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講演内容アブストラクト
1.バランス制御から集団追跡と逃避
  ―数理モデルの例として―

 大平 徹


 このセミナーでは「ノイズ」や「ゆらぎ」と情報伝達や相互作用の「遅れ」が生み出す、いくつかの現象と数理について紹介をします。この二つの要素は、単純な様相しか示さないようなシステムにおいても、多くの複雑な現象を生み出します。たとえば、人間が指先で棒を倒立させる、倒立棒制御のような単純な動作にも、この二つの要素は存在します。その他、符号化システムや歩行流の衝突などのモデルでの「ゆらぎ」や「遅れ」の生み出す現象を紹介します。
 また、あわせて最近提案しました「集団追跡と逃避」のモデルについて紹介します。追跡と逃避の数学は300年以上もの長い歴史を持ち、おもに1対1の状況が研究されてきました。一方では、動物、昆虫、自動車、人などの「群れ」の研究が、近年数理、物理の分野で盛んにおこなわれるようになりました。「集団追跡と逃避」ではこの二つの研究の流れを融合して、集団対集団が「おにごっこ」をするような状況をモデル化して、新しい研究課題として提案しています。集団内の個々の動きは非常に単純な場合でも、集団としては意外と複雑な様相があることを報告します。
2.高等学校数学科での統計指導について
  ―「データの分析」設置の背景と意図,教材事例について―
 青山 和裕


 高等学校数学I「データの分析」の新設や中学校数学科「資料の活用」など、統計関連の内容が新規に盛り込まれ、いわゆる統計教育の充実が図られている。統計教育は諸外国においてもその重要度を増しており、教育課程における比重を高めているが、日本はかなり遅れをとっており、新設されたとはいえ教育内容も先進国の中で相当に稀薄といえる。
 とはいえ、「箱ひげ図」などわが国の教育課程において初めて指導内容として扱われるようになった内容もあり、現場の先生方にとっては自身も学生時代に習ったことがない内容をいきなり教えるという状況に直面し、相当の混乱も生じている。
 本講演では、なぜ統計教育が重視され教育課程に取り入れられたかという背景から辿り、具体的な教材や一部の学校で取り組まれた「データの分析」の授業実践の事例などを通して求められる授業や教材の在り方を例示する。また大学入試における出題傾向などについても、現時点で提供できる情報を提示するので、今後の指導の一助としてもらいたい。