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講演内容アブストラクト
1.発散級数に意味がある?!
 三宅 正武



 無限級数の和を現在のように有限和の極限として定義したのはフランス人数学者コーシーで,19世紀前半のことです。収束しない無限級数は発散級数と呼ばれ,教育の中では,意味を持たないものとされてほとんど取り上げられません。
 ところで,発散級数 1 - 1 + 1 - 1 + 1 - 1 + … を調べてみましょう。この級数に“和” S があると仮定すると,
   S = 1 - 1 - 1 + 1 - 1 + …
     = 1 - (1 - 1 + 1 - 1 + …) = 1 - S.
    ∴ S = 1/2
が得られます。この S = 1/2 は何か意味があるのでしょうか?
 この疑問に答えようとする研究は総和法と呼ばれ,20世紀前半に多くの研究がなされました。つまり総和法とは発散級数にある規則で“総和”と呼ばれる値を付与することです。ただし収束級数に対してはその和と値が一致しなければなりません。いまの例では,1/(1+x) の x についてのベキ級数展開を考えて,x = 1 と置くことで意味付けができます(アーベルの総和)。
 さらに,ボレルの総和法を使うと,何と
   1 - 1 + 2 - 6 + 24 - 120 + … + (-1)^nn! + …
もその“総和”を求めることができます。
 この講演では,発散級数の総和法をいくつか概観し,さらに微分方程式に現れる発散級数解の総和法と漸近展開理論にボレルの総和法の考え方が適用される様子を紹介します。
2.高校数学における課題学習
−中学校との接続を重視して−
 西村 圭一


 中央教育審議会の「学習指導要領等の改善について(答申)」によれば,高等学校の新学習指導要領では,「数学氈v及び「数学A」に「実生活と関連付けたり,学習した内容を発展させたりして,生徒の関心や意欲を高める課題を設け,数学的活動を特に重視して行う課題学習」が位置付けられるとのことです。中学校では,課題学習は,平成元年版の学習指導要領から導入され,新学習指導要領にも引き継がれています。また,中学校の新学習指導要領では,内容に「数学的活動」が位置づけられています。高等学校における課題学習は,中学校との接続を十分に図り,数学的活動を重視し,思考力,判断力,表現力を伸長させる機会としたいものです。
 このような状況をふまえ,今回は,特に,実生活と関連付けた課題に焦点を当て,数学的活動を重視した,中学校及び高等学校における実践例を紹介します。そして,それらをもとに,中学校との接続を重視した,高校数学における課題学習のあり方について考えます。