Hiroyuki Ochiai, Invitation to Atlas combinatorics


半単純リー群のユニタリ表現の分類を手がけるAtlas project(J. Adams, D. Vogan らが主催)では、実簡約(real reductive)線形代数群のadmissible 表現をパラメトライズし、それに関するいくつかのプログラムが公開されています。www.liegroups.org 現在、そのメインとなるものは Kazhdan-Lusztig-Vogan 多項式です。リー群として複素単純リー群を実リー群と見なしたケースが、通常の Kazhdan-Lusztig 理論に一致し、それを、ある一方向に拡張したのがここで扱われる KLV 理論と考えられます。
Kazhdan-Lusztig 理論がリー群のcontext から離れて、Weyl群、Coxeter 系、Bruhat 順序など、純粋に組み合わせ論で意味を持ち研究が進んで来たのと同じことが、 KLV の設定でも期待できると考えられます。さらに、適当にケースが多いので(例えば、考え方にもよりますが、A 型と言っても複数あるし、古典型の系列も 10系列あります。)個別の現象を調べる、すべてに共通の定理を作る、という両面から研究することが可能でしょう。そういうこともあって、組み合わせ論の研究者に取っても魅力的な題材であろうと考えられます。
この講演では、リー群に関する背景説明などは一切省き、組み合わせ論の研究者、特に対称群やWeyl 群などに慣れている研究者に、ぜひ KGB combinatorics へ参入して欲しいという紹介をしたいと思います。特に、Atlas で公開されているプログラムにおける方言(例えば、non-compact imaginary root)を 組み合わせ的に言い換えるなどして、プログラムなどまず使ってもらう入り口での障壁を減らしたいと考えています。
なお、サーベイトークなので私のオリジナルな結果は含まれていません。また、計算機に関しては、もしかしたら講演でデモをするかもしれませんが、コマンドに関することしかわかりません。プログラムのインストールやメモリ管理などにはお答えできないと思います。ごめんなさい。
はるかなる野望は、20年位経って、誰かがWeyl 群の表現について講演すると、「それは KGB のときにはどうなるのですか」と座長が質問する、という状況です。(現在、A型の時に講演すると、「他のWeyl群ではどうなりますか」と質問されるのと同じ状況になる、という意味。)冗談です。