微積分2015授業日誌

新入生に接する幸せというのか、刺激というのか、 それをささやかな杖に、またこの一年を踏みしめるべく。

シラバス講義ノート演習ノート を道の糧に、いざ進まん。


関数の増大度(4/16)

ようやく雨やみて、八重のまぶたも重く花曇り。

最初に、宿題の扱いについて記録しておく。
毎週の授業の中で、最低限の復習のための問題を1−2問指示するので、次の週の月曜12時までに、 レポートにまとめて教養事務室横のボックスに提出すると、それの点検結果が解答例とともに次回授業開始時に返却される。 なお、これは、復習の手助けのために行うものであって、授業の成績には反映しない。

つぎに、オフィスアワーの利用方法について。
数学全般についての質問等は、水曜12:30−13:30(理学部A349)でも定期的に受けつける。 気楽に立ち寄ってみると、食後のコーヒーにありつけるかも知れない。
食後のコーヒーといえば、カフェダヴィッドというのもある。こちらは、毎日昼に営業である。場所は多元棟2階。

本日の内容は、微分計算の復習と関数の増大度のスピード比較。宿題は、問14と問15。

逆三角関数(4/23)

雨多かりし4月なれど、今週は穏やかに晴れ上がり花みずきもまぶしく。
本日は、逆三角関数とその微分・積分でした。十年一日、進歩のない授業をしているので、過去の日誌そのままに、 最近は自分の書いた文章でも再録すると「自己剽窃」といって非難される風潮、 社会全体のアトピー化(過剰反応)ここに極まれり、とぐちをこぼしておきます。
逆関数がでたついでに書いておきましょう、関数関係というのを説明したいとだいぶ前から思っているのですが、 よい方法が見つからなくて、と、こちらは苦しい言い訳。
ところで、 積分を機械的に計算してませんか。 積分の気持ちになって処理できるようになりたいものです。

宿題は、問19と問20。レポートの期限は、4月27日(月)午前中。

来週は、はやくも1回めの試験。過去問もその辺にころがっていることもあり、満点続出の期待。 その期待にしばしば裏切られる現実。

試験1(4/30)

汗ばむ陽気の晴天に雲も淡く高く、桑の実のみどりも鮮やかに。
今日は、簡単なまとめの後、 試験1をしました。
苦労してた人も何人かいたようですが、その辺りは、是非個別相談で。

[試験の講評]

$\fbox{1}$ は概ねできてましたが、極限の理解に難あるもの数名。
$\fbox{2}$ も同様ですが、負数どうしの大小の比較を間違える人が、結構いました。

試験結果については、採点その他が終わり次第掲示の予定です。

積分の意味と計算(5/07)

連休後も穏やかに晴れて水のかおり、若葉のまぶしさ。

区分求積法というのは、定積分の意味に慣れるという点では意義があるのかも知れないが、単にそれだけのことだ。 それよりは、Fermat によるべき関数の定積分の計算でも紹介した方がましである。 これに触れている教科書が意外に少ないので、テキストに追記。

積分の意味と計算。定積分の計算を試みる際の3原則。実は、密度と積分という見方がだいじなのであった。 ほとんど強調されないことながら。
宿題は、問29,30、締切は、11日(月)。

有理関数の積分(5/14)

じんわり汗にも風さわやか、つつじも末の高曇り。

今日は、積分の計算の続きとして、部分積分と有理関数の積分をしました。 授業アンケートを意識するあまり、時間配分を間違えて早く終えてしまったのはもったいなかった。

来週は、はやくも2回目の試験です。授業で取り上げた例、宿題の問題、 それと過去問といったあたりを見ておくと幸せになれるかな。

前回の宿題の点検で、TAの方が、積分定数の不足を丁寧に指摘してくれてましたが、 授業でも触れたように、省略して結構です。むしろ機械的に C をつけるというのは却って危険な気がします。
何故に、A ではなく C なのか。c では具合が悪いのか。 不定積分の等式は、定数関数の差を無視してのものであると認識します。

試験2(5/21)

夜半の雨もあがり、南の風=風力3、木々の梢も騒ぐほどに、空のまぶしさ。
今日は、復習とまとめの後、 めでたくも2回目の試験をしました。 次回からは、期末に向かってまっしぐら、とはならぬ辛さよ。
授業時間数を確保したいのであれば、大学祭のごときは9月の末で十分、この偽善者め。

お知らせです。来週水曜日のオフィスアワーは休止します。

[試験の講評]
今回も満点続出を期待していたのですが、そうはならなかったようで、 毎度のことも含めて少し記録しておきます。
$\fbox{1}$ (i) で「定積分の定義に基づいて」という条件を無視するもの多数。 なぜに面積が電荷と同定できるのか、その根拠を説明しなくては。 それよりも、意外だったのが (ii)。だれでもできる置換積分のつもりでしたが (本当はもう少し手間のかかる積分を出す予定のところサービスしたつもりが)、 積分の端点の値も置き換えるという当然のことが分かっていない人がこれも多数。 全体として、2点取った人は数えるほどでした。
$\fbox{2}$ は、計算主体だったこともあり、直前のわざとらしい「復習」もあったので、 こちらも満点続出かと思いきや、直前の復習がまったく役に立っていない人が複数。 それよりも、不定積分が根本からわかっていない人もちらほら。 \[ \int \frac{1-x^2}{\sqrt{1-x^2}} dx = (1-x^2) \int \frac{1}{\sqrt{1-x^2}} dx \] といった計算を目の当たりにすると、嘆きを通り越して、悲しくなります。
応急処置が必要な方は、とりあえず、 積分の技法 でも服用してみてください。

