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私は名古屋大学多元数理科学研究科所属の大学院生(博士後期課程3年)、学振特別研究員DC1です。
E-mail: m16009t [at] math.nagoya-u.ac.jp
指導教員: 伊山修教授

研究上の関心

多元環の表現論におけるQuillenの完全圏、加群圏(やアーベル圏)の部分圏の研究

投稿論文

  1. H. Enomoto, Classifying exact categories via Wakamatsu tilting, J. Algebra 485 (2017), 1-44. (arXiv, journal)
    完全圏の森田型定理を考えました。完全圏がprogenとinj cogenを持つとき、自然と加群圏のよい部分圏になり(若松傾加群がinj cogenと対応)、さらに高次核を持つときは余傾加群(cotilting module)のExt直交圏になります。
    本質的には、Auslander-Reitenの有名な論文Applications of contravariantly finite subcategoriesを、完全圏・圏論的(加群圏への埋め込みによらない)に言い換えた、という感じです。
  2. H. Enomoto, Classifications of exact structures and Cohen-Macaulay-finite algebras, Adv. Math. 335 (2018), 838-877. (arXiv, journal)
    Auslander対応の完全圏verがないのかと思って考えた論文です。とくに、CM有限Iwanaga-Gorenstein環を分類するようなAuslander対応はあるのか?という疑問から出発しました。
    結果的には、どのような加法圏も完全圏の構造を持ちうる(split exact str)ので、「与えられた加法圏に対し、その上のとりうる完全圏の構造を、関手圏的に分類しよう」ということをやりました。
    ちょうど有限型の場合には、AR列に対応するような「2-regularな単純加群の集まり」が完全圏構造と対応する、というわりときれいな結果です(自画自賛)。
    [1]と組み合わせることで、CM有限IG環が原理的には「大域次元有限なalg + その上のよい単純加群の集まり」で分類され、これ以上の分類は不可能そうであることも見ました。
    また有限次元代数だけでなく完備CM局所環上でも考え、その上での完全圏のAR理論をおまけとして展開しました。
  3. H. Enomoto, Relations for Grothendieck groups and representation-finiteness, J. Algebra 539 (2019), Pages 152-176. (arXiv, journal)
    「Grothendieck群の関係式がAR列で生成される」ことと「有限表現型」との関係を、完全圏の文脈で統一的に見ようとした試みです。古くは有限次元多元環の加群圏での同値性・大域次元有限整環上のCM圏での同値性が知られていました。これの拡張として、論文では、Krull次元0の場合は加群圏のcont. fin. resolving subで同値なこと、高次Krull次元ではGorenstein整環で同値なことを示しました。最近とりあえずアクセプトされました。

