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講演内容アブストラクト
1.交代符号行列をめぐる物語

 岡田 聡一


 交代符号行列とは,1, 0, -1 を成分とする正方行列で,各行,各列の成分の和がいずれも 1 であり,各行,各列において 0 でない成分 1 と -1 が交互に現れるようなもののことである.
 この交代符号行列は,1980 年代半ばに Robbins, Rumsey によって置換行列の一般化として導入された.彼らは,2 次正方行列の行列式の計算を繰り返すことによって大きいサイズの行列式を計算する Dodgson (Lewis Carroll として有名である)のアルゴリズムに,パラメータを導入し行列式を一般化しようとして,交代符号行列の定義に至った.そして,Mills, Robbins, Rumsey によって交代符号行列の個数の公式や平面分割などの組合せ論との関係が予想され,主に組合せ論や代数学の研究者を中心にその研究が進められてきた.
 一方で,統計物理学のモデルである 6 頂点模型との関係が見出され,Kuperberg がその分配関数を用いて交代符号行列の個数に関する Mills-Robbins-Rumsey 予想に簡潔な証明を与えたことから,数理物理学者も研究に参入するようになり,Razumov-Stroganov 予想など交代符号行列と数理物理学とのミステリアスな関係も浮かび上がってきている.
 この講演では,このような交代符号行列の研究の歴史と現状について解説したい.
2.新学習指導要領での統計指導に向けて
  ―高等学校における先行実践事例から―
 武沢 護


 新しい学習指導要領では,高等学校数学において確率・統計分野(特に統計分野)に大きな変化がありました. 過去においても高等学校数学で統計分野は設置されてはいましたが,選択であったり大学入試の範囲から除外されてきたこともあり,実際の授業での扱いは非常に軽いものでした.今回,数学氓ノ必修として「データの分析」が導入されましたが,新学習指導要領のもと実際の授業や大学入試で十分に扱われるかは非常に疑問です.
 ここでは,統計指導の先行実践事例(教科「情報」における事例)として本校(附属高)でどのような教科書を使い,どのような試験やレポート課題を実施しているか具体的に紹介します.また,これらの教材開発で参考にした英国のカリキュラムや大学入試問題さらに統計の内容で純粋数学的な側面をもった話題(演習問題)も紹介します.そして,この統計分野の内容を数学的に豊かなものにするにはどのようにしたらよいか一緒に考えようと思います.