"Hermite 計量を持つリーマン面でパラメトライズされた量子状態族の推定について"

要約

量子力学では物理状態は密度演算子で記述されることが知られ ている.実際にその物理状態を密度演算子で記述するためには その物理状態を測定しその得られたデータをもとに適切な密度 演算子で記述することになる.
このように,実際にある物理系の状態をしかるべき手段で適切 な密度演算子で記述する手続きのことを状態推定を呼ぶ.この とき,1つの物理状態のサンプルに対して測定を行うと状態は壊 れてしまうので1つのデータしか得られない.従って,適切な状 態推定を行うには複数の物理状態のサンプルを準備する必要が ある.
以下では,複数の物理状態のサンプルから測定によってデータ を抽出してそのデータをもとに適切な密度演算子で状態を記述 する手続きを状態推定と呼ぶ.
本講演では,特に未知の状態が Hermite 計量を持つリーマン 面でパラメトライズされた量子状態族に含まれていることが既 知の場合での状態推定の最適化を考える.
この問題の定式化のために, Subnormal Operator の概念を 用いる.
次に,具体例として Weyl-Heisenberg 表現の下でのあるモデ ルを扱う.このモデルは Yuen-Lax によって解決されたもので ある.
次にsu(1,1)代数の既約ユニタリ表現を考え,その表現の下 で群論的対称性を満たすあるモデルを扱う.
予備知識としては関数論,作用素論,既約ユニタリ表現論の 初歩は仮定する.量子力学及び統計学については最初から 説明するので特に予備知識は仮定しない.