微積分2022授業日誌

前期に続き、教室での対面授業を10月7日(金)から執り行います。
各自、講義ノートをダウンロード・印刷の上、 シラバスに沿って学習していきます。 週ごとの概要を授業前に提示するので、予習に役立ててください。
質問等はメールで(メールアドレスはシラバスに書いてあります)、 回答はメールによる返信または「ここ(授業日誌)」で行います。
宿題(問題番号はシラバスの進度予定表にあり)の扱いは以下の通りとします。

  1. 問題の解答レポートを割当て日以降に提出、締切は次の週の月曜13:00
  2. 問題の番号ごとに解答を pdf ファイル(ファイル名は学生番号-宿題割当月日)として作成し NUCT にて登録(upload)。
    ファイル名の例:学生番号が0201930421で4月27日の宿題であれば、0201930421-4-27.pdf
  3. 提出されたレポートは、TA が点検の上、必要に応じてコメントを入れたものを、 解答例つきで次回授業前日の17:00までに提供。
  4. レポート提出の有無は成績には一切関係しない。
宿題の提出ファイルについて補足しておきます。
写真経由で作成する際は、ファイルサイズが大きくならないように解像度を調整して下さい。
また pdf 形式のファイル指定は、コメントを追記しやすくするためです。
画像データを pdf に変換する方法ですが、そういったアプリがいろいろあります。
携帯端末をスキャナー代わりにできるアプリも。
印刷コマンドから出力先として pdf ファイルを選ぶという方法もあります(OS に依存)。
具体的な方法はここ を見てください。

状況により一部の授業(試験含む)がオンラインになる可能性があります。

授業日誌は毎週更新していきます。古いのが表示されるようでしたら、再読込をしてみて下さい。


10月7日

台風の異常発生も、ここに来て季節はかたちを改め、雪雲さえ臨めるまでに。

本日のメニューは、
2変数関数のグラフとしての曲面とその切り口、ガウス積分
でした。宿題での練習をお忘れなく。
また、この機会に、広義積分と無限大のスピード比較を復習しておくことを勧めます。
その前に、今日の授業で判明した驚くべき事実。何と前期の線形代数で平面の方程式をやっていないという。 行列代数あれこれ の2節を見ておいてください。11月4日の授業で必要になります。

10月14日

穏やかに晴れて久しぶりの御岳日和。手を合わせる。

予習メニュー:
重積分の定義と性質、くりかえし積分、計算例。

来週は早くも1回目の試験(約40分の予定)。授業で取り上げたこと+宿題の復習を。

宿題の解答例は、宿題を出した人に配布することになりました。ご注意ください。

10月21日

しばらくは秋晴れに、何とはなくの落ち着かなさ。

最初に軽い復習をし、それから補足として、三重積分、広義積分、密度公式。その後で、 1回目の試験をしました。

[試験の講評] 問題がやさしかったこともあり、大体できていたように思います。
$\fbox{1}$ パラメータが変化する際のグラフがどのようになるかの説明が足りないものは減点です。 (i) で $a=0$ のときは、$z=0$ となるので、切り口の図形は $xz$ 平面内の直線 $z=0$ となります。 (ii) $c=0$ のとき、切り口の図形は $xy=0$ すなわち、$x$ 軸と $y$ 軸を合わせた十字形になります。 原点(一点)ではありません。
$\fbox{2}$ (i) の図示に失敗している人が少しいました。 (ii) くり返し積分への書き直しを理解していないものは大幅減点、計算ミスも減点対象。

合計点が2点以下の人は要注意。

10月28日

鈴鹿の山も遠くかすみ、穏やかに季節は前に。

予習メニュー:
偏微分、積分のパラメータ微分、くりかえし偏微分の順序、曲線の接ベクトル、鎖則
と盛り沢山。

実例中心に、偏微分の基礎をひとしきり。 何が変数であるかの、気持ちの切り替えがポイント。

授業日程が変更になりました。1月10日(火曜)が金曜日の授業日だったためで、 1週ずつ繰り上がります。詳しくは、シラバスでご確認ください。

11月4日

予習メニュー:前回の偏微分と chain rule を受けて、
一次近似式と(全)微分、曲面の方程式と接平面
です。前期線型代数の必須内容である平面の方程式の復習も。