一次・二次の近似式(5/28)

今日の名古屋の最高気温33度。先が思いやられる陽気かな。

授業は表題通り。まあ、高校数学の延長といったところですが、その実はどうして侮りがたし。
そもそも人間が感覚的に把握できるのは二次までのような気がします。 3次以上は論理の力で、となるでしょうか。それとも。
例とか宿題とかも含めて復習しておいてください。

来週は、大学祭の準備やらで授業はありませんが、 学習相談日とします。午後1:30−3:00の間に理A349へどうぞ。

学習相談(6/04)

北寄りの風つよし。照りかえしの中、久しぶりに御嶽山の遠望。噴煙、ありやなしや。

今日は、学習相談日ということで、3名の来訪あり。 また、今後とも折りにふれての訪問を期待しつつ。

さて、もうすぐ6月9日であるが、その前に一大事であるか。 祈るばかりの人生かな。

Taylor の公式(6/11)

あじさいが咲いたところで、梅雨入り。ぬるい雨が落ちてきました。

前回の2次の近似式を受けて、$n$ 次の近似式を説明しました、証明の方針も示しました。 誤差の評価式を導くついでに、オーダー記号もあっさりと導入。 いろいろ考えてみてください、手も動かして。

具体的な関数のテーラー近似の求め方について、例を使って説明しました。 あとは、実践で納得して欲しいものです。

宿題は、問54,問59。今日の復習と併せてどうぞ。

Taylor 展開(6/18)

典型的な梅雨空、湿度は高いものの風強く、前線は南に、鹿児島方面が気がかり。

今日は、階乗のスピード評価を準備して、お約束のテイラー展開。 積分と無限和の怪しい順序交換がでたところで、 怪しい計算は減点されるか、という質問。

こういう採点の綾は気になるのでしょう。
大抵の数学者は、本質重視主義と思われます。 肝腎なところがわかっていれば、 多少の計算間違いは大目に見るような気がします。 もちろん、中には、無慈悲にばっさばさ零点をつける人もいますが、 これは、多分、ものぐさなだけなのかも知れません。 ということで、採点する人に依るところ大なわけですが、 少なくとも、私の試験に関しては、単純な計算問題でない限り、 大事な点が分かっているかどうかがポイントになります。
こんなところで参考になりますでしょうか。

次回は試験、どうか気合を入れて、試験範囲の復習を。

宿題、問63、問64。

試験3(6/25)

梅雨の薄曇り、湿度は高めなれど前線は下がり風の通る一日。雷雲は、種子島に。

今日は、3回目の試験をしました。

いつも通りの「復習」をいつもよりも長めに。 はたして、その効果の程は。

[試験の講評]

$\fbox{1}$ は、誤差の大きさへの言及がない者が多すぎました。 誤差を積分で評価した人はほんの数名。 小数第3位を四捨五入している人も複数いました。この問題の場合、まるめてはいけません。
$\fbox{2}$ は、4次の係数が正しくない人がかなりいました。 その理由は様々ですが。練習してこなかったのでしょうか。 $\sqrt{x^2} = |x|$ ではなく、$\sqrt{x^2} = x$ とするひとが、これも多すぎました。 そもそも square root のグラフを描いて、負の値が出てきてもなんとも思わないというのは、 とても危険です。 期末試験でもう一度問うことにしようと思います。

広義積分(7/02)

早いもので、7月、梅雨の晴れ間の薄曇り。前線は例年よりも南に。

今日は広義積分でした。いうべきこともない内容に見えて、その実は意外とということかも知れません。 突然ですが、若い人たちは怒るのが特権、年寄りはそれに対峙する義務があるでしょう。 訳知り顔だらけになっては、おしまいですね。未来はありません。 怒る材料は山ほどあります、この授業も含めて。 「爺が何をほざく!」という目をしていたあなた、期待しています。

Torricelli's trumpet を締めにする予定が、その前で終わってしまう悲しさ。 しかし、その後に双曲線関数についての指摘をしていただいたのは大いなる救いといえるでしょうか。

級数の収束・発散(7/09)

雨の道端にめずらしくもかたつむり。梅雨も終盤、授業も終盤。

級数の絶対収束性について、ひとしきり。良い収束に習熟するもっとも有効な手立ては、悪い収束を知ることである、かな。
証明とかの細部にはこだわらず、まずは具体例から。 一般項の無限小のスピードで、その様子が決まることがわかれば良いのですが、はてさて。

今日の宿題は問69、広義積分の続き。

微積分の基礎(7/16)

台風11号が運ぶ生暖かい風つよく、梅雨の末期とも、梅雨の後の台風とも。 邪悪な季節の到来か。

今日は、やり残していた微積分の基礎に関連して、 有界数列の収束定理と連続関数の性質をしました。
本当は、その前に実数の構成とかをするとよいのでしょうが、時間的に不可能なこともあり、 線分上の点を二進小数展開の関係を簡単に説明して、Bolzano の「絞り出し論法」の紹介を試みました。
いつもにも増して、説明が sloppy だったかも知れませんが、 こういった話は、その必要性が認識されて初めて意味をもつ類のもので、今の段階で教えることをためらう気持ちが、 多分に反映されたためです。(この段階で学ぶべきは、不等式による評価、近似の感覚、でしょう。)
最後に、中間値の定理の使用例として、動く列車の中で棒が倒れないための初期条件の存在を説明しました。 Courant-Robbins, What is Mathematics という本の中にある有名な「応用」です。
これには、これも有名な Pancake Problem への応用も書いてあって、楽しめる良い本なのですが、 なぜか絶版とはこれいかに。正しくは、on demand printing で手に入るようですが、その値段の異常さよ。 事情はいろいろあるのでしょうが、電子媒体をできるだけ低価格で提供する気骨は、ないか、瞬間にのみ生きる今の時代。

次回は、最終4回目の試験、90分で4問です。
うち、2問は、「広義積分・級数の収束」から。 残り2問は、過去の試験のうち出来が悪かったところから、の予定です。

恒例の授業アンケートもしました。

試験4(7/23)

梅雨の揺り戻しのような曇天の中、 最後の試験をしました。 できるだけ基本的なところをと思い、やさし目の組合せのはずが、思いの外のできの悪さよ。

[試験の講評]

$\fbox{1}$ 相も変わらず「定積分に基づいて」を無視するもの多数。 2点の人も、説明が十分でない答案多し。

$\fbox{2}$ 3回めの問題2の類題として出しましたが、テーラー展開の計算が梅雨空のごとく。 公式丸暗記の弊害かな。

$\fbox{3}$ 広義積分の存在証明はまあまあでしょうか。 ただ、$\lim_{x \to \infty} f(x) = 0$ を存在理由にあげる者、結構な数いたことは、 かなり気になりました。 例えば、 $\int_0^\infty \frac{x}{x^2+1}\, dx$ を計算してみてください。収束しますか?
あと定積分なのに、変数 $x$ が残ったままの答案もちらほら。 心当たりの方は、 積分の技法 の最後の辺りを。

$\fbox{4}$ 一番悲惨でした。 $\sum_{n=1}^\infty a_n$ が収束するための必要十分条件は \[ \lim_{n \to \infty} a_n = 0 \] であると、 平然と書く人があまりにも多すぎました。 級数は、等比級数のように具体的に値が計算できる場合以外は収束しないと思っているのでしょうか。 稽古不足といってしまえばそれまでですが、この先々のことに思いを巡らすと、夏の悪寒かな。
ここで、お前の教え方が悪い、という陰の声あり。 そう、それはその通りなれど、しかし、大いにしかし。 常にはしないことなれど、$\fbox{4}$ の略解を下に記す。 これをアリバイ工作という。

いずれの場合も、まず、絶対収束するか否かを調べると良い。ということで、 \[ \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^2+n+1}, \quad \sum_{n=1}^\infty \frac{n}{n^2+n+1}, \quad \sum_{n=1}^\infty \frac{n^2}{n^2+n+1} \] の収束性が問題である。
最初の級数は、$1/(n^2+n+1) = O(1/n^2)$ であることから収束し、 2つめは、$n/(n^2+n+1) = O(1/n)$ であることから、対数発散し、 3つ目は、$n^2/(n^2+n+1) \to 1$ であることから、論外で発散する。 この程度の「理由」で十分のつもりであったのだが、・・・。
なお、2つ目を $\sum_n (-1)^n n/(n^2+n+1)$ とすると、 交代級数の定理により条件収束するというのが答えとなる。 (授業では、ここまで触れるべきでした。 必要最小限というか、効率主義はよろしくありません。「遊び」の部分が必要であるのは承知してるのですが、 先立つものがどうにも。)
何はともあれ、$\lim_{n \to \infty} a_n = 0$ から $\sum_{n \geq 1} a_n$ の存在が従うなどどいうことは、 alas, 地獄への道であるか。

最終成績をいつもの場所に掲示しておきます。判定基準は、公表通りです。 分布は(S-10人、A-22人、B-24人、C-15人、F-7人)でした。
疑問点がある場合は、至急(7月中に)ご連絡下さい。
今回で結果を出せなかった人も再試験を受けられる可能性がありますので、 あきらめずに勉強を続けてください。引き続き、オフィスアワー等で相談に応じます。

梅雨が明ければ、そうして相撲が終われば、 連日の猛暑(最低気温26度超!)の名古屋かな。 しかし、入道雲の沸き立つあたりでは、うぐいすとカナカナの二重奏の下でトンボの乱舞とは。 それでは、皆様、はかなき夢を夏の月。


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