LA徒然草(1月)

1月の記録

飛行機に乗って (1/16/2001)
アメリカに再入国してから、一週間が経過しようとしている。今回は軟弱(?) にもJALで渡米した。エコノミーの乗客も立派なお客さんであるということを このフライトは私に思い起こさせてくれた。某米系や某Netherland系の航空機のように 肩をすぼめるように座席に座って、ただ時間が過ぎて行くのをじっと待つような貨物 扱いとは違う。各座席にテレビ、ゲーム搭載。客室乗務員の対応、素晴らしい。 しかも、今回の旅券はLAにて購入したために、価格が他の航空会社のものと そうたいしてかわらなかった。なお、すばらしい。(さらに、イチロー選手ととも に渡米できるという好運にも恵まれたのである。) があえて苦言を呈すると、同じ 航空券をアメリカで買うのと日本で買うので3万も違うというのはどうだろうか。 ダンピングといわれてもしかたがないのではと思うのだが。 とにかく、「日本品質」 というのはやや高コストではあるものの、非常にゆきとどいた品質を指すことは何も 航空機に限った事ではなかろう。日本が昔も今もそして未来も世界に貢献できると すれば、それはこの「品質」であり、その品質を維持する平均値の高い国民の質と 勤勉でしかなく、そういう観点でみて、最近の教育の現状と行政や政府がめざす 方向にはやや危惧を感じずにはおれない。
さて、アメリカ品質である。昔に比べてずいぶんと改善されたとはいえ、 コスト重視、といえば聞こえはいいが、つまりは「安かろう、悪かろう」で ある。マーケッティングと称してはいるが、「大量生産・大量消費」と何の 違いもない。要するにアメリカの基本的なやりかたが、そうなのであって、 それをサポートする形で理論は構築されるだけである。こうした理論は アメリカでは成功するだろうが、アメリカで成功したからと言って日本で うまくはいかない。最近、アメリカで経営学修士を取得して日本で「葵の印籠」 のように、それを持ち歩く人々がいるが、そのようなものは一種の比較文化学 のネタにしかならないように思える。もちろん、そういう学問を学ぶのは大切 だし、実際日本の会社などがアメリカで商売をする上では、たいへん役立つかもしれない。また、そのために費やされた努力にも敬意を表して惜しまないが、とっただけ で終わってしまっては、何のためにもならない、時に害悪ですらある。経済学を科学の 土俵に乗せられる程、つまり人間集団活動を記述する程、数学などの基礎学問が 発達している訳ではないと私は感じているが、百歩譲って、そういう経済学が 成立することを認めたとしても、日本には日本の経済構造と、それを支える国民 というのがあって、それを考えないとどうもうまくはいかないと思う。
飛行機に乗りながら、映画を3本ばっちりみて、その合間にこんなことを 考えた。もちろん、機内にて寝る事はできず、時差ボケのおかげで先週はずっと、 体調がぼろぼろであった。
電力危機 (1/18/2001)
おそらく日本でも話題になっていると思うが、カリフォルニアの電気事情は現在 最悪の状況に向かいつつある。昨日、サンホゼやシリコンバレーを中心にした北 カリフォルニアの地域が約一時間半あまりにわたってrotating blackout(計画停電)が 実施された。この電力不足は今後半年は続くものとみられている。原因は要するに電力 を配送する民間会社が経営困難に陥って、安定に電力の供給が出来なくなったこと による。これらの会社の破産は必至と見られている。昨日カリフォルニア州政府は 電力の一括購入を宣言し、安定な電力供給を約束したために、とりあえず危機的な 状況は脱した。が、街の雑貨屋では懐中電灯や自家発電気機などを買いに来る客が 増え、品薄になっているらしい。さながらかつての日本の石油危機のような状況を 呈している。