おだやかに晴れわたり、こともなく。

先週説明した Chain Rule の応用という形で説明しました。が、実質的に同じ内容です。 平面とか球面の方程式についても慣れておきます。

来週は、2回めの試験です。 授業の中で取り上げた例と宿題を中心に復習しておいてください。

11月11日

今日も穏やかに晴れ上がり小春日和、御岳も薄く漂うがごとく。

復習の後、2回目の試験をしました。

講評:
$\fbox{1}$ の説明が不十分な人が多すぎました。 とくに、補足の意味で試験前に説明した一次近似式の厳密な定義を意味もわからずそのまま書き写した人が。 (とても悪い印象を与えます。) 期末試験で再度問うことになりそうです。一度自分の言葉で説明を書いてみてください。
$\fbox{2}$ の出来も今いちでした。これは実質的に宿題の問題だったのですが、宿題をやっていないと思われる人がこれも多すぎました。
成績分布です。 4点---12人、3点---29人、2点---16人、1点---9人
2回の試験の合計点が4点以下の人は要注意。

11月18日

予習メニュー:
重積分の変数変換、密度公式とヤコビアン、極座標変換の例、です。
行列式の幾何学的意味(前期線形代数)も復習しておいてください。

微小量を集めて積分となす、という点からは、密度公式が、今日の内容の肝でした。
実用的には、極座標を使った重積分の計算練習が大事でしょうか。 各自、練習しておかれますよう。

11月25日

予習メニュー:
変数変換の合成と微分、ヤコビ行列式、微分作用素とその変数変換です。

思いの外の穏やかな空に、山茶花もつつましく。

今日はオンライン授業です。オンラインでも、しっかりと来週の試験範囲だったりします。
質問は直接のメールにてどうぞ(NUCTは使わない)。
まずは、変数変換の復習から。これは平面上の点 $(u,v)$ を別の点 $(x,y)$ に移し替える操作といっても良い。それは $uv$ 平面上の点 $(a,b)$ の近くでは一次式により \begin{align*} \varphi(a+\Delta u,b+\Delta v) &\approx \varphi(a,b) + \frac{\partial \varphi}{\partial u} \Delta u + \frac{\partial \varphi}{\partial v} \Delta v\\ \varphi(a+\Delta u,b+\Delta v) &\approx \varphi(a,b) + \frac{\partial \varphi}{\partial u} \Delta u + \frac{\partial \varphi}{\partial v} \Delta v \end{align*} と近似される。そこで $(x,y)$ の変化を $(\Delta x, \Delta y)$ で表せば、 \[ \begin{pmatrix} \Delta x\\ \Delta y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \frac{\partial x}{\partial u} & \frac{\partial x}{\partial v}\\ \frac{\partial y}{\partial u} & \frac{\partial y}{\partial v} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \Delta u\\ \Delta v \end{pmatrix} \] この右辺に現れる行列が変数変換の微分とでもいうべきもので、テキストとも従来の習慣とも異なるのであるが、この行列をここでは \[ \frac{\partial(x,y)}{\partial(u,v)} \] と書くことにする。この流儀に従えば、関数 $\varphi(u,v)$ の微分は \[ \varphi' = \frac{\partial \varphi}{\partial(u,v)} \] と書き表される。変数変換のヤコビ行列式は、その行列式で \[ \frac{d(x,y)}{d(u,v)} = \det \left(\frac{\partial(x,y)}{\partial(u,v)}\right) \] と書くことにする。 このような記号により、$(u,v)$ をさらに別の変数 $(s,t)$ で表した、変数変換の合成 $(s,t) \mapsto (u,v) \mapsto (x,y)$ の微分は chain rule により \[ \frac{\partial(x,y)}{\partial(s,t)} = \frac{\partial(x,y)}{\partial(u,v)} \frac{\partial(u,v)}{\partial(s,t)} \] という行列の積の形を取る。これの行列式を取ると、 \[ \frac{d(x,y)}{d(s,t)} = \frac{d(x,y)}{d(u,v)} \frac{d(u,v)}{d(s,t)}. \] 以上の具体例は、テキストの例11.9を見る。 ここまでが前回の内容の補足でした。

