: 参考文献
: suitei-daihensa3
: はじめに
量子力学系においては2つの密度演算子
を識別する指標として
少なくとも以下の2つの情報量
(量子相対エントロピー
,
量子類似度
)
を考えることができる.
これらの情報量は以下の性質を満たす.
不等式()において等号を達成する は存在する.
一方,不等式()においては
かつ
互いに非可換であるときは等号を達成する は存在しない.
しかし にのみ依存して以下の等式を満たす POVM の無限列
が存在する.
次に, Fisher 情報量の類似物を定義する.
前者
は Bogoluigov 内積(久保-森 内積)と呼ばれ,
後者
は SLD-Fisher 内積と呼ばれる.
以下モデルに対して以下の対称対数微分(SLD)
(()を満たす)が存在する
という意味での正則性を課す.
このとき
が成り立つ.
特に
であるときは,
となる.
ここで確率分布族
の Fisher 情報量を
で表した.
特に()において を実現する POVM は
のスペクトル分解で与えられる.
以下推定量の無限列
に2種の一致性条件を考える.
(一般に量子力学系では推定量はパラメータ空間 上の POVM
で与えられ,推定値は
で表すことにする.
特に, 個のシステムからなる合成系
上の
推定量を で表す.)
定義 1
推定量の無限列
が以下の条件を満たすとき弱一致と呼ぶ
ことにする.
推定量の無限列
に対して以下の量
を考え,
推定量の無限列
が以下の条件を満たすとき強一致と呼ぶ
ことにする;
以下の右辺の収束が局所一様であり,かつその極限値
が
に関して連続となる.
これらの準備の下で以下の定理を得る.
定理 2
推定量の無限列
が弱一致推定量であるとき,
となり,
に依存して等号を達成する推定量が存在する.
定理 3
推定量の無限列
が強一致推定量であるとき,
となり,
に依存せずに等号を達成する推定量が存在する.
定理,定理の不等式はそれぞれ量子相対エントロピー
, 量子類似度
の単調性
()及び()
から比較的容易に示すことができる.
逆に等号を達成する推定量の構成はやや困難である.
定理の等号を達成する推定量は()で等号を達成する測定の
無限列を利用して構成することになる.
一方,定理の等号を達成する推定量は()及び
文献[2]を参考にすると構成できる.
本発表で扱った議論は未知パラメータが1つの場合でも2種の大偏差型限界
が現れるという意味で文献[2]の議論と異なる.
: 参考文献
: suitei-daihensa3
: はじめに
Masahito Hayashi
平成13年7月16日