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名古屋微分方程式セミナー 2009年度

セミナー世話人:三宅正武 杉本充 菱田俊明 津川光太郎 加藤淳



1月18日(月)15:30〜17:45(普段と開始時間が異なりますのでご注意下さい)
15:30〜16:30
講師:山本 和広 氏(名古屋工業大学)
題目:微局所的正則定理と弾性方程式の解の正則性の伝播への応用
① まず初めに単独2階の偏微分方程式 (D_n+R(y,D_{y'}))u=f (y_n>0) の解u(y)のSobolev空間における微局所的な正則性の定理を示す. ここでR(y,D_{y'})は2階の微分作用素で主部r_2(y,\eta')は実とし, fは微局所的に滑らかとする.
(条件)r_2(0,\bar{\eta'})=0として,
(A.1) u(y',0),(\parial_nu)(y',0)は微局所的に(0,\bar{\eta'})でH^s,H^{s-1}にそれぞれ入っているとする.
(A.2) (0,(\bar{\eta'},0))を通る\eta^2_n+r_2(y,\eta')のnull bicharacteristicのy_n>0かy_n<0でu^cは微局所的にH^sに入っている.
ここでu^cはuのy_n<0への0拡張である.
(定理)(A.1),(A.2)ならば(0,\bar{\eta7})で楕円的な擬微分作用素A(y,D_{y'})が 存在して, A(y,D_{y'})uはH^sに属する.
② 次に①の定理を等方的弾性方程式の境界値問題の解に適用して, Sobolev空間での解の正則性の伝播を示したい. 弾性方程式は2階の系の方程式であるので, まずこの2階の系を微局所的に2階の単独系に分解する方法を示し, 次に定理を用いて, S波, P波に対応するnull bicharacteristicに沿う解のSobolev空間での正則性の結果を述べる.
16:45〜17:45
講師:森本 芳則 氏(京都大学大学院人間・環境学研究科 )
題目:Non-cutoff ボルツマン方程式の大域解と一意性
ボルツマン方程式はその衝突項の積分核に特異性をもっているが,従来の研究の 多くは,技術的な理由で特異性の部分を切り取った条件(Grad's angular cutoff condition)のもとで考察されてきた. 本講演では,この条件を仮定しないで大域解の存在とその一意性について考察する. 講演内容は2006年から始まる, R.Alexandre, S.Ukai, C.-J. Xu, T.Yang 氏との一連の共同研究による.

12月21日(月)
講師:寺澤 祐高 氏(東北大学大学院理学研究科)
題目:変数粘性係数ストークス方程式の最大正則性について
 粉粒体や二層流体の運動を記述する準線形放物型方程式の時間局所可解性を線形化の手法で示す際には, ストークス方程式の粘性係数を変数係数に一般化した, 変数粘性係数ストークス方程式の最大正則性が重要な道具になる. 本講演では, 最大正則性とは何かということを説明し, その証明のために, 変数粘性係数ストークス方程式を作用素論的に取り扱うことを考える. 具体的にはストークス作用素の拡張である, 変数粘性係数ストークス作用素を定義し, そのH^{\infty}演算を示すことによって最大正則性を導く. H^{\infty}演算の証明のためには、Boutet de Monvel, Grubb, Abelsによる擬微分作用素演算を用いる. ストークス作用素を表す擬微分作用素の表象と変数粘性係数ストークス作用素の表象の間にスケーリングによる関連があることが証明の鍵になる. 本講演はHelmut Abelsとの共同研究に基づく.

12月14日(月)
講師:池畠 優 氏(群馬大学大学院工学研究科)
題目:The enclosure method and its applications to inverse problems with dynamical data over a finite time interval
 物体や媒質中の空洞, 亀裂, 介在物や障害物などの`不連続性'の位置や形状の情報をさまざまな物理量からなる観測データから抽出する問題は重要な逆問題の典型例であり, その多くは支配方程式と呼ばれる偏微分方程式で記述され数学sideからもさまざまな研究がなされている. 探針法(probe method)および囲い込み法(enclosure method)は, 支配方程式が楕円型方程式で記述される上述のようなタイプの逆問題を解析的に解く方法として講演者により発見されたものである. すでに十年以上が経ち, それらの方法はさまざまな逆問題へ応用されるとともに方法それ自身についての新たな知見も得られている. ところで, 数年前, 講演者は, 空間一次元において, 囲い込み法が, 熱方程式や波動方程式で記述される上述のようなタイプの逆問題へも適用できることを発見した. これは全く意外な展開であったが, その後多次元において, 実に多様な形で囲い込み法が応用できることがわかってきた. この講演では, 囲い込み法に話を絞り, その過去から現在までの展開について述べたい.