日本人である私には今回の事件の経緯がよくわからなかったので、調べて みると、全てはクリントン政権のとった「自由化政策」に通じることがわかった。 クリントン政権は多くの産業分野に市場原理を導入し、それに基づいた民営化 などの政策をとった。その時に重点的に行われた分野が情報分野と電力分野である。 まず、情報分野はインターネット事業の急速的な普及にともなって、非常な発展を遂げ アメリカ経済の牽引役となったことは言うまでもない。その中心がシリコンバレー を中心とするカリフォルニア州である。その結果、カリフォルニア州における電力 需要は急速に伸び( その伸び率は全米平均の2倍以上、シリコンバレーだけに 限って見れば5倍の伸びとなっている)を記録しており、電力生産と供給のバランスに 齟齬が起こっている。この電力の慢性的な不足状態がここ数年続いたことが 今回の事件の背景にある。次に、電力分野だがこちらも電力の生産と配電などの 事業を分割して民営化し、新規参入を募ったわけであるが、こちらはそもそも 基幹産業でコンスタントな収益が望めるものの、設備投資が 莫大になるということも敬遠され、政府の思惑通りに自由化が進まなかった。 実際に電力不足であるにもかかわらず、発電所は他州に転売されたり、コスト 抑制のために新規発電所建設が進んでいなかったりしている。 それだけなら、何の問題もないのだが、今回の場合、民間会社が持つ電気の 小売価格の設定が自由化によって、むしろ自由化以前のレベルを大きく越える ことが許されなくなったことが問題になったのである。しかし、石油の値段は ここ数年急騰しており発電コストは大きくかかっているのに、小売価格が低く 制限されているという事態になり、結局その差額を会社の債券や設備投資費や 人件費の軽減によって賄う事となったのである。つまり、電気が売れれば売れ る程損をするという構造が長年続いたのである。そして、とどめの一撃が、格付 け機関による債務不履行という判断であった。一気に債券による資金調達がで きなくなり、そして不渡り倒産という形になっているわけである。
誰が今回の問題の責任を持つのだろうか。今回のケースがうまくいかなかった 理由を考えてみる。政府の誤算は企業の新規参入がなかったことになるだろうが、 それが今回の問題だろうか? それはちょっと無理な気もする。仮に新規参入が なければ、それは一社独占状態になるので、却って儲かりそうな気もする。 それでは電力供給の不足だろうか?それも問題ではない。電力供給が不足すれば 電気代が上がって、それで利用が抑えられるからだ。やはり、 私が思うに、それは電力の仕入れ価格と小売価格に生じた逆鞘を解消できなかった ところにあると思う。まず仕入れ価格が高騰したら電力小売価格が高騰するのは 当然である。その高騰の程度を適度に抑えるのが競争に基づく市場原理であって、 値段の価格設定に完全な自由がないのであれば、市場原理などを導入する必要など ないと思う。だから、今回の問題の大きなポイントは電力価格の設定にあるはずで ある。ではなぜ、価格設定が自由にできなかったのだろうか? 今回の場合、電力 配送会社は悪化する経営状態を改善するために最大30%、そして今後2年間で 76%の料金の値上げを考えた。しかし、そこでカリフォルニア公益事業委員会が 「個人向けで7%、企業向けで15%」の値上げを90日の間だけ認めるという措置を 出したのである。どうやら問題はここにありそうだ。本来価格の設定は市場原理に 基づくのが自由化なのであり、電力需要と電力供給のコストのバランスで 値段が変動しなければならない。それが、公益性の高い電気事業だからと いって、価格の設定にこうした委員会のような政府機関が介入すれば、そりゃ企業は やってはいけなくなる。「自由に値段があがったら、電気を使えない人が出て来る ではないか? 」そう思うなら、そういう公益事業を自由化などすべきではない。 税金というコストの中から国民負担という形でその安定供給を目指すのが道理 であろう。結局、今回は州が電力を一括買い取りで安く卸すという措置をとり そうである。(それなら自由化以前の状況と同じである)
さて、日本の新聞のHPの記事を読んで見たが、どの新聞も今回の原因を 電力生産の不足や施設の老朽化などを原因と見ている論調が目立つ。あとは いつもの現地リポートと称する、被害者の声を集めたものばかり。そして 日本の政府も「日本は電力が年間最大需要ピークより10%の余剰電力 を抱えているから大丈夫」などといったスカタンなコメントをしている。 日本も電力の自由化を進めているようだが、アメリカをモデルにしている らしい。それなら、そのような余剰電力のことが問題なのではなく、公益 事業であると言う観点からくる「価格設定の自由性」の問題を議論する べきであり、許認可制度についての日本のこれまでのやりかたを考えると、 きっと値段の設定には大きな「足枷」がつくはずで、それをいかに撤廃して いくかを考えなければ日本でも同じような状況が起こりうるのである。
