: 量子推定の枠組み
: 量子状態族
: boson coherent 状態族
coherent 状態族
量子光学では boson coherent 状態の次に扱いやすい状態として
スクイズド状態が知られている.
以下ではスクイズド状態を一般化した
coherent 状態
を扱う.
なお,スクイズド状態の定義及び
coherent 状態が
スクイズド状態の一般化になっていることについては[15]を参照のこと.
はじめに,
となる交換関係を満たす基底
から構成される
Lie 代数
の既約な skew adjoint 表現を考える.
すなわち,
なる交換関係を満たす Hilbert 空間 上の
skew adjoint 作用素( 倍すると自己共役になる作用素)
の3つ組
を
の skew adjoint 表現とよび,
この表現を下に coherent 状態を構成する.
まずここで,3つ組
をもとに
3つ組
を以下で定義する.
これらは以下の関係を満たす.
|
|
|
(2) |
さらに,表現の既約性より,
表現は
によって以下の3つに分類される.
以下では Case 1 の場合にのみ限定して話を進める.
を規格化された(ノルム1の )
の固有ベクトルとする.
このとき
は の固有ベクトルになり,
その固有値 は正の実数になる.
そして,
とすると以下の関係式が成り立つ.
Case 1 の表現は表現の既約性から最小固有値
の値だけで分類される.
このような準備の下で任意の
( は単位円板) に対して
coherent ベクトル
を以下で定義する.
ここでユニタリ作用素 は
と定義した.
そして純粋状態
を
coherent 状態とよび,
それらが構成する状態族を
coherent 状態族とよび
と記す.
ここで添字 を用いた理由は後に議論するように,
ある意味で先の spin
coherent 状態の が負の場合と
捉えることが可能であるからである.
次に
の2回のテンソル積状態
は
の skew-adjoint 表現
の下
(この表現の最低固有値は となる.)で
coherent 状態
になる.
同様に 回テンソル積状態
は
coherent 状態
と見なすことができる.
2つの
coherent 状態
間の
種々の量は以下のように計算できる.
なお,
のときの,
coherent 状態は量子光学で重要な役割を果たす
スクイズド状態と一致する[15].
また, が整数であるときには,
代数の skew adjoint 表現から
群のユニタリ表現が
構成できるが,
それ以外のときは
群のユニタリ表現は存在しない.
その普遍被覆群
の表現がある.
が半整数であれば,
その2重被覆群
の表現が構成できる.
: 量子推定の枠組み
: 量子状態族
: boson coherent 状態族
Masahito Hayashi
平成13年7月10日