11月30日(月)
講師: Reinhard Farwig 氏(ドイツ, Darmstadt 工科大学)
題目:Global Weak Solutions of the Navier-Stokes Equations with Nonhomogeneous Data
概要 (PDF file)

11月16日(月)
講師:山本 征法 氏(東北大学)
題目:移流拡散方程式の解の高次漸近展開について
 ここでは, 荷電粒子の密度解析に由来する, 移流拡散方程式と呼ばれる非線形拡散方程式の解の時間大域挙動を考える. 移流拡散方程式は, 非線形項にNewtonポテンシャルによって与えられる分数羃積分の構造をもつ拡散方程式であり, その解の挙動は線形の拡散効果と非線形項に因る移流効果とのバランスによって支配される. 移流拡散方程式については, 大きな初期値に対する解の時間大域存在, および時刻無限大で基本解へ漸近することが知られている. ここでは, 移流拡散方程式の解のより詳しい挙動を見るため, 解の高次漸近展開を導出する. 特に, 空間次元のとり方に応じて, 解の漸近形がどのように現れるかを考える.

11月9日(月)
講師:加藤 孝盛 氏(名古屋大学)
題目:Local well-posedness for the Kawahara equation
 本講演では, Kawahara方程式に対する初期値問題のSobolev空間 H^{s}おける時間局所的適切性を考える. W. Chen(2009)らがBourgainのFourier制限ノルム法を用いてs>-7/4で適切であることを示しているが, 我々は非線型項の影響をより精密に捉えたノルムを導入することによって端点のs=-2で適切性を導くことができた. 

11月2日(月)
講師:竹田 寛志 氏(東北大学)
題目:Global existence and non-existence for a system of nonlinear damped wave equations
 連立非線形消散型波動方程式の初期値問題における, 小さい時間大域解の存在性について考える. 消散型波動方程式の解は, 熱方程式の解と同様の消散効果と 波動方程式の解の特異性の伝播を併せもつことが知られている. 非線形問題の場合は, その性質が相互作用し合い, 時間大域解の存在, 非存在に影響を及ぼす. そうした問題においても, 単独の方程式の場合は, 時間大域挙動に関して消散効果が支配的になることが示され, その挙動が明らかになった. 一方, 非線形問題の連立系は, 単独方程式では起こりえない, 連立系特有の構造があり, 非線形性との兼ね合いが時間大域解の存在非存在に影響を及ぼす. 本講演では, 連立系においても消散効果が優位に立つ場合を考え, いわゆる藤田臨界指数について論じたい.

10月26日(月)
講師:永安 聖 氏(北海道大学)
題目: A depth-dependent stability estimate in electrical impedance tomography
 We study the inverse problem of determining an electrical inclusion from boundary measurements. We derive a stability estimate for the linearized map with explicit formulae on generic constants that shows that the problem becomes more ill-posed as the inclusion is farther from the boundary. This work is a joint work with Professor Gunther Uhlmann and Professor Jenn-Nan Wang.

10月19日(月)
講師:Michael Ruzhansky 氏(Imperial College London)
題目:Global Lp estimates for Fourier integral operators
 In this lecture we will review the questions of local and global regularity of pseudo-differential operators and Fourier integral operators in L2 and Lp spaces, and its applications in the theory of partial differential equations. We will present new results concerning the global continuity in Lp, which are joint with S. Coriasco (Torino).

10月2日(金) 16:00〜 理1号館552号室 (普段と曜日・場所が異なりますのでご注意下さい)
講師:Stevan Pilipović 氏(University of Novi Sad)
題目:Generalized stochastic Dirichlet problem
 We treat the stochastic Dirichlet problem L\diamond u = h + f in the framework of white noise analysis combined with Sobolev space methods. The input data and the boundary condition are generalized stochastic processes regarded as linear continuous mappings from the Sobolev space $W^{1,2}_0$ into the Kondratiev space $(S)_1$. The operator $L$ is assumed to be strictly elliptic in divergence form $L\diamond u =(A\diamond u + b\diamond u) + c\diamond u + d\diamond u$. Its coefficients: the elements of the matrix $A$ and of the vectors $b$, $c$ and $d$ are assumed to be generalized random processes, and the product of two generalized processes, denoted by $\diamond$, is interpreted as the Wick product. We prove the weak maximum principle for the operator $L$ and that this equation with a given stochastic boundary condition has a unique solution. We also prove uniqueness of the solution in case when the coefficients of $L$, the input data and the boundary condition are Colombeau-type generalized stochastic processes.

