2003年度の記録

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 2003年度は以下の6つのテーマ(昨年度資料より)を計画し、うち5つのテーマが実施されました。
 参加者は、学部1年生が11名(内1名は後期から参加)、学部2年生が4名(内1名は 後期から参加)で、学部2年生の内2名は、体調不良等の理由により、残念ながら途中から不参加でした。
 なお、学部2年生は全員 数理学科。学部1年生については、物理学科や地球惑星科学科志望者や名城大学の数学科の学生もいました。
昨年度資料より 実施状況
・解析系Aコース−古典解析をたのしむ−
[1]E.Artin(著), 上野健爾(訳), ガンマ関数入門, はじめよう数学6, 日本評論社.
[2] 上野健爾(著), 複素数の世界, はじめよう数学3, 日本評論社.
 などをテキストにして、古典解析の美しさを味わってみましょう。[1] は非常に有名な本の 和訳で、微積分の範囲でガンマ関数を扱い、それを通して解析学の面白さが味わえます。 微積分の復習、または微積分を勉強しながら読むのに最適です。[2] では高校でも出てくる 複素数の世界が、どのように美しく拡がっていくかを見ることができます。2 年生の人に は複素関数論の講義の良い復習にもなるでしょう。[1] と[2] とを併せ読めば古典解析の魅 力が十分に味わえると思います。
 参加者は1年生3人で、前期はガンマ関数論、後期は酔歩などの確率論の初歩を学んだ。 和気あいあいと賑やかな雰囲気であった。 テキストは少し難しかったかもしれないが、線型代数や微積分の良い復習または予習 になったと思われる。
・解析系Bコース−確率論入門−
[1] コルモゴロフ, ジュルベンコ, プロホロフ(著), コルモゴロフの確率論入門, 森北出版.
[2] 福島正俊(著), 確率論, 数学シリーズ, 裳華房.
[3] イェ・ベ・ディンキン, ア・ア・ユシュケヴィッチ(著), マルコフ過程定理と問題.
 などをテキストにして、確率論を通して現代的な解析学の一端に触れてみましょう。[1] は、 現代確率論の創始者であるコルモゴロフがモスクワ大学等で行ったセミナーをまとめたも のです。高校で習う知識以上は仮定されていないにも拘らず、確率論について概観できま す。1 年生でも十分楽しめます。[2] は、現代確率論の標準的な事柄が網羅されており、[1] よりももう少し、大学の数学に馴れている必要がありそうです。しかし、話題を適当に取 捨選択すれば1 年生でも大丈夫です。[3] は、今では絶版なのですが、数学は具体的なもの から入るのがよいという著者の考えが反映されており、大変教育的な本です。確率論の応 用にも触れられています。ただし、水準はちょっと高めかもしれません。
 参加者は1年生2人、2年生1人で、 セミナーの内容は前期は確率論の初歩、後期は作図可能問題などの体論の初歩を学び、 とても熱心に取り組んでいた。後半には、自分達で勉強したいテーマを見つけてそれを勉強した。
・代数系Aコース−群に慣れ親しむ−
[1] 岩堀長慶(著), 合同変換群の話{ 幾何学の形での群論演習{, 現代数学社.
[2] 平井武(著), 線形代数と群の表現I, すうがくぶっくす20, 朝倉書店.
 などをテキストにして、具体例を通して「群」という数学的な対象に触ってみましょう。 [1] は3 次元ユークリッド空間の合同変換からなる有限群という具体的な群を全て決定し、 分類することを目標にして書かれています。中学の幾何が好きだった人は、ユークリッド 空間とは何だったか、三角形の合同とは何だったか、などと考えながら読むと良いと思い ます。線形代数で習う様々な概念が自然に現れて、良い演習になると思います。[2] はさら に詳しく群の性質を扱っています。群の「作用」というものを通して群を捉える「群の表 現論」への入門書となっています。
 参加者は1年生2人で、セミナーの内容は前期は初等整数論、後期は群論の初歩を学んだ。 前期は、発表後に皆で演習問題に取り組み楽しめたと思う。 後期は、ある程度抽象的概念に慣れてきた時期でもあり、比較的抵抗なく学 べたようである。 また、試験前には各自の質問を持ち寄った、それを皆で考えたこともあった。
・代数系Bコース−代数系入門−
[1] 堀田良之(著), 加群十話, すうがくぶっくす3, 朝倉書店.
[2] 堀田良之(著), 代数入門{ 群と加群{, 数学シリーズ, 裳華房.
 をテキストにして、加群というものを中心に代数学というものに触れてみましょう。[1] は 教科書とは少し違う書き方で書かれたさわやかな代数学の入門書です。線形代数を少し知 らないと難しい部分がありますが、逆にこの本を読めば線形代数の重要性が認識されるで しょう。[2] はもう少し教科書らしく書かれた本です。[1] を読みながら、必要なときに[2] を参照すれば良いと思います。
・幾何系Aコース−幾何学入門−
[1] 小林昭七(著), ユークリッド幾何から現代幾何へ, 日評数学選書, 日本評論社.
[2] 長野正(著), 曲面の数学, 培風館.
 をテキストにして、現代的な幾何学の一端に触れてみましょう。[1] ではユークリッドの幾 何から始めて、平行線の公理が成り立たない、非ユークリッド幾何の発見に至る幾何学の 一つの流れにのって、大学3 年で習う微分幾何の入り口付近まで辿り着くことができます。 [2] は古典的な名著で、曲面というものを題材にして、微分幾何、位相幾何、といった垣根 を取り払った、現代数学への入門です。最初の部分は大学1 年で習う数学の知識がないと 少し難しいかもしれませんが、最初を乗りきれば誰でも楽しめるようになっています。
 参加者は1年生3人、2年生1人で、セミナーの内容は 前期はユークリット幾何から現代幾何の入り口(ガウス-ボンネの定理)まで、後期はより詳しく曲面論(ガウスの驚異の定理など)を学んだ。 後期から学部2年生が参加し、学部生間の議論が活発になった。 内容は決して易しくはなかったと思うが、参加者は非常に熱心で、思ったよりも進んだ。幾何へ の入門になったと同時に、線型代数や微積分の良い予習、復習になったと思う。
・幾何系Bコース−場の理論を通して幾何学を学ぶ−
[1] 吉田春夫(著), キーポイント力学, 物理のキーポイント1, 岩波書店.
[2] 深谷賢治(著), 電磁場とベクトル解析, 岩波講座現代数学への入門17, 岩波書店.
をテキストにして、場の理論を通して幾何学、あるいは数学を有機的に学んでみましょう。 [1] は古典力学の本で、惑星はどうして楕円軌道を描くのか、を理解することを目標にして 書かれています。[2] は電磁気学を通して、ベクトル場とその解析の方法がいきいきと説明 されています。これらの本を読めば、微積分や線形代数で習う抽象的な事柄が、いかに物 理的あるいは幾何学的な事柄と有機的に結び付いているかを実感することができると思い ます。
  参加者は1年生2人、2年生2人で、セミナーの内容はニュートン力学の初歩から解析力学の入り口までを学んだ。 途中から学部生が3人になったが、 みんな楽しんでいたように感じられる。簡単なテキストだったが、微積分などの復習もで き、2年生にとっても1年生にとっても勉強になったと思われる。数理学科の 2年生と数理学科以外を志望している1年生という組合わせだったが、2年生が既に勉強 したことを他の人に説明するなどの姿も見られた。