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講演内容アブストラクト
1.ガロアの夢は広がる

 梅村 浩


 Galois の短くも激しかった一生のことを思い、彼の生れた町をさまよっても、たいしたものは見つからない。そもそも数学者の業績の跡を、個人の幸福とかを尺度にして地上に求めるのが誤りなのであろう。
 Galois は体の拡大に関する Galois 理論と呼ばれる理論を発見した。Galois 理論により、一般の5次方程式が加減乗除と根号では解けないことを学ぶ。これにより歴史的な難問に終止符を打ったと教科書には書いてあるとしたら、大きな間違いである。Galois 理論の発見は終点ではなくて、近代の代数、数論の出発点である。
 決闘の前夜に書いた遺書を見ると、彼はさらに大きな構想を持っていたことが分かる。Galois 理論の解析学への応用である。Galois の死後この考えを最も推進したのが、S. Lieである。この理論は19世紀の終わりから、20世紀の初めにかけて盛んに研究されたが、その後問題が困難なこともあり、研究されなくなり、そして忘れられてしまった。しかし、この10年位の間に復活をとげた。Galois の夢のこれまでの発展、現代数学との関わり、将来を展望しよう。
2.数学教師を目指す学生にどんな数学を学ばせるべきか
−教員養成現場の数学教員の視点から−
 丹羽 雅彦


 数学会教員養成大学・学部数学教員懇談会の有志の間で、平成10年度教員免許法改訂によって教科に関する科目の必修単位が40単位から20単位に減少したことによって教科専門の教育が極めて不十分になり専門的資質・能力が形成されていないという危機感を共有し、何らかのアクションを起こさねばならないという意識から、三重大の蟹江教授を中心に2年余り前からプロジェクト「数学教師に必要な数学能力に関する研究」を始めました。
 私を中心とした第1チームの目標は、教員養成学部の数学専門科目の現状を把握することとこれだけは学ばせたいという標準的なモデルを作成することです。1年目の試行錯誤から2年目の昨年度には調査を成功させて、教員養成学部の数学専門科目の講義内容の現状とどのような数学的な内容を学ばせたいと考えているかを初めて把握できたと考えています。それを基礎として、国立大学法人教員養成大学・学部の数学教員の考える「数学教師を目指す学生に学ばせるべき数学の内容の標準的モデル」をまとめました。
 学ばせるべき内容かどうかの根拠は、ある1つの理論から導けるものではなく、養成現場の教員の意識の総和が重要な意味をもつと考えています。
 教員養成学部に属する数学教員が数学教師を目指す学生をどのように成長させたいと考えてきたかを報告したいと考えています。