プレプリント

  1. H. Enomoto, The Jordan-Holder property and Grothendieck monoids of exact categories, (arXiv:1908.05446)
    完全圏でJordan-Holderの定理がいつ成り立つか調べました。それを(JHP)と名付け、(JHP)を「Grothendieckモノイド」を使って特徴づけました。 Funct. fin. torsion-free classを念頭に置いてますが、そういうよい完全圏において、(JHP)は「indec射影対象と単純対象の数が等しい」で特徴づけられます。A型quiverの場合のtorsion-free classはIngalls-Thomasにより対称群のc-sortableと対応しますが、このときtorsion-free class側でのsimpleを考えると、不思議と対称群のBruhat orderが出てくることを観察しました!これは他のADEや一般にADE preproj.でも成りたつことが最近わかったのが下の論文です。
  2. H. Enomoto, Bruhat inversions in Weyl groups and torsion-free classes over preprojective algebras, (arXiv:2002.09205)
    上の論文の一般化として、Dynkin型のpath algebraやpreprojective algebraのねじれ自由類の単純対象を、対応するルート系の言葉で分類しました。このねじれ自由類はBuan-Iyama-Reiten-Scottで導入されたcluster structureを持つFrobenius圏で、unipotent cellのcluster structureの圏化らしいです(のでそちらに応用があると嬉しいけど分からない)。そのために、一般のねじれ自由類Fに対して単純対象を決定する方法を、DIRRTによるbrick labelingを用いて与えました。
  3. H. Enomoto, Schur's lemma for exact categories implies abelian, (arXiv:2002.09241)
    タイトル出落ち論文です。Ringelの、アーベル圏での「wide部分圏とsemibrickの対応」をそのまま完全圏でやりました(ただし完全圏の埋め込み定理を使えば割とすぐ出ることにあとで気づきました)。系としてタイトルを示しました。
  4. H. Enomoto, Monobrick, a uniform approach to torsion-free classes and wide subcategories, (arXiv:2005.01626)
    長さ有限アーベル圏で、semibrick(Hom直交するbrickの集まり)とwide部分圏(拡大で閉じた完全アーベル部分圏)は、wideの単純対象を取る操作で一対一対応することはよく知られています。前までの論文から自分はねじれ自由類(torf)の単純対象に興味を持ち、wideと同じ枠組みでtorfも同時に扱えることに気づきました。それがmonobrickというもので、「射がゼロ射か単射しかないbrickの集まり」です。これはwideとtorfを同時に含む左Schur部分圏というクラスと一対一に対応して、torfは特にcofinally closedというposet的条件を満たすもので分類できます。つまり「関手的有限の制約がなく、またtau-tiltingも使わず、一般の長さ有限アーベル圏のtorfがbrickで分類できる」わけです。これによりいろんなtau-tilting絡みの主張がtau-tilting使わずに自然に示せて、個人的に見通しが良くなりました(torfとwideとの全単射や、DIJの有限性の主張など)。
  5. H. Enomoto, Rigid modules and ICE-closed subcategories in quiver representations, (arXiv:2005.05536)
    前の論文での左Schur部分圏の典型例はimage-kernel-extension-closedな部分圏です。(ねじれ類側で見るために)今回はその双対の、image-cokernel-extension-closedな部分圏(ICE閉)を、特にDynkin型path algで調べました。すると、今回はprogeneratorを取る操作でICE閉部分圏とrigid加群が対応していることが判明しました。これはAdachi-Iyama-ReitenやIngalls-Thomasのよく知られたsupport (tau-)tiltingとtorsion classとの対応の一般化です。しかもICE閉部分圏の数はquiverの向き付けによらず、Dynkin型のみに依存し、その数の明示公式も与えました。A型ではlarge Schroeder数と呼ばれるらしいです。(追記:exceptional sequenceを使えば主定理が見やすく解釈できることに気づき、付け加えました)
  6. H. Enomoto, Classifying substructures of extriangulated categories via Serre subcategories, (arXiv:2005.13381)
    与えられたExtriangulated圏に対して、それ上のsubstructure全体が、自分の2本目の完全圏構造分類の話と同じようにして分類されることを示しました。具体的には、与えられたextirangulated structureから、関手圏上のdefectのなす圏がアーベル圏となり、そのSerre部分圏とsubstructureが対応します。完全圏への応用として、与えられた加法圏上の完全圏構造のなす束は、あるアーベル圏のSerre部分圏のなす束と同じことが分かりました。

ノート(?)

  1. H. Enomoto, "Relative Auslander correspondence via exact categories", 修論.(スライド, 動画
    投稿論文[1][2]をくっつけて、イントロを少し入門的に付け加えて書きました。
  2. 榎本, "局所圏上の加群圏について", 学部の卒論.
    多元環の表現論では、与えられた圏に対してその(Auslander)箙(quiver)を書くことで、圏を生成元関係式で表示します。この操作は、ちょうど圏の直既約部分をとることに対応しています。これをもっと一般的に考え、「semiperfect環」「Krull-Schmidt圏で有限型なもの」「その圏の直既約部分」の3つの対応を、many objectificationして考えました。その場合、Krull-Schmidt圏はちょうどsemiperfect環と同じ条件(任意の有限生成加群が射影被覆を持つ)で特徴づけられることを見ました(well-knownな気がしますがself-containedに書いたはずです)。
    またKrull-Schmidt圏の直既約部分のなす圏を「局所圏」と名前をつけました(がこれ以降使ってません)。
    さらに面白そうなのは、semiperfectより強いperfectについて考えて、よく知られているperfect環の特徴づけ(T-nilpotenceを用いた)を圏でやりました。ここらへんはまだ、具体的な完全圏でやったらどうなるのか考えるのは面白そうです(手を付けていません)。
  3. 榎本, "Grothendieckアーベル圏の基礎事項(未完)", 自分用のまとめ.
    Grothendieckアーベル圏やアーベル圏一般論についての自分用の昔に書いたまとめ(書きかけ)です。アーベル圏の局所化やAb条件や、関連する束論(モジュラー束とか)についてフランクに書いてます。間違っている箇所がある可能性があるので注意してください(何か気づいた所があれば教えて下さい)。
  4. 榎本, "可換環上の(非可換)代数上の加群のメモ(未完)", 自分用のまとめ.
    可換環上の加群やそれ上のネーター代数について、自分なりに整理してまとめようとしたメモ(書きかけ)です。可換環の次元についてやら、Bass数についてやら、可換環上のCM整環やらについて。中途半端に終っています。間違っている箇所がある可能性があるので注意してください(何か気づいた所があれば教えて下さい)。