名大入試の一番の特徴は筆記試験が課されること。
この文章を書いている私は必ずしも筆記試験に賛成とは言いがたいのですが、
試験の形式がこうなっている以上、ここで制度をどうこう言っても始まりません。
筆記試験にどう臨むかを考えてみましょう。
筆記試験にも悪い点ばかりがあるのではなく、
制度をうまく活用すれば
合格に活かすことができます。
筆記試験は面接等と違い、客観性が高い試験であり、
過去の履歴と関係なく試験の答案のみで
点数が決まります。ですから、あなたが、今まで
(たとえば特定の教員に)「あまりできの良くないやつだ」と
烙印を押されている場合には
むしろ十分挽回可能なチャンスと考えましょう。
試験の点数には、学部の成績も、学習態度も、
修論も研究計画もまったく関係ありません。
筆記試験は、3年生までの学習範囲を出題範囲としていますから、
短い時間で試験対策をすることはおよそ不可能です。
ですから短期の試験対策はあまり意味がないと考えられます。
ただし、セミナーのように黒板の前で方針を述べるのと、
紙に論理を書き下すのはいささか勝手が違います。
筆記試験の特徴ですが、
修論等と比べはるかに短い3時間という時間制限の中で
まとまった答案を書くのはある種の特殊な技能ですから、
直前に答案をスムースに書く練習ぐらいはしておきましょう。
皆さん、以前はその能力があったわけですから(修士の入試や
学部科目の期末試験)、それを思い出す程度に、
過去の後期課程入試や前期課程(修士課程)入試問題の
答案を2〜4年分ぐらい作成してみることをお勧めします。
過去の筆記試験では1つの時間内で
必須問題と選択問題が混在しています。
それぞれの出題の目的は公開されていませんし
募集要項にも書かれていませんが、過去の問題から
判断する限りだいぶニュアンスが異なるようです。
必須問題では、、、、(あとでかく)、、、
では必須問題と選択問題のどちらに力を入れるべきでしょうか?
、、、(ここはあとでかく)、、、
また、選択問題の選択に迷ったらどう対処すべきでしょう。
あなたの専門が数論であったとしても、
代数の問題と心中すべきかどうかは
自明ではありません。
代数で自分の慣れていない環論の問題が出て、
解析で関数論の問題が出ていた場合(そういう例はないけど)、
解析の問題を解答するという選択肢もあり得ます。
偏微分方程式論を学習していても幾何という可能性もあり得ますし、
境界分野に属していればなおさらです。
では、こういう選択は今後の専門とつじつまが合わなくて
面接で窮地に陥らないだろうか?
そういう心配は無用です。
ある問題を選択しなかったからといって
その問題ができないことを意味しないし、
また、後期課程入試(=入り口)のような試験では、
何ができないかチェックするよりも
何ができるのかを披露してもらうことに
重点が置かれるべきである(と筆者は期待しています)。
また、選択問題のどれもがおよそ自分の学習してきたこととは
外れていて、解答できないと思ったときはどうしたらいいでしょう。
この場合は試験のねらいをふまえて次のように考えましょう
、、、(これについてはあとでかく)、、、
しかし、この出題の形式(必須+選択)が続くのかどうかも
わかりませんし、そもそもあまり作戦的なことを考えるのに
意味がある試験かどうかはわかりません。
筆記試験は採点されます。 通常は各大問 1,2,3 などごとに配点(たとえば30点)が決まっていて その範囲で小問 (a)(b)(c) などの配点が (たとえば10+5+15 のように)決まります。 当たり前ですが、小問の配点は自然数であり、 負になることはありませんし、 受験生に依存せずに一定です。 そして 同じ答案には同じ点がつきます。 例えば、 2枚の答案用紙の問 3(b)の答案が実質的にまったく同じで、 その途中に 「fn(x) は n → ∞で0に収束する」 と書いてあったとしましょう。 もちろん両者には同じ点がつきます。 しかし、これが面接であったらどうでしょう。 面接では総合的な能力が問われるので、 その解答の前後にかなり疑わしいことを言った場合と 説得力のある発言をした場合では、 同一の発言が持つ意味合いは当然変わってきます。 上記のような例では、 「この学生は先ほども位相の初歩的な点で変なことを言っていた。 各点収束と一様収束の区別がついていないのではないか?」 という疑義を持たれる場合もあれば、 「この学生は位相については良く理解しているようだ。 ここでも簡潔に本質的部分だけを発言しているのだろう」 という解釈をされる場合もあります。 この2つの事実、 「負の点数がつかない」 「答案用紙に点数を与える対応は写像である」 という事実から、どのようなことが導かれるでしょうか。 これは多元数理の後期課程入試に限らず、 すべての筆記試験、特に(合格「定員」の縛りが効いてくる 大学入試のような相対的試験ではなく) 合格「水準」の決まっている絶対的試験 で成り立つ一般的な考察が可能です。 (このあと、後述。)
多元数理に限らず、
今後の研究計画の提出が義務づけられている大学は
他にも見受けられます。
提出書類はどのように準備すれば良いでしょうか?
また、留意すべきポイントは何でしょう?