次が今日の新たな話題の微分作用素 (differential operator) である。
すでに物理とかで見ているかも知れない。偏微分と関数の掛け算を繰り返すことで、与えられた関数から新たな関数を作り出す操作のことである。
これは一変数の微分作用素において十分意味があり、量子力学の基本関係式である正正準交換関係というのはまさにそれになっている。
ここでは、そういう話には踏み込まず、一般的な形式に慣れてもらうのが目的。2変数 $(x,y)$ であれば、その基本偏微分作用素である \[ \frac{\partial}{\partial x}, \quad \frac{\partial}{\partial y} \] を線型代数における一次変換の類似物とみる。 さて、変数変換を行ったとき、こういった微分作用素の表示がどのように変化するかは大事な問題で、
基本偏微分作用素については、chain rule の一つの表現としての変換規則が成り立つ。
これは比較的単純であるが、一般の微分作用素の変数変換はそれの積和による繰り返しとなるので、それなりに複雑にはなる。
具体的には、例12.3、例12.4 で実感する。

まとめると、 偏微分の変数変換が chain rule と表裏一体の関係にあるということ。
具体例として、極座標変換とと特殊な一次変換を取り上げました。 そこから、2階微分作用素である Laplacian とそれの親戚筋の「波動作用素」の変数変換を紹介しました。
すべて、具体例として復習・確認しておいてください。

来週は、いよいよ3回目の試験です。きわめて基本的な問題になる予定なので、挽回のチャンスではありますが、逆にここで失敗すると、あとが厳しくなります。

質問を持っています。

ついでに書いておきます。一次近似式を理想化したものに \[ dx = \frac{\partial x}{\partial u} du + \frac{\partial x}{\partial v} dv\, \quad dy = \frac{\partial y}{\partial u} du + \frac{\partial y}{\partial v} dv \] という表し方(もともとは無限小量間の等式)があって、こういったものを微分形式 (differential form) という。
これの形式的な積を考えてみる。ただし、符号付き面積的なものを作り出しているとみて、 \[ dudu = 0 = dvdv, \quad dudv = - dv du \] であることと、$du$, $dv$ と $(u,v)$ のスカラー関数は交換可能であることを要求する。そうすると、 \[ dxdy = \left(\frac{\partial x}{\partial u} du + \frac{\partial x}{\partial v} dv\right) \left(\frac{\partial y}{\partial u} du + \frac{\partial y}{\partial v} dv\right) = \frac{\partial x}{\partial u} \frac{\partial y}{\partial v} du dv + \frac{\partial x}{\partial v}\frac{\partial y}{\partial u} dv du = \left(\frac{\partial x}{\partial u} \frac{\partial y}{\partial v} - \frac{\partial x}{\partial v}\frac{\partial y}{\partial u}\right) du dv = \frac{d(x,y)}{d(u,v)} du dv \] なる意味有りげな等式が出現する。これがヤコビアンの(代数的?)本質であり、符号付き広がりの密度を表わしている。 電磁気の数学的記述で大活躍するベクトル解析の内容の肝でもある。

Q: p74の真ん中あたりの説明の微分作用素の、hxとは何ですか?hとの違いがわかりません。なお、hがxとyの関数であることは理解しています。
A: $h_x = \frac{\partial h}{\partial x}$ の意味です。これも $x$ と $y$ の関数になります。

補題12.2がわからないという質問がありましたので、この補足をご参照ください。

Q: 11月18日の宿題問119 $x=u+v$, $y=-2u+v$ と変数変換していますが、なぜこのように変数変換するのですか?
A: 問題としている積分範囲は、ベクトル $(1,-2)$ と ベクトル $(1,1)$ を「辺」とする平行四辺形なので、
平行四辺形(との内部)のパラメータ表示により、
$(x,y) = u(1,-2) + v (1,1)$ ($0 \leq u,v \leq 1$) と表される。
これから、$x = u+v$, $y= -2u + v$ という変数変換が出現し、
それにより積分範囲が $uv$ 平面内の正方形領域 $0 \leq u,v \leq 1$ に移される。
以上が仕組みです。https://math-fun.net/

「趣味の大学数学」というサイトを見つけました。
大学数学の話題が図入り(手書きの図は私程度かな)で多数解説してあります。復習と補習にどうぞ。
くり返し積分の公式を「フビニの定理」というのはいただけませんが。