7月27日(月)
講師:水町 徹 氏(九州大学)
題目:Asymptotic stability of N-solitons of the FPU lattices in the KdV regime
 In this talk, I will give a proof on stability of N-soliton solutions of the FPU lattice equation in the energy space. A solitary wave solution of FPU cannot be characterized as a critical point of conservation laws due to the lack of infinitesimal invariance in the spatial variable. I replace variational arguments of Martel-Merle-Tsai by a strong linear stability property of N-soliton solutions in an exponential weighted space biased in the direction of motion.

7月13日(月)
講師:森本 芳則 氏(京都大学)
題目:Non-cutoff Boltzmann 方程式の解の regularity
 Bolzmann 方程式は衝突核に Grad's angular cutoff 条件を仮定しないと、空間一様、あるいは非一様な場合、それぞれに応じて、熱方程式、あるいはコルモゴロフ方程式におけるような、解の平滑効果が予想されてきた。 本講演では、Alexandre, Ukai, Xu, Yang 氏との一連の共同研究を概説し、空間一様な Boltzmann 方程式の初期値問題の解の Gevrey クラスでの平滑効果に関する、鵜飼氏との最新結果を報告する。

6月29日(月)
講師:山内 雄介 氏(早稲田大学)
題目:Existence and nonexistence of the global solutions for a reaction-diffusion system
 非線型項が冪乗型の反応拡散方程系における時間大域解の存在・非存在について述べる。 反応拡散方程およびその連立系のコーシー問題については 1960 年代から様々な研究結果が得られているが、その手法は研究対象となる非線型項の形状に応じて異なっている。 本講演では、解の積分量を解析する手法を用いて、統一的に時間大域解の非存在を示す。 この手法は、本研究の対象となっている方程式系の他に、単独の方程式にも適用が可能なものである。

6月15日(月)
講師:小野寺 栄治 氏(九州大学)
題目:The initial value problem for a third order dispersive flow into compact almost Hermitian manifolds
 (平坦な) 実数直線又は1次元トーラスから概エルミート多様体への写像 (曲線) の時間発展を記述するある3階非線型分散型方程式に対する初期値問題の解法を考察する。 時間局所解の存在に関する先行研究では、多様体がケーラー多様体であることが仮定されてきた。 ケーラー性が破綻すると、古典的エネルギー法では扱えない1階項が方程式に現れる。 本講演では、必ずしもケーラー性がなくとも、誘導束上のある種のゲージ変換を構成することでこの1階項を解消し、時間局所解の存在を証明できることを報告したい。(定義域がトーラスの場合は千原浩之准教授 (東北大学) との共同研究である。) また、可能なら、解が時間大域的に延長可能になるための多様体がみたすべき十分条件についても触れたい。

6月8日(月)
講師:眞崎 聡 氏(東北大学)
題目:Global existence of the classical solution to radial compressible Euler-Poisson equations
 We give a necessary and sufficient condition for global existence of the classical solution to the compressible Euler-Poisson equations with radial symmetry. We use the method of characteristic curve. The key is the reduction of the equation into an ODE for characteristic curves. We introduce a new quantity which describes the balance between the initial velocity and the strength of the external force governed by the Poisson equation.

6月1日(月)
講師:小林 徹平 氏(明治大学)
題目:Time periodic solutions of the Navier-Stokes equations in a two dimensional symmetric channel
 本講演の目的は、2次元のある対称な無限円管状の領域において遠方で Poiseuille 流に収束する Navier-Stokes 方程式の時間周期解を求めることである。 その際に、定常の Navier-Stokes 方程式を求めるための条件を用いる。

4月27日(月)
講師:久保 明達 氏(藤田保健衛生大学)
題目:ある強消散項付き非線形発展方程式の初期 - ノイマン境界値問題の時間大域解の存在について
 本講演の目的は, 走化性モデルに基づいたある発展方程式の初期 - ノイマン境界値問題の時間大域解の存在を示すことです. このため, そのような発展方程式のクラスで, そのクラスに入る方程式に対しては時間大域解があり, もし入らない場合は爆発解が存在する, ようなものを見つけます. さらに, この結果を数理生物や医学で知られているいろいろな数理モデルに適用します.

4月20日(月)
講師:筒井 容平 氏(大阪大学 理学研究科)
題目:Sharp maximal inequalities and its application to some bilinear estimates
 この話は、東京女子大学の宮地晶彦先生の研究に少し付け加えたものであることをことわっておきます。
 Fefferman と Stein により導入された sharp maximal function は、 実解析学において多くの作用素の有界性を示すのに役立ちます。 その際、上記の不等式が必要となります。 この講演では、その不等式を Lebesgue 空間 Lp を含む2つの函数空間 Herz space, Morrey space を用いて紹介します。そして、その不等式を使い、特に Navier-Stokes 方程式の研究で多く用いられる函数の積の評価への応用を紹介します。


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