(、、、まずありきたりなことを書いておく、、、)
最後に、どんな書類でも読み手があります。
このように時間をかけて書くことが想定されている
文章はいわば、手紙のようなものです。
読み手とは入学後も長くつきあって行かなくてはいけないですし、
そのための自己紹介が提出書類だと考えられます。
筆記試験の答案はいわば瞬発力を見るものであり、
短時間で解ける同一の問題に対する解答は
メッセージとしてはあまり意味のあるものではないのです。
教員は、いくつもの(不完全な)研究計画書を読まされて
いささか退屈しています。
ですから、計画書には許される範囲でのユーモアや
飛躍を盛り込み、最後まで飽きさせずに読ませる工夫を
してください。書き手が十分楽しんで書いているので
なければ、書かれている計画が3年も長続きすると
納得できるはずがありません。数学的準備ができたら
作文の前には大好きな映画を見たり本を読んだりして、
大きくリラックスしてはじけましょう。
修士論文はたいていの院生にとって、初めて書く論文となるでしょう。 そして、一部の例外的場合を除いて、 その内容がそのまま欧文雑誌に投稿するレベルに 達していることはないのだと思います。 安心してください。 では、総合学習報告によしあしがあるのはどうしてでしょう。 また、審査する教員はどのような点を見て 修論のよしあしを判断しているのでしょうか?
(、、、まず修士論文の作成要領を研究科の 資料を元に簡単にまとめる、、、) 以上のように、 修士論文は、修士課程の修了要件でもあります。 ここが難しいところなのですが、 修士論文は、 修士課程としては「終わりの区切り」、 大学院5年(前期課程+後期課程)としては 「通過点」なのです。 極論すれば、「区切り」としてはやはりある程度のまとまりが要求され、 一方、「通過点」としてはこじんまりまとまるよりも 発展性、飛躍性が感じられるものの方が望ましい と考えられます。 ではどうしたら良いでしょう。(、、、後述、、、)
服装は自分がリラックスできることと、 面接員が不快に思わないことが大切です。 例えば数学系大学院では 教員側がほとんどネクタイをしていないので、 スーツ等を着る必要は全然ありません。 ジーンズでも問題ありません。 もちろん、面接のようなフォーマルな場では スーツの方が落ち着くということであれば、 スーツでもおかしくはありません。 (ついでながら、学振や就職の面接などで、 相手が数学系大学教員だけではないときは 少々考えた方が良いでしょう。 服装に主義主張があるのだったらそれはそれで良いけれど。)
それよりも、面接試験は手ぶらで臨みましょう。 試験会場への紙類の持ち込みは禁止は されていないかもしれませんが、 紙を見ながら発表をしたり質問に答えるのは 印象が著しく悪いものです。 そもそも試験だし。 短い面接時間で黒板に書くほどの重要性の高い式を、 紙を見ながらでしか書けないようでは、 良く理解していないことを 自ら積極的にアピールしているようなものです。 関連することとして、人名や重要概念のスペルや漢字は 正確に書けるようにしておきましょう。 大先生ならご愛嬌で済みますが、 学生が自分の書いた修士論文の狭い範囲でそれをすると、 面接員に疑いがむくむくと広がってマズいことになります。 重要な式や人名はそんなに多くはないでしょう。
筆記試験があり、
しかも修士課程で複数指導教員制度をとっている以上、
不合格の可能性はゼロとは言えません。
実際、毎年3割の志願者が不合格となっています。
従って、大学院後期課程への進学希望をぜひかなえよう
と思ったら、
他大学大学院への併願も十分考えに入れたいものです。
ところが実際、どの大学でもたいてい
修論の発表会や後期課程の入試は2月の
中頃(学部入試前期日程の始まる2月25日より前)に
集中しています。しかも、前期課程(修士課程)の入試
などとちがい、他大学からの志願者や併願者にあまり
配慮がなされていません。
各大学の年度末の運営日程(教授会等)の
つごうで試験日程が組まれていることが多いのです。
従って、ある大学で面接を受けた後、その日のうちに
新幹線で移動して翌日の早朝から筆記試験などという
強行日程も実際あります。面接試験は精神的にも
効くし、初めての大学でほとんど面識のない面接官との
やりとりや長い待ち時間も疲れます。
2月は寒く、インフルエンザなどの病気にも注意しなければなりません。
しかし、そんなことで臆してはいけません。
研究も長丁場。やがては長い距離の移動も時差ぼけさえも克服して
研究発表をして行かなければなりません。
健康や体力も能力のうちと考え、上手に対処しましょう。
準備は入念に、行動は大胆に。
無事合格して4月に後期課程に進学したら、 すぐにも学術振興会(=学振)の特別研究員の申請書の提出期限が待っています。 義務とは言いませんが、ほぼ必須であると考えてください。 一番若い DC1は修士課程の院生しか出せませんから、 皆さんは真ん中のクラスの DC2 で勝負することになります。 ちなみに、一番上のクラスは博士の学位取得後の PD と呼ばれています。 競争のルールは学振が公開しているもので グローバルスタンダードですから、 学内や研究科内の基準とは関係がありません。 全国の大学からの申請書との競争ですし、 しかも(奨学金などと違って)大学ごとの枠などは 一切ないので、あなたと同時に入学した同級生は 直接の競争者ではありません。 内部での足の引っ張り合いは無意味です。 有意義に共闘しましょう。 (例えば、お互いに審査員になったつもりで申請書類を読み合って 意見を述べあうことも書類作成の際に有効なようです。) 実は、特別研究員の採用率は後期課程の合格率に比べるとはるかに低いもので、 後期課程に合格したからと言って特別研究員に採用されるとは限りません。 しかし、採用率は1割と2割の間ですから、もちろん 皆さん(の中の誰か)に可能性は十分あるのです。 後期課程の1年生 (D1)として どの程度のことが期待され要求されているのか、 実現可能な研究計画であると審査員を納得させるには どのような活動をしておくことが必要であるのか、 合格と同時に早いうちから準備することが 望ましいのはいうまでもありません。 大学院合格はゴールでなくスタート地点です。 4月の入学ガイダンスから準備を始めたのでは はっきり言って遅すぎて、 採用に至るのは困難です。