12月2日

雪迎えの空に、はや3年。

いつものように復習のあとで、 3回目の試験を行いました。

講評:総じてできておりました。ただ、全く復習していないと思われる人もちらほらと。
$\fbox{1}$ で極座標の範囲($E$)を具体的に書かないもの多し。
$\fbox{2}$ 簡単な場合の確認がおろそかになっている人がそれなりに。
成績分布です。 5点---3人、4点---42人、3点---16人、2点---3人、1点---2人

12月9日

ひつじのお山もいよいよ白く、空は明るく晴れわたり。

本日のメニュー:二次近似式、ヘッセ行列と極値の二次判定。

これから都合3回ほど、微分が関係した最後の山が続きます。
まずは、二次近似式の2変数版を実例とともに。
停留点 (stationary point)、鞍点 (saddle point) というキーワードも含めて復習します。
行列の固有値についても、これを機会に見ておくと良いでしょう。
変数が多い場合の二次微分は、対称行列で表わされます。 ついでに書くと、3次以上の微分は、(対称)テンソルというもので表されます。正確には、もう少し複雑ですが。

12月16日

空はいよいよ深く、流星もまた。

本日のメニュー:
等高線と等位面、正則点と特異点、極大点、極小点、鞍点
でした。これを、一次近似式、停留点での二次近似式と関連付けて理解します。
2変数関数と幾何学との深いつながり、ということでもあります。

TA の方に、 WolframAlpha を使うと等高線の表示とか簡単に出せると教えてもらいました。 [プロットとグラフィックス] の中にある、[3Dプロット] の入力欄に、
(1/2) y^2 - cos x
と入れて描画ボタンを押すと3次元グラフと等高線が表示されます。
関数を取り替えて色々楽しんでみてください。

12月23日

西風に寒さ厳しくも晴れやかに。

本日のメニュー:
前回の積み残しである等高線の例。
等位面についても同様(正則点と特異点)のことが成り立つことを注意したあとで、 3変数の場合の条件付き極値、ラグランジュ乗数法。 その実例。
宿題なども含めて復習しておいてください。

次回は1月10日(火)です。4回目の試験前の復習と演習を行います。
期末試験相当の試験4は、1月20日(金)で、 1月27日は、「今後の展望」と題して、2年次に続く数学の見通しについて解説する予定です。

1月10日

試験範囲の復習をします。
一次近似式と接平面、重積分の変数変換とくり返し積分。 以上が過去の試験範囲です。
一次近似式が使えない停留点での二次近似式による極値判定、 停留点の近くでの等高線の様子。

4回目の試験(1月20日)は過去3回分の試験範囲から3題、新たな範囲から1題の合計4題となります。(時間はこれまでの倍。)
NUCT とここでのお知らせをまめにチェックしておかれますよう。

宿題が終了したので、新しい講義ノートを上げておきます。
問の追加に伴い、一部の番号が変更されました。等高線の図も入っています。

1月20日

大寒の冬晴れの中、

4回目の試験をしました。 結果については、もうしばらくお待ちください。

次の最終回は、今回の試験の講評+今後学ぶべき数学の見通しなどを紹介する予定です。

講評:ボーナス点を奮発したことが点数の上昇につながったでしょうか。前回の復習内容に予め対策しておけば当然の結果でもありますが、 それをまったくしなかった人も残念ながら見られました。因果応報。
相変わらず、「説明が足りない」、「正関数の重積分が負になっても気にしない」人はいましたが、総じてできていたように思います。

成績分布は以下の通りです。
11点---2人
10点---5人
9点---9人
8点---9人
7点---17人
6点---11人
5点---6人
4点---4人
2点---1人
0点---1人

1月27日

試験の講評のあと、今後の展望について縷々述べました。

総じて微積分の本は、一変数の微積分と多変数の微分の理論的なこだわりに比べて多変数の積分(とくに広義重積分)に手抜きが見られるようで、 実際の授業ではその傾向がより顕著であるように思います。
具体的には、重積分の完成形といえるルベーグ積分の理論と多重積分の計算技法との乖離が大きいのですが、この手抜きの部分が気になる人にとって、 その道のりのあまりの長さが前から気になっていたのでした。
ということで、今生の置土産に、ささやかな橋渡し(上の階の下のほうにあります)を用意してみました。合掌。


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