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講演内容アブストラクト
1.家紋と文様
  − 対称性をめぐる数学 −
 庄司 俊明


 私達の身のまわりには、さまざまな対称性がある。
 動物はたいてい左右対称だし、花には回転対称なものが多い。江戸時代に隆盛を極めた家紋や文様は対称性の宝庫である。また結晶の解析には対称性の追求が鍵になる。
 対称性を数学的に抽象化し、研究する道具として群論がある。たとえば文様は群論の立場からは2次元の結晶とみることができ、17種類に分類される。
 この講演では群の基本的な性質を紹介し、それが対称性の記述にどのように利用されるかを、文様を例にとって解説する。
2.数学教育に
 世界を読み解く市民的数学リテラシーを
 小寺 隆幸


 OECDによるPISA調査は、日本の子どもたちの序列低下という結果にとどまらないより深刻な問題を提起している。それは現実の文脈に置かれた非定型的な問題に対する子どもたちの対応が二極分解しているという事実であり、従来型の習熟の強化や競争はその傾向をかえって助長しかねない。数学教育のあり方の本質的な見直しが求められているのである。
 その際にPISAの数学的リテラシー論とその背後にあるDeSeCoのコンピテンシー論に学ぶべきであろう。そこには社会を担う良識ある市民が世界と相互作用的に関わる為に数学を獲得しなければならないという視点が貫かれている。
 特に21世紀は、地球環境問題が深刻化する中で、一人ひとりが持続可能な社会の担い手として主体的に行動することが求められている時代である。そのような市民にとって必要な数学的リテラシーを育むという目標を据えて数学教育のカリキュラムや授業のあり方も見直されねばならない。
 当日はこのような問題意識を提起し、実際に私自身が中学校で試みた授業を紹介しながら、新たな数学教育のあり方を皆さんと共に考えていきたい。