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講演内容アブストラクト
1.四角形の分類の双対性

 濱中 裕明


 正方形、長方形、平行四辺形等、小学校の算数の段階から特別な性質を持つ四角形が登場します。ところで、平行四辺形の「定義」は、もちろん2組の対辺が平行であることですが、これと同値な条件は幾つもあります。それを踏まえて、四角形の分類を考えなおしてみると、そこには美しいある種の双対性が見えてきます。
 その双対性とは「角の大きさと辺の長さ」「頂点と辺」といった概念を互いに対応させるような双対性であり、その双対性によって「長方形」が「ひし形」に、「等脚台形」は「凧形」に対応します。
 四角形の分類におけるこの双対的様相を念頭におくと、ひとつの「四角形」が浮かび上がります。つまり「台形」=「隣り合う2組の角の和が等しい四角形」に対応する、「隣り合う2組の辺の和が等しい四角形」という概念が自然に登場してもよさそうなものです。この「四角形」は何なのでしょうか。そもそも、この「双対性」の正体は何なのでしょうか。
 この双対性は神の見えざる手の如くで、完全に理解できているわけではないのですが、この双対性によって、一つの証明から双対的な別の証明が見えてくるなど、四角形にまつわる幾何を考える際の便益が得られます。この双対性に関して分かっていることを紹介したいと思います。
2.高大接続に資する数学試験とはどのようなものか?
−その形式や内容の可能性−
 安野史子

 高等学校教育の質保証,大学入試改革は現在日本の教育が直面している大きな問題の一つですが,これらに対し昨年12月に「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育,大学教育,大学入学者選抜の一体的改革について(答申)」(中央教育審議会)が取りまとめられ,これに基づく国としての改革の具体的なプラン「高大接続改革実行プラン」が動き始めています。
 実は,数学教育でこれとは別に,高大接続に資する数学の試験に関する調査研究をここ数年間にわたり行ってきました。今回はそのうち二つの報告をします。
 一つ目は「解答形式による試験のパフォーマンスに違いがあるのか?」をテーマに,『大学入試センター試験』に代表される「穴埋め形式」,個別学力試験で広く採り入れられている「記述形式」,日本ではほとんど見られない「選択肢形式」の三つの形式が,試験の成績にどのような違いを生むのかの検証を行った結果です。
 二つ目は「『数学活用』の科目の内容が高大接続の評価にどの程度使えるのか?」ということをテーマに,平成21年度告示の高等学校学習指導要領における創設科目「数学活用」の内容を視野に入れ,特定の数学の科目内容からの出題でない総合的な出題,社会生活などの現実場面を題材にした数理論理力,問題解決能力などを測ることを目標とした試験を試作し,試験の実施,結果の評価まで,一連の作業を行い,その実現可能性等の検討を行った結果です。
 どちらも具体的な調査問題を紹介しながらお話したいと思います。