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講演内容アブストラクト
1.大学入学者選抜「全国規模共通テスト」問題の変貌 ―能研テスト以降の数学問題について―
 安野 史子


 わが国における大学入学者選抜は,工夫・改善の長い歴史を持っている。現在,大学入試センター試験が様々な問題を抱えつつもすでに20年以上続いていることは,歴史的に見て奇跡的であるとも言える。戦後そこに至るまで,大学教育を受けるにふさわしい能力・適性等を有する者を合理的,客観的方法により選抜することを目指して,様々の試みがあった。全国規模の共通テストということでは,昭和20年代に「進学適性検査」,30年代後半から40年代初頭にかけて,「能研テスト」の導入等が試みられた。「進学適性検査」は,文科的,理科的,一般的の3種類で構成され、教科科目に依存しない問題であったが,「能研テスト」では,共通的・客観的テストとして,数学を含む5教科17科目の学力テストが実施された。
 「能研テスト」は,主として多肢選択による客観テスト形式による出題で,解答はマーク方式によるものであった。その後,国立大学協会による多肢選択方式と穴埋め方式が混在した共通第一次試験実地研究試験を経て,周知のとおりの大学入試センター試験の形式へと変貌していった。
 ところが,2008年12月の中教審答申「学士課程教育の構築に向けて」を受け,本年9月には「高大接続テスト(仮称)」の協議・研究報告が取りまとめられるなど,新たな動きが現れてきた。
 こうした状況を踏まえ,今回は,能研テストから共通第一次学力試験・大学入試センター試験の数学問題の変貌について,具体的に問題を提示して,お話をしたい。
2.水、水、水 ―豊かな水の世界―

 大峯 巌


 水は我々の生存にとって大切な物質であり、美しい自然を作り、多くの詩にうたわれ、人の心のより所になってきました。穏やかな性質の物質と思われていますが実は非常に変幻自在にその姿を変え、ある時は激しく物質をどんどん分解し、ある時は大きな包容力でものを包み込みます。このような変幻自在な水の性質が如何に生まれているかを、ミクロのレベルから説明します。
 これらの水の特徴は、水の中で水分子が乱れた3次元のネットワークを作り、いろいろな変化をすることから生まれています。水素結合は“数学的”にはDirected Graphであり、個々の水素結合は、ある確立で切断しまた再結合を行っています。3次元の水素結合のネットワーク「構造」には相当の長さの時間の「相関=記憶」が存在しているようです。局所的な3次元構造を立体ユニット(Fragements)で分類すると、立体ユニット同士の中間的な長さの相関を記述でき、いろいろな水の性質を説明する事が可能となります(なるようです)。
 話題として、(1)水のミクロの構造、すなわち水分子同士を結びつけている水素結合のネットワークの構造とその変化、それを如何に捕らえるか実験観測の問題、(2)水の性質の温度による変化、すなわち「水はいかに凍り?また氷はいかに融けるのか?」、(3)高温高圧時の水、すなわち超臨界水のようすと、非常に高い反応性について、さらに(4)生命と水や(5)他のいろいろな分野との関係(環境・エネルギー問題、気象学、惑星の水、地球内部の水)、などを物理化学の立場から話します。