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講演内容アブストラクト
1.高校数学で統計について何をどう教えるか? −統計家の意見−
 吉村 功


 一般社会で「統計」について求められる素養は,立場によって異なる.大きく分けると@日常に登場するデータを生活上の情報として使う立場,A技術者や科学研究者のように仕事上でデータを利用する立場,B私のようにデータの扱い方について研究・教育をする立場,の3つである.難しいことではあるが,生徒達が将来どの立場に向かうことになっても,高等学校の教育がそれなりに有益なものであることが望ましい.
 これに応じる教育には数学以外の側面も含まれるが,今回は数学的側面に焦点を絞る.第一は,「統計」での課題を数学の言語で定式化・表現することである.現実社会での事例ではこれが最も難しい.高等学校教育でこれについてのある程度の感受性を鍛えておくことが望まれる.第二は,数学的手段で解答を試みることである.価値基準が複数考えられること,未知・不確定性が条件に含まれることが単純な解を構成できなくさせることを学ばせたい.第三は,統計の場合,数学的解答の現実的・即物的意義に多様性が生じることである.私の試みている社会人教育では,ディベート的にこれを論じることを試みたりしている.高等学校教育でも題材が適切に選べるなら,多様性を議論することが可能であろう.
 私には高等学校での教育経験が全くないので,当日は岡目八目的な私見を述べようと考えている.
2.高等学校における統計的リテラシーの育成
−ディベートおよび統計局Webサイトの活用−
 菅野 栄光


 国際統計教育協会(IASE)は,統計的リテラシーとして「適当な統計的基礎がなく行われる主張を反駁するためにより洗練された概念を適用して疑問視できる態度」をあげています.我が国でも統計教育の軽量化を憂慮する声に押されて,新学習指導要領では重視されることになりました.
 選択制により,実質的に高等学校においてはしばらく統計教育が行われていませんでした.その間,新教科「情報」や「総合的な学習の時間」が導入されました.数学科において統計教育が再開されるにあたって,統計的リテラシー育成のために,情報や総合との連携という視点は重要かと思われます.大量のデータを扱うという意味ではコンピュータの活用も必須です.
 高等学校における実践事例を2つ紹介します.統計資料を論拠としたディベート,総務省統計局のWebサイトにある統計資料を活用した生徒によるプレゼンテーションです.いずれも,数学科以外の教科との連携を視野に入れた実践です.