講演内容アブストラクト | |
1.双曲幾何(非ユークリッド幾何)への誘い 糸 健太郎 平面のユークリッド幾何においては,平行線の公理を仮定しています。すなわち,ある直線とその上にはない点に対して,この点を通りもとの直線に交わらない直線がただ1つ存在します。 一方で球面上の幾何では,2つの「直線」(球面の大円)は常に交わってしまいます。 今回は,平面幾何,球面幾何に並ぶもう一つの幾何(双曲幾何)のお話をします。この世界では,「直線」とその上にない点に対して,この点を通りもとの「直線」に交わらない無限個の「直線」が存在したり,3角形の内角の和が180°より小さくなったりします。 この双曲幾何を,平面の上半分もしくは円板において具体的に展開する方法を説明します。また時間が許せば,多くの曲面において双曲幾何こそが馴染みのいい幾何であることを説明します。 |
2.数学史の教育的意義について −和算を例にして− 上垣 渉 学校で数学を教えている先生なら,生徒が数学に親近感を持ち,「数学にも,おもしろいところがある」などの思いを抱くことを期待していると思う。数学史的知見はそのような先生に必要な教育的手段の1つではないだろうか。その教育的意義としては,少なくとも, (1)授業展開に活用できる。 (2)授業で使える新しい問題を発見する。 (3)数学への関心,親近感が期待できる。 が考えられると思っている。他にもあるだろうが。ただ,現在の学校数学のすべての内容に対応できる数学史的知見を私は持ち合わせていないことをお断りしておく。 今回は日本の「和算」を例にして,上記の教育的意義について具体性を持たせた話をしたいと思っている。使用する予定の和算書は,百川治兵衛『諸勘分物 第二巻』,千野乾弘『籌算指南』,中根彦循『勘者御伽双紙』,吉田光由『塵劫記』寛永18年版,千葉桃三『算法少女』,吉田光由『首書改正算法指南車』,不破仙九郎(環中仙)『和国智恵較』などを考えている。 |