概要:一般相対論においては、球状の星を重力崩壊させた際に、    その中心に外部から観測可能な特異点(裸の特異点)が    現れる解が存在することが知られている。このような特 異点においては、一般に微分方程式に含まれる諸量が発 散してしまうため、物理学が予言能力を失ってしまう。 一方で、初期条件に対称性や理想的な仮定を置かないよ うな現実的な状況においては、重力崩壊でこうした裸の 特異点は生じないという仮説(宇宙検閲官仮説)もあり、 その仮説を前提として証明されている一般相対論の定理 やなされている議論は数多く存在する。したがって、裸 の特異点が生じる条件の精査は、多くの定理や議論、あ るいは一般相対論自体の適用可能範囲を確認・保障する という意味で、一般相対論における重要な課題の一つと なっている。 今回は、5次元時空のダストの球対称重力崩壊における 裸の特異点の生成条件の解析を概説する。 (ref: arXiv:1607.02698)