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講演内容アブストラクト
1.OECD-PISA「数学的リテラシー」評価枠組みの再考 −H.フロイデンタールの数学教授論を視座として−
 伊藤 伸也


 OECD-PISA調査は、わが国の算数・数学科の学習指導要領改訂の指針としての役割をも担った。このPISAの「数学的リテラシー」評価枠組みの中核的背景をなす数学教授論は何か。それは、20世紀を代表する数学教育学者ハンス・フロイデンタール(Hans Freudenthal: 1905-1990)の数学教授論である。
 本講演では、第1に、フロイデンタールの数学教授論がPISAの「数学的リテラシー」評価枠組みの背景であることを具体的包括的に確認する。第2に、フロイデンタールの数学教授論を視座とすることで、「数学的リテラシー」として再認識されされるべき能力を提起し、数学教育の実践と研究の指針を示したい。
2.確率論を語る
−特にその教育法をめぐって−

 飛田 武幸


 温故知新:先覚者によって培われ,しかも風雪に耐え現代に活きる確率論のアイディアを見よう。
 「確率論はギャンブルの数学だ」というのは,すでに死語となった。「確率とはルベーグ測度である」といって現代数学の中にデビューしてから約80年を経過した。今や「偶然」,「揺らぎ」を扱う伝統的な議論も洗練され,新しい内容も加え,確率論は科学の中で大事な位置を占めている。内容のキーワードは,独立,予測,無限次元,ブラウン運動などであろう。
 確率論を語るには,単に事実を知るのではなく,成長の過程を生き抜いたアイディアを見ることが重要で,この立場は教育法にも通じることである。
 ガウスの例を見よう。膨大な測量データの誤差 ! 「チリも積もれば山となる」が,誤差はガウス分布で,それを彼は理論でも示した。多数の現象を扱うとき,極限定理が登場する。アインシュタインはブラウン運動を数学にした。なぜ偶然量が現れるのか? 考えてみたい。
 確率論はオーソドックスに考え,易しく理解する。それが学生のみならず,自分自身の理解への王道である。教材として学生に考える問題も提供する。そこには創造の科学としての確率論がある。