また、最近、日本でもいろいろな公共の事業を市場原理に基づく自由競争 を導入すべきだという話があちこちにある。そこには自由競争すれば値段や コストは安くなるという考えが根底にある。しかし、市場原理で動かせば、 値段は下がる事も上がる事もあるということを覚えておかなければならない。 あたりまえのことだが、あたりまえを忘れた時、災難はおこるのである。 公益性の高い水道や電気などを自由化してはたして我々のためになるのか? それは冷静に考えてみなければ、結局は国民がそのつけを負担することになる かもしれない。私事ながら国立大学の独立行政法人化はやってしまえば 確実に授業料の値上げに繋がる。少なくとも現在の私立大学のレベルには なるだろう。これは自由化による競争原理でコストが抑えられても、全体的 なコストは決まっているから、今より高くなるからだ。しかも、大学の「商品」は 学生であるわけだが、その学生に「値段」をつけられるはずなどないから、小売商品 の値段が0となれば、ますますコストは授業料に跳ね返る。世界に通用する 優れた研究者を集めようとすれば、当然コストが高くならざるをえない。 世界に通用する東大や京大の先生がこの現在のような低いコストで提供されてい るのは、現在のように政府がつまり国民が大学に税金という形で負担している事 によることを忘れてはならない。
ちなみに私の住むLAはDepartment of Water and Power という市の部署が電気を生産配送しているらしいので、今回の事態に対しては まだ余裕がある....らしいが、何が起こっても不思議ではない最低品質保証の ない国のことである、いつ停電が起こってもおかしくはないと考えて準備は している。
アメリカにおける州って? (1/27/2001)
カリフォルニアの電力危機は依然余談を許さない状況になっていて、 このままいくと失速気味のアメリカ経済をより一層悪化させることになる かもしれない。アメリカ政府は今期のアメリカの国民総生産がほとんど 0に近いという事実を公表しており、とにもかくにも今回の好景気の 原動力となってきた情報関連分野の持続的な成長を望んでいる。が、 今回の停電騒ぎは、実際の被害はともあれ(実際には多くの商品が カリフォルニア以外の場所で作られているので、影響はないように思うが) ソフト開発などの基礎技術研究部門への影響は少なからずあり、また いつ起こるかも知れない計画停電への不安などからIT部門への 精神的な不安材料へと繋がろうとしている。現在、NASDAQなどの 株価もそれほど下落はしていないが、この停電騒ぎは早急に解決 される見込みがないため、じわじわとアメリカ経済をしめつけている。
少なくともブッシュ政権はこの事態を重く受け止めているようで、 なんらかの根本的な対策を打ちたいのであるが、せいぜい他の州や メキシコ、カナダなどに「足りない電気をカリフォルニアに回す よう要請」することが関の山で、例えば配電会社に連邦の資金をつぎ こんだり、足りない電気を財政規模の大きな政府が買い 上げてカリフォルニアへ卸すなどの対策は取られないでいる。なぜその ような対策が取られないのかというと、アメリカ合衆国憲法における「州」 の位置づけが問題になっているのだということがわかった。アメリカは 州が連邦制をとっている。というと簡単だが、ここに住んでいろいろ 実感する事を総合すると、州を日本の県のような存在を考えるとピンと こない。 どちらかというと「州=国」という感じのほうがしっくり来る。 もっといい例えがある。丁度江戸幕府から徳川家を抜きさって大江戸政府 みたいなものを考えればよい、各州は藩みたいなもので、それぞれの 藩内でそれぞれ法律(州法)と藩主(知事)がいて内政を実行しており、大 江戸政府(連邦政府)は軍事や外交といった、大枠の国際政策だけを担当 しているといった感じである。だから、内政面での江戸政府の藩への 干渉は一般にはタブーとされている。州で発生した問題は州の中で 解決するのが道理であるというのがアメリカ人の考え方のようである。
