講演内容アブストラクト | |
1.ピタゴラス数とガウス整数 松本 耕二 直角三角形の三辺の長さがすべて整数であるとき、その三つの整数の組を、ピタゴラスの定理にちなんで、ピタゴラス数といいます。ピタゴラス数の研究は実際にはピタゴラスよりも更に遥か以前、古代のメソポタミアで既に始まっており、全数学の中でも最も古い研究テーマのひとつであると言えるでしょう。 このピタゴラス数は、4で割ると1余る形の素数は2個の平方数の和で書ける、という定理と関係し、その中からガウスの整数と呼ばれる、整数の概念を複素数に拡張した理論の意義が浮かび上がってきます。そしてガウスの整数の理論こそ、代数的整数論と呼ばれる壮大な理論体系への入り口だったのです。 今回はピタゴラス数を導きの糸として、こうした理論の玄関口を覗いてみたいと思います。 |
2.中学校と高等学校の結びつきを大切にした数学教育の試み 牧下 英世 高等学校の数学の授業は,定義,定理,性質,例,例題,練習のサイクルによって進められることが多い。そのため,新しい構造が出てくると生徒は意味が分からずに納得がいかないまま,上記のサイクルに乗って通り過ぎてゆく。また,教師は生徒が練習問題が解けるということで新しい構造の理解が定着したと感じていることも否めない。 この問題は新しい構造を,生徒に意味のあるものとして説明していないことが最大の原因である。高等学校の内容は構造をより抽象化していくことが一つの役割でもあることは言うまでもない。しかし,新しい構造を前記のサイクルによって次々に学習してもその理解の定着は難しいだろう。新しい構造が意味のある概念として,生徒自身が自らの概念に取り込む経験をさせることが重要であると考える。現任校でのこれまでの教材開発研究から,中学校で学ぶ幾何の内容と絡めて取り扱うと有効であることが分かってきた。 本講演では,数学の新しい構造として高等学校で学ぶベクトルの内積や2次関数,3次関数のグラフなどを,幾何の内容を用いて説明した取り組みを紹介する。また,生徒の問題づくりや勤務校のSSH研究の一端を紹介し,参加者と議論を進めたい。 |