\[
\int_{-\infty}^\infty e^{ix\xi}\, dx = 2\pi \delta(\xi).
\]
残念ながら、この Dirac の関係式(と呼んでいいのかな)には触れませんでしたが。
興味あるかたは、是非どこかで補ってみて下さい。
具体例はあまりできませんでしたが、いろいろな面白い等式を含んでいます。
また、エルミート多項式が直交基底をなすという事実も、
この応用として導いてみました。これそのものは、他にも証明のしようがありますが、
いずれにせよ自明ではないことには変わりありません。
エルミート多項式は、課題にも出しましたのでいろいろと研究してみて下さい。
フーリエ変換との関係でいえば、フーリエ変換の固有関数になっているという辺りです。
今日も夏空広がる猛暑日なれど、梅雨はまだ続く。
有界作用素のスペクトルの簡単なところをした。昨晩の疲れ去らず、綻び見えるも何とか。 比較的素直な議論で済む話でもあり、人の証明を見るよりは、自分で考えた方が早いかも知れぬ。 理解するためには。
掛け算作用素のスペクトルを同定することは、$\epsilon$-$\delta$ の良い練習になる。
勝手な有界閉集合が、そのようにして実現できることがわかるか。
もう一つの話題、スペクトル半径公式。
\[
\max\{ |\lambda|; \lambda \in \sigma(A) \} = \lim_{n \to \infty} \| A^n\|^{1/n}.
\]
左辺は、$\cal{B}(\cal{H})$ の代数構造だけに依存して決まるのに対して、右辺は見かけノルムに依存する。
このように異なる意味合いのものを結びつける式というものは幸せをもたらすものだ。
例えば、正規作用素のスペクトル半径がノルムに一致すること。
来週は、本講のハイライト、これを極限まで理解するスペクトル分解定理。
しかし暑い。名古屋の暑さの最大原因は、舗装道路の面積の大きさであるという怪説を唱えてみる。 三河湾湯たんぽ説もあるが。難しく heat reservoir という。
今日は最初で最後の山、スペクトル分解定理を、いわゆる
Borel functional calculus が存在するという形で示しました。
細部をいいだすと時間的に苦しいので(内容的には、大したことはありませんが)、
エルミート作用素のスペクトル分解定理は、レポート課題とします。
群のユニタリー表現論、栄枯盛衰は世のならいですが、その重要性に変わりはありません。
正定値関数の積分表示、これも課題です。
締切日は、試験と同じく21日なので、お忘れなく。
と、ここまで書いたところで、忘れていました、授業アンケート。 教務委員会から警告メールが届いてびっくり。 この授業が対象とは露知らず、授業の最後で尋ねてくれた方には申し訳なかったですが、 来週実施します。
来週は、コンパクト作用素はやめて、ヒルベルト・シュミット作用素とテンソル積にしよう、 梅雨も明けたようだし。
羊頭狗肉の策、ヒルベルト・シュミット作用素でした。
授業アンケートもしました。出席率5割といったところでしょうか。
エアコンが故障して、教室を急遽変更。いろいろありました。
ところで、中間アンケートなるものどうなったんでしょうか。
もしかして廃止?うーむ、記憶にないなあ、頼りなし。
ヒルベルト・シュミット作用素のノルムがテンソル積のそれに一致するのですが、その証明のところで
ふらついてしまいました、熱中症。
何やかや言っても、時は経ち、試験はやってくる、終わりもやってくる。
来週は、試験とレポートに締切りが同時にやってきます。
今回のレポートは、5割取るのは容易だがその先が難しい。
一方、試験は3題(90分)で、少し勉強するだけで満点続出のはずであるが、それがなかなかそうならず、
結果として同じぐらいのできになって、2倍のチャンス。
水は低きに流れ、人は易きにつく。自然の理なんだなあ。 今日は、 2回目の試験 で、これで授業は終了です。 成績を3階の掲示板にはり出しました。ご確認下さい。
台風一過、気温が下がりましたが湿度は下がらず、再び炎熱がやってくることでしょう。 どうして、こういったことをしないといけないのか、気にし出したら止まらない。 悩み多きは、さいわいなり。儚き夢の季節、せめて今一度。