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講演内容アブストラクト
1.複雑ネットワークの数理モデル
 永尾 太郎


 数多くの頂点を辺でつないだ複雑ネットワークの理論が、最近のインターネットの発達に刺激されて、注目を集めている。さまざまな現実のネットワークの普遍的な性質として、スモールワールド性とスケールフリー性が見出されている。
 スモールワールド性とは、頂点を隔てる辺の数が意外に少ないことを意味する。頂点を隔てる辺の数の平均が、頂点の総数に対数的に依存しているためである。
 スモールワールド性は、ツリー(樹状)グラフにおいて簡単に実現される。ツリーグラフよりも現実的なモデルとして、頂点がランダムにつながったランダムグラフを考えることもできる。ランダムグラフにおいても、スモールワールド性が実現される。
 一方、スケールフリー性とは、頂点に直接につながった辺の数の分布が、べき分布になっていることを意味する。スケールフリー性は、ツリーグラフやランダムグラフにおいては実現されない。そのため、グラフの生成過程をとり入れたモデルが考案されている。
 この講演では、複雑ネットワークのモデルとして、ツリーグラフとランダムグラフを解説するとともに、スケールフリー性を実現するモデルについても紹介したい。
2.高等学校新学習指導要領の概要
 浪川 幸彦


 本日講演予定であった新井紀子氏が急な事情でお出でいただけなくなった。代わりに浪川が,3月に公示された高等学校新学習指導要領の数学についてその概要を説明した。
 まず全体の方針として,言語力の充実と学習活動の重視が言われている。数学は広い意味での言語教科との位置付けから,重視される。特に論理的な思考力,体系的知識の学びに留意する必要がある。学習活動として,「数学的活動」を重視すべく,「数学I」,「数学A」には課題学習が取り入れられ,また従来の数学基礎が数学活用へと発展した。学習者による主体的学習を通して数学学習への動機付けを強めることがねらいである。
 内容的には「市民の数学」の立場から,統計的内容が重視され,必履修科目である「数学I」に盛り込まれた。これは史上初めてのことで,教員の経験不足が懸念材料である。また「数学A」には初等整数論が導入された。