- Benoît Collins氏の日本学術振興会賞によせて
「数学通信」第28巻第2号(2023年8月),日本数学会.
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松本詔さんのお名前の漢字を間違えてしまった.注意して書いたのですが...すみません.
- 行列解析:函数解析・作用素環論の立場から
数理科学2022年11月号(特集「作用素・演算子と数理科学」),サイエンス社.
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今回は行列解析をお題にした執筆依頼だったので,行列・作用素の幾何平均への他に書かれていないアプローチを与えてみた.これを幾何平均と呼びますと言われてもその出所を要るだろう,と考えたのだ.もちろんここで説明したのはその一つにすぎないが.指数関数よりレゾルベント,フーリエ解析よりも複素関数論,二個は一個に帰着でき,二個と三個の差が激しい,という荒っぽいメッセージを含めてみた.
- 作用素環論と確率論
数理科学2017年10月号(特集「確率論の力」),サイエンス社.
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何故か確率論特集号の記事の依頼が来たので,漸近表現論,自由確率論,エルゴード群論(木田氏の用語)から普通の確率論の技術が効果的に働いた点を強調して時系列に書いた.一つはちゃんと勉強になるように書く(話す)という考えから,漸近表現論のエルゴード手法は完全な説明を与えた(つもり).
- 書評(A. Nica and R. Speicher, Lectures on the Combinatorics of Free Probability, LMS Lecture Note Series, 2006)
雑誌「数学」69巻3号,日本数学会編集,岩波書店販売.
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書評だが,Wigner の定理の意味とそのある証明の鍵が組合せ論であることが明確にわかるように書いた(つもり).ゆえにある種の精密な組合せ論を初歩から解説したこの図書が有用であるという論理で書評を展開した.あと,行列値確率過程を捉えるのにそこから得られる固有値過程ではいかに情報量が少ないかも非可換理論が何故必要かを明確にするために指摘したつもり.よく自由確率論を別種の確率論とか確率論の類似追求理論と紹介することがあるが,私は現在の自由確率論はそんな矮小なものではないと思っている.ゆえに,一部の誤解を払拭するためにも様々な視点からの紹介記事が必要だろう.そういう意味では紹介した図書には分野の広がりといったものがないのが少し残念だが,自由確率論の組合せ論の側面の基礎ではこの本に勝るものはない.片方の著者が別の共著者と書いた最近のものの方が話題の選択のバランスがよい.
- 測度とは何か:それは数学の世界の精巧な測定器
数学セミナー2016年10月号(特集「測度とは何か」),日本評論社.
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短期海外滞在中に1ヶ月程の〆切で依頼を受けて書いた.私の前に断った人がいたのだろう(と少しの情報から勘ぐっている).帰国後直ぐの週末を潰して書いた.それと出版されて知ったのだが,どうも基礎論の立場からの測度論がテーマだったようで,話題にあってなかったぽい.まあ,いいや.何かウケ狙いをと考えて「空手踊り」という駄洒落を挿入した.編集者には「誤植ではないのでそのままに」とコメントを付けて原稿を送った.やはり何事も愛嬌は忘れたくない(Stormer氏から学んだ姿勢; 論文リスト [5] の謝辞).
- ルベーグ積分は難しいか?
数理科学2011年5月号(特集「初学者を悩ます数理の概念--理解のためのヒントを探る」),サイエンス社.
答え
(有用だが)ルベーグ積分は難しい.執筆当時,素朴集合論に触れたことのない工学部学生相手にルベーグ積分の講義をしていたからこそよくわかる.
- ここ10年の作用素環論の話題から
日本の現代数学:新しい展開を目指して,2010年,数学書房,所収.
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どういう経緯かわからないが(覚えていないが)書くことになった.大活躍していた国内の若い人々に触れるようという依頼に忠実に答えるべく努力してみた.うまく行った気はしない.
- ランダム行列と自由確率論 (日合文雄氏と共著)
数理物理への誘い6, 2006年,遊星社,所収.
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Wigner の半円分布の導出に関して2,3節でそれぞれ異なった説明を与えることにより話に一貫性を持たせた.最後は自由エントロピーの大雑把な紹介.元はサマースクール数理物理の講義録でそのダイジェスト版.主に1,2節を日合氏,3,4節を私が書いた.日合氏からは門前の小僧よろしく研究ノートの整理の仕方や共同研究の作法を身につけた.