題目:リーマン-ペンローズ不等式の一般化 講演者:泉圭介(KMI/名大多元数理) 日時/場所: 5月25日(木) 16:30-18:30, 多509号室 概要: 一般相対性理論の漸近平坦な4次元時空解において、任意のブラックホールの表面積Aは、 時空の無限遠漸近挙動で定義される質量Mを用いた不等式A≦4π(2M)^2を満たすという 予想がある。この不等式はペンローズ不等式と呼ばれる。全測地的な時間一定面が存在す るとき、その面上におけるペンローズ不等式が成立することが証明されており、それはリーマン- ペンローズ不等式と呼ばれる。リーマン-ペンローズ不等式の正確な主張は、「漸近平坦な3 次元非負曲率空間に存在する2次元極小曲面の面積Aは、空間無限遠の漸近挙動で 定義される質量Mを用いたリーマン-ペンローズ不等式を満たす」、となる。  本セミナーでは、リーマン-ペンローズ不等式を極小曲面以外に適用できるよう一般化した 不等式を紹介する。具体的には、極小曲面の代わりに、平均曲率kとその法方向微分(rDk)、 および任意定数αを用いた不等式(rDk)≧αk^2が面上いたるところで満たされる閉曲面を 考える。αは、その値が無限大になる極限で極小曲面に対応するように定義されている。一方、 空間無限遠のS^2に対応するようなαの極限も存在する。任意定数αを調節することにより、 ブラックホール近傍にある閉曲面から、空間無限遠を表すS^2の近傍にある閉曲面を取り扱う ことが可能になる。このαで特徴づけられた面に対し、リーマン-ペンローズ不等式に類似の 面積不等式A≦4π({(3+4α)/(1+2α)}M)^2が成り立つことを証明する。