top | サイトマップ | 講義 | 名古屋大学数学教育セミナー | 大学数学基礎教育ネットワーク | 数学教育 | リンク | 連絡先
講演内容アブストラクト
1.なぜeとπとは重要か?
 ―学校数学解析学の系統化―
 浪川 幸彦


 小学校から高等学校までの学校数学を数学的な立場から系統化することは,学習指導要領の統一的な見方を与える上で重要である。
 ここでは初等関数論と微分積分学との系統化を考える。
 前者では指数・対数関数および三角関数を加法・乗法・回転を関係付ける(準)同型写像と見ることを基本とする。これによって数学理論内での「標準単位」としてe とπが特徴付けられることが分かる。いわゆるオイラーの公式はこの関係性を明示したものである。またこれらの関数およびべき乗関数は変化のパターンの分類からも得られる。
 後者では,微分積分学と差分法との平行性に注意し,これに統計・確率を組み込んでいく。
 これらの観点は気付けば難しいことではないが,それによって学校数学にある統一的な像が得られることを指摘したい。
2.学校数学における幾何的内容の系統
 ―ファン・ヒーレ学習水準論による系統の分析―
 高橋 聡


 我が国の学校数学における図形や幾何学に関わる教育内容(幾何的内容)の系統は,「説明」から「論証」に至る系統をその軸に据え,一定の成果と評価を得てきた。
 その背景の1つに,数学教育学における重要な理論である「ファン・ヒーレによる学習水準論」がある。これは,オランダの中等学校の数学教師であったvan Hiele夫妻によって提唱されたもので,幾何学習の5つの思考水準とその水準を上げるための5つの学習段階から成る理論である。
 しかしながらこの理論は,いわゆる初等幾何学の学習水準を記述したものであり,例えば我が国の中・高等学校における幾何的内容の学習水準やそれを意識した教育課程を記述あるいは分析するには,不十分であることが指摘される。
 今回の発表では,ファン・ヒーレ理論を紹介するとともに,この理論による幾何的内容の系統の分析を試みる。そのうえで,今後の中・高等学校における幾何的内容の系統の在り方について考察を深めていく。