今回の電力騒ぎはカリフォルニアの藩内の問題であり、江戸政府が 口を出すのは明らかに越権だという感じがあるようである。ましてや カリフォルニアは、言ってみれば外様大名のようなものであって、 中央政府からは常に一線をおきたがるようなので、簡単に政府が手を 出す訳にはいかないということらしい。地元メディアの間でも、 連邦政府に助けてもらおうという論調の議論は視たことがない。 同じ論理でFBIが嫌われる。藩内の警察組織と対立するのもこういう 実感に基づくようだ。
だから藩主であるところの州知事は大きな権力を持っているわけで ある。ヒラリーさんはNY藩主なのである。といっても、連邦政府との 関係は各藩が上院議員と下院議員を出していることと、各知事は勿論 全国組織の政党に属している訳だから、江戸時代とは違って政策には ある程度の同調があるわけだが。
「LAは外様大名」 説、結構実感にあっていると思う。
クイズミリオネアとFamily Feud (1/27/2001)
最近は日本でもテレビ多チャンネル時を向かえ放送のコンテンツが 慢性的に不足しているようで、海外から番組のコンテンツを購入するという ことも多いようである。日本で現在放映されている「クイズ ミリオネア」 はアメリカの人気クイズ番組「Who wants to be a millionaire?」の コンテンツを購入したものである。番組の進め方やセットなど全く同じである。 4択のクイズ、3つのライフラインなども同じである。ただ、賞金は違っていて、 アメリカはMillion dollars(百万ドル=一億円)で日本は一千万円である。
日本から逆輸入されたものもある。それがFamily Feudという番組である。 日本でやっていた「クイズ 百人に聞きました」のコンテンツをアメリカに輸入 したものである。百人の人に取ったアンケートの答えを二つのチーム(家族) が当て会うというものである。違いはトラベルチャンスが2万ドルの賞金クイズ になっているという点と最初に前に出て二人が早押しをして、解答権を争うが 日本では答えた方が解答権をとれるが、アメリカの方は買った方が解答権を 自分がもらうか相手に先に渡すかを選択する権利を得るのである。また、最後の 問題が得点3倍になるという点も違う。日本では倍になるだけだったと思う。
この二つのクイズ番組はともにコンテンツだけを輸出輸入したものである ため、いずれも各国のテイストをプラスして放送しているという点が面白い。 まず、すぐに気づくのは、アメリカではこれらのクイズは毎日放送されている というところである。日本では週に一回である。よくもまあ、これだけ出演者 の素人が減らないなぁ、毎日毎日高額の賞金を出していてよく持つなぁと関心 している。次に気がつくのは番組のテンポがアメリカの方が速いということである。 とにかくノリがよい。問題の数も多い。アメリカのWho wants to be...を 見ていると、みのもんたの見せるあの長い間はじれったい、そんなに正解を いうのがいややったらやめればいいのにと思うぐらいである。番組ディレクター の指示で出来るだけ一時間内に出す問題の数を減らしたいのではないかと疑わしく 思うぐらいである。この引っ張りが日本人には「受ける」と(放送側は) 考えたのであろうか。一方Family Feudも日本では関口のおじさんが、実に マイペースで番組を進行させていたが、アメリカではブットい司会者がいかにも というアメリカンなノリでテンポ良く問題をこなす。どれくらい速いかと言うと 日本では3問しかないがアメリカでは4問やるので1.3倍ぐらいだろうか。 あとこのクイズ番組出演者がやかましい。もうちょっと落ち着いて番組せぇよ といつも思う。テンション切れたら死ぬわけでもなし。あとFamily Feudという 番組でありながら、家族の構成が遠いことがある。キャプテンから見て、 妹の旦那とその妹とか、一体何等親離れてんねんと、ひとり突っ込んで見ても 栓ないことだが、突っ込んでしまう。
日本では最近視聴者参加の番組が減りつつあるように思うのだが、 アメリカはまだまだたくさんあって、これがなかなか面白いし賞金も でかい。どんなクイズ番組でもだいたい数百万程度の賞金をもらっていく。 で、そのお金がTOYOTAとかパナソニックなどから出ていることも 多く、そのお金頼むからもう少し日本の視聴者バラまいて欲しいものだと 思う。
ホエールウォッチング (1/29/2001)
昨日ロングビーチに行って来た。ロングビーチはLAダウンタウンから 見て真南にある街で、車なら1時間、電車なら50分で行ける。太平洋に 突き出す形にパロスベルデス半島が突き出していて、その内側にはいっている ところにある。その地形的な利点もあって、LA近郊の貨物の積み降ろし港 として栄えた。夜はいざしらず、昼間は穏やかな日差しの下、たいへん綺麗 でのんびりした街である。
この日の様子の詳細は「LA休日の過ごし方」のページで紹介する 予定なのでそちらを見てもらうとして、私達は水族館の後ホエールウォッチング のツアーに参加した。一人14ドルで往復約3時間の船旅でサンペドロ海峡にある 鯨出現のスポットまで連れていってくれる。そもそもアメリカで鯨を見に行くと いう行動は最近のことであろう。グリーンピースの影響も大きい。捕鯨については 日本人は微妙な立場にたっているので、妙な自意識が働き二人とも申込をするとき は日本人と悟られないようにと思ったりもしたが、国際問題をこんなところに 持ち込んでもしかたなかろうと考え直して、堂々と登録をすませた。
申込みをした時は寂しい感じだったので、客が何もツアー会社の経営の 心配などしなくてもいいのだが、二人だったらどうしようかと考えたり、 このツアーがグリーンピースの回し物で、船の上で「鯨を食べる日本人は 野蛮人だ」とか説明が入ったりして、他の乗客が暴徒と化して襲われたら どうしようかとまったくいらぬことを思ったりして出航時間まで待った。 いざ14時の出航になると、あちらこちらからチケットをもった客 が集まり、総勢30ほどになった。で、鯨を見に出発したのだが、結局 鯨は現れず、ただサンペドロの海峡のクルーズとなってしまった。航海中の イベントと言えば、船を追って飛んで来るカモメとの競争そして餌やり、それに アシカが併走して走るというもので、それはそれで面白かった。が、 そんなサブイベントでだまされていてはいけない。一体このイベントで鯨は どれくらいの確率でみられるのだろうか? 鯨を見るツアーだと銘打っている からには鯨が見えなければ7ドルぐらいは返してもらいたいものだと、 不満に思った。が、一人14ドルで30人、客が全部大人としても520ドル。 これで船を維持し、さらに3時間も動かして帰って来るとなると、儲けはいか ほどになるのだろうか。などと考えると、彼らを責めても仕方がないと思った。
結論:鯨ツアーはギャンブルのようなツアーである。
レーガン元大統領 (1/29/2001)
アルツハイマーって治る病気なん?
元看護婦の妻に聞いた。治らんというのが常識らしい。
レーガン大統領は10年程前にマスコミを通じて、 自分がアルツハイマーであることを告白して以後表にはでない と宣言したことを覚えているだろうか。まあ、どんどん病気が進行する わけだし、このままだらだらと元大統領の仕事をして醜態を曝すのもい やだろうし、この告白とともにアルツハイマー治療が進むこと の重要性を訴えて、表舞台から去って行けば、それなりにこの病気の 治療方法の開発にプラスになるだろう。この劇的な身の引き方が妙に この元大統領の映画スターという出自と重なって、私の記憶に深く刻まれた。 もうあれから10年経って、すでにこの世の人ではないと私は勝手に 思っていた。しかし、実はそのレーガンさんがUCLAのすぐ近くベルエアーと いう高級住宅街に住んででいて、まだまだ元気だというのである。 俄に信じられなかったので、上記のような質問を発したわけである。
なぜわかったかというと、レーガンさんは自宅の階段から落ちて 尾底骨を骨折して手術を受けたことがニュースになったからである。 当然、それはUCLAのメディカルセンターでの手術だったわけで そのニュースはDaiuly Bruinにも大きく掲載された。しかも手術後 24時間で既に自力で立上り、執務のために自分の椅子に座ったと いうのである。健常な人でも、そんなに速く回復することはまれだ レーガンさんは元気だと90になるこの老人に最大の賛辞が送られていたが 、私はそんなことよりアルツハイマーがどうなったのか心配だった。 執務ってなんなん?ほんまに執務なんかしてんのか?階段から落ちた? 徘徊して階段から落ちたんとちゃうか?新聞の論調があまりに ホメゴロシだったので逆に気になってしまった。まあ、とにかく マスコミによれば、レーガンさんは今奥さんと一緒に暮らして幸せ な余生を送っているらしいから、余計な詮索はしないのが吉と いうものだろう。
余談だが日本と違って、アメリカでは老人問題と言うのは表面的には 存在しないように思える。おそらくは、公的な年金制度や保険制度を 持たず、介護や医療の問題はあくまでも個人の裁量によっている から問題化しないのであろう。そのような制度がないから、国の財政を 圧迫することもない。だから、社会問題にはなりえない。 お金のある 人は最高の医療や介護を受け、そうでない人はそれなりの老後を送り、それなりの死を 迎えるということだろう。だから、レーガンさんの病気も進行が老化 よりも先に進まなかったと言う説明にも納得出来なくはない。また、 高齢者自身が日本の高齢者と違って、独立心が強く、多くの人が 息子や娘と別居をしているようである。もちろん金銭的な援助は 受けているのかも知れないが、とにかく老後は夫婦二人で生活することが多い。 私の知合いの話であるが、その知人は老婆と部屋をsubletして住んでいる。 そのバアサンは彼曰く「サイボーグになった」のだそうだ。というのも、 そのおばあさんは齢87にもなるのに、いまなお衰えを知らず、 先日足を股関節を骨折したらしい。で、そんな高齢であるにもかかわらず 人工骨頭を体に埋め込む大手術を受け、今なお元気にしており、車で颯爽と LA市内を走っているそうである。知人曰く「90になって、サイ ボーグになっても元気でいたいのかねぇ」とのこと。老後は息子や 娘と同居して、自分の面倒を見てもらうというのは日本人の特徴なのだろうか。
ゴアさん再就職 (1/30/2001)
混乱を極めた今回の大統領選挙のごたごたも、就任式を終え実際の行政活動 が始まると共に既に過去のものとなったようである。今回の選挙では 国民の総得票数で上回ったゴア候補が勝てず、代理人の数でリードした ブッシュ候補が大統領になるという現行制度の矛盾をダイレクトに露呈した。 現行制度に問題があるという話は、しばしばアメリカでも出るようだが、選挙制度 を変えるには、それなりのステップも必要だろうし、制度の不備を修正 するよりも目の前に積まれた多くの国内外の諸問題に対処して行く方が 重要だと考えられるのか、今もって修正される気配はない。また、現行 制度で勝利した人がその制度を自発的に変えるとも思えない。いずれに しても、新しい治政が始まり国民が二つに分裂気味だったアメリカはも とのアメリカに戻りつつある。
さて、前大統領のクリントンさんは、晴れてNY藩主の奥さん に養われるという身分になって安泰なのだが、前副大統領で今回の 大統領候補だったゴアさんはどうしているのだろうか? と思っていたら、 今年からUCLAの客員教授として定期的に講演活動をするという。 ひょっとしたら講義を持つかも知れないというのである。
アメリカでは元大統領といえどもそのポストを辞めれば、ただ の人である。退職金が出る訳でもなく、おまけに大統領は自費で 自分の在任期間中に交わされた公文書を保存する図書館を建設 しなければならない。(維持は政府がしてくれるそうだが) 彼に 残された特権は元大統領としての公的行事参加のための交通費と 通信費を政府が負担してくれること ( もちろん、その経費は毎年 上院に申し込んで議会の承認を得なければならない) と、連邦ビル の中に自分のオフィスを 持たせてくれることぐらいであるらしい。前大統領で、そんな状況なら前副 大統領に何かの特権が残されているとは思えない。ゴアさんは もちろん、次の選挙に出馬するために準備( まずは自分の政党 の指名を受けなければならない。前回の候補だったからと言って 4年後に候補になれるかどうかはわからない。全ては、これからの4年 の活動にかかっている )するだろうから、元の職業 ( 何をしていたのか 私は知らないのだが ) に戻って、閑居しているわけにもいかないだろう。 だから、UCLAなどの大学でこうした、非常勤講師などの安定した職業を 得て、政治活動を続けるのが一番よいのかもしれない。また、元副大統領 が大学の教壇に立つと言うのは、学生にとっては魅力的なことだと思う。日本では 議員内閣制をとっている以上、行政に携わらない時は国会議員だから そういう再就職というのも考